2018年(平成30年)6月18日に発生した大阪北部地震は、私たちが日々見過ごしがちな「ブロック塀」の危険性を、あまりにも痛ましい形で浮き彫りにしました。この地震で大阪府高槻市において、通学中の幼い女児が倒壊したブロック塀の下敷きとなって尊い命を失うという悲劇が起きたのです。この出来事は、全国の学校や通学路における安全対策のあり方を根本から見直す、大きな契機となりました。地震発生から1年が経過し、子どもたちの安全を守るための取り組みが、今まさに「道半ば」として進行しています。
当時の報道やSNSの反響は、「違法なブロック塀が多すぎる」「子どもの命を守れないのは大人の責任」といった、怒りや自責の念に満ちた声が多くを占めていました。特に、倒壊したブロック塀が建築基準(建築基準法という法律で定められた、建物の安全性や機能性を保つための最低限の基準のことです)に適合していない「違法建築」であった可能性が指摘されたことから、既存の塀の安全管理体制に対する社会の不信感は一層高まることになったのです。
この危機的状況を受け、文部科学省は2018年(平成30年)8月、全国の国公私立の幼稚園、小・中・高校など、およそ5万1000校を対象に緊急調査を実施いたしました。この調査により、ブロック塀を設置している学校のうち、約6割にあたる1万2640校で、塀の外観に安全上の問題が認められるという衝撃的な実態が明らかになったのです。この結果は、私たち大人が、通学する子どもたちの身近な危険を長年にわたり放置していたことを物語っていると言えるでしょう。この調査結果を踏まえ、同省は改修状況や専門家による内部点検で問題が見つかった塀の数を把握するための追加調査を実施し、その結果を2019年(令和元年)夏に公表する予定でいます。
特に被害の大きかった大阪府内では、約1200校で塀の不備が判明し、このうち高槻市では、市立学校に設置されていた120センチメートルを超えるすべてのブロック塀を速やかに撤去する決断を下しました。さらに、今後は高さに関係なく全59校のブロック塀を撤去する方針を示しており、子どもたちの安全を最優先する姿勢がうかがえます。これは、全国の自治体にとって模範となる、英断だと言っても過言ではないでしょう。なぜなら、建築基準をクリアしている塀であっても、地盤の緩みや経年劣化などにより、地震で倒壊するリスクはゼロではないからです。
危険なブロック塀の撤去を後押しする自治体の支援策
学校だけでなく、通学路に面した私有地にあるブロック塀の安全対策も喫緊の課題として浮上しました。例えば、東京都足立区では、区内の通学路に約6千カ所ものブロック塀があることを把握し、大阪北部地震の発生後、建築士が危険と判断した塀の撤去工事などに対し、費用を助成する制度を立ち上げています。これは、危険なブロック塀の所有者に費用の面で寄り添い、対策を促す大変重要な取り組みだと考えられます。
足立区の助成制度は、2019年(平成31年)3月までに17件の利用があったということですが、通学路に点在する危険な塀の総数を考えると、その対策はまだ始まったばかりと言えるでしょう。一般の私有地にあるブロック塀の対策を進めるためには、まず「既存不適格」(建築当時は適法だったが、その後の法改正により現在の基準には適合しなくなったもの)の塀に対する所有者の意識改革と、自治体による継続的かつ積極的な支援が不可欠です。この悲劇を二度と繰り返さないために、国や自治体、そして私たち一人ひとりが、子どもの命を守る安全対策を「自分事」として捉え、一歩ずつ着実に前進させていく必要があるのです。