2019年6月現在、韓国の通貨であるウォンが対ドルで下落し、市場の注目を集めています。特に5月下旬には1ドル=1,197ウォンを記録し、直近の相場はややウォン高に持ち直したものの、それでも1ドル=約1,185ウォンという水準で推移している状況です。この水準は、2017年1月以来、およそ2年5カ月ぶりのウォン安となっており、韓国経済の先行きを不安視する声も聞かれます。
年初の韓国金融市場では、アメリカと中国の貿易摩擦が長期化することでアメリカ経済に悪影響が及ぶのではないかとの予測から、ウォンはむしろ緩やかに上昇するとの見方が優勢でした。ところが、春が近づくにつれてアメリカ経済の底堅さが再確認されるようになると、市場のムードは一変し、ウォン安がじわりじわりと進行してきたのです。さらに5月に入り、韓国経済に大きな衝撃が走る出来事がありました。それは、経常収支が7年ぶりに赤字へと転落したとの発表です。
経常収支とは、国と国とのモノやサービスの取引、投資の利子や配当金の受け払いなど、国際的なお金のやり取りを総合的に示す指標です。この指標が赤字になるということは、海外から受け取るお金よりも、海外へ支払うお金の方が上回っていることを意味します。この経常赤字のニュースが伝わったことで、ウォンの下げ幅は一気に拡大する結果となりました。この状況に対し、SNS上でも「韓国経済は本当に大丈夫なのか?」「予想以上に悪化しているのではないか」といった懸念の声が多く見受けられます。
ウォン安の恩恵は限定的?市場の冷静な分析
一般的に、自国通貨が安くなるウォン安は、韓国製品を輸出する際に価格競争力を高め、経済にプラスに働くことが期待されていました。しかしながら、近年、多くの韓国企業が生産拠点を海外へ移す海外生産拡大を進めているため、ウォン安が国内経済にもたらす恩恵は以前と比べて小さくなってきています。この点も、今回のウォン安が市場に与える影響を考える上で重要な要因でしょう。
韓国投資証券は、現在の状況について「1ドル=1,200ウォンを大きく超えるほどのウォン安に進行する可能性は低い」との見解を示しており、当面は足元の水準で推移するとの予測を立てています。つまり、一時的な赤字転落は懸念材料であるものの、極端な通貨安には繋がらないという冷静な分析が市場にはあると言えるでしょう。私自身の考えとしても、過度な悲観論に傾くのではなく、まずはアメリカ経済の動向や米中貿易交渉の行方など、ウォン相場を取り巻く外部環境を注意深く見守る必要があると考えています。
ちなみに、2019年6月14日までの1週間を振り返ると、外為市場ではメキシコペソが上昇しました。これは、アメリカのトランプ政権がメキシコ製品に対する関税の発動を見送ったことを受け、市場でペソを買い戻す動きが強まったためです。このように、世界の為替市場は、一国の経済指標だけでなく、アメリカの貿易政策など国際的な政治・経済の動きにも非常に敏感に反応しているのが現状です。