大手建設会社である西松建設が、インフラ構造物の監視・点検事業を大きく強化しています。これは、近い将来に需要の増加が見込まれるインフラの補修や更新工事の受注を拡大するための、戦略的な動きと言えるでしょう。同社は2018年にインフラ監視システムの提供を開始して以来、継続的に機能追加を模索しており、また、2012年に開発された道路橋の点検ロボットにもカメラを搭載し、損傷の検出精度を高める改良を加えています。中長期的に建設需要の先細りが予想されるなかで、インフラ点検技術を充実させることは、老朽化対策という喫緊の課題に応えるとともに、新たな収益の柱を育てる狙いがあります。
具体的な取り組みとして、宮崎市の山中に設置されていた手のひらサイズの機器「OKIPPA104」が注目を集めています。これは、市道の脇にある斜面などに設置され、内部の小型センサーで傾斜角度や温度、衝撃などを計測し、位置や方位角を測位できる優れものです。トンネルの出入り口などのインフラの傾斜面に設置した場合、異常な傾斜の変化などを感知すると、メールで担当者に通知する仕組みとなっています。計測データはクラウドに蓄積されるため、担当者は遠隔で状況を逐一把握することが可能です。このように、人が現地に赴かずとも異常を素早く検知できる遠隔監視システムは、今後のインフラ維持管理において重要な役割を果たすでしょう。
データの送信には、低消費電力で長距離通信が可能な無線通信技術**「LPWA(Low Power Wide Area)」**が採用されています。LPWAは、携帯電話の通信規格であるLTEと比較して通信速度は極めて遅いものの、温度や傾斜角といった少量の計測データを送るには十分な性能を持ちます。そして、その最大の利点は消費電力が非常に少ない点にあります。内蔵のリチウムイオン電池だけで約2年間も稼働し続けることができ、電源の確保が難しい山間部などでのインフラ監視に最適です。西松建設は、このOKIPPA104を地割れの監視にも応用できるよう改良し、2019年6月には販売を開始しました。地割れの拡大に応じて機器が動き、その傾斜角度の変化から地割れの幅を正確に算出できるようになったとのことです。
さらに、同社はドローン調査を手掛けるスカイシーカー社と連携し、OKIPPA104が異変を感知した際に、遠隔操作でドローンを飛ばして現地の状況を撮影するサービスも開始しました。これは、異常を検知した「その時」の状況を迅速かつ正確に記録できる画期的なサービスと言えます。事業創生部の鶴田大毅課長は「機器の使い道は色々出てくるだろう」と語っており、この技術が様々な現場で活用されていくことに期待が持てますね。
また、点検ロボットの技術開発も進んでいます。2018年には、佐賀大学と共同開発した斜張橋(しゃちょうきょう)のケーブルを点検するロボットに改良が加えられました。斜張橋とは、塔から斜めに張られたケーブルで橋桁を支える形式の橋で、そのケーブルの健全性が非常に重要です。改良後のロボットにはカメラが搭載され、ケーブル表面の動画撮影が可能になりました。この動画を解析ソフトで分析することで、ケーブルの劣化度合いをより精密に評価できるようになったのです。従来の目視点検では難しかった細かな損傷も見逃しにくくなるため、インフラの長寿命化に大きく貢献するでしょう。
西松建設がインフラ点検技術の開発を急ぐ背景には、日本のインフラ老朽化問題の深刻さがあります。例えば、道路橋(橋長2メートル以上)で建設後50年以上が経過するものの割合は、2018年時点で約25パーセントですが、2033年には約63パーセントにまで急増すると予測されています。今後、インフラの維持管理費が大幅に増加していくのは避けられない状況でしょう。私も、この問題は日本が直面する最も重要な課題の一つだと考えています。高度経済成長期に集中的に整備されたインフラの寿命が、一斉に訪れようとしているのです。
建設業界全体を見ると、東日本大震災からの復興需要や、東京オリンピック・パラリンピックに向けた特需によって建設需要は旺盛な状態にありますが、これら特需が終息すれば、中長期的には需要が先細りすると見込まれています。しかし、インフラの補修や更新といった分野は、長期的に安定した需要が見込める「稼ぎ頭」として成長していくでしょう。西松建設は、景気の良い今のうちに点検技術への投資を進め、来るべきインフラ維持管理の時代に向けて布石を打っているのです。建設業が担う社会的な役割は、新しいものを作ることから、今あるものを守り、長く使い続けることにシフトしていくと予想されます。同社の取り組みは、まさにその変化を象徴していると言えるでしょう。
SNSでの反響と期待
西松建設のインフラ監視・点検技術の強化は、SNS上でも大きな反響を呼んでいます。「インフラの老朽化は深刻だから、こういった技術は本当に必要」「人が立ち入りにくい場所の点検にもロボットが役立つだろう」といった共感の声や、「LPWAの技術が建設現場にも活用されるのは心強い」「AIによる画像解析で劣化診断の精度が上がることに期待」といった技術への関心を示すコメントが多く見られます。特に、遠隔監視システム「OKIPPA104」が、人が少ない山間部の斜面や地割れの監視に応用されている点について、「地域の安全を守るために役立ちそうだ」と、社会貢献性の高さを評価する意見も散見されます。こうした技術革新は、建設業が未来に向けて進化していく姿を示すものであり、今後の展開から目が離せません。