地方銀行(地銀)が厳しい経営環境に直面する中、地域経済再生の原動力となるべく、南都銀行が新たな戦略を打ち出しました。その柱となるのが、2019年6月17日に発表された中間持ち株会社体制への移行です。これは、複数の事業子会社を一元的に統括するための会社を設立する仕組みで、同グループ全体の収益力を高めることが最大の目的とされています。少子高齢化と人口減少が加速する中、金融サービスにとどまらず、リース、情報技術(IT)支援といった幅広い業務を展開する地銀にとって、グループとしての連携強化と提案力の向上が喫緊の課題となっています。
橋本隆史頭取は、体制移行の背景について、これまでの子会社運営における組織の甘さを指摘され、銀行本体だけでなく、関連会社も含めたグループ全体での改革を進めることで、企業価値の向上を目指す意向を表明されました。南都銀行グループには、最新の完全子会社である「南都まほろば証券」のほか、投資顧問やクレジット関連といった金融サービス、さらにはIT化支援や設備リースといった企業支援業務など、合計12社の子会社が存在しています。これまでは本体の経営企画部が子会社を管理されていましたが、グループ全体の統括力や、子会社間の相乗効果(シナジー)を生み出すには限界があったというのが実情です。
中間持ち株会社を設立することで、各子会社の業績に対する責任がより明確化されます。これは、経営目標の達成に向けて、グループ全体で事業を効率的に動かし、コスト削減と収益力のアップを狙うための体制強化と言えるでしょう。具体的な数値目標は「検討中」とのことですが、この新体制によって「稼ぐ力」を増強し、2020年度からの新たな中期経営計画の策定に繋げたい考えのようです。SNS上でも、「地銀の生き残りをかけた本気の変革だ」といった期待の声や、「グループ経営の効率化は不可欠」という経営判断への共感を示す意見が寄せられています。
新しい中間持ち株会社は、既存の子会社である「南都地所」が、本体保有の別の子会社9社の株式を約54億円で承継した上で、金融庁の認可を経て、2019年9月に「南都マネジメントサービス」として発足する予定です。企画部門での経験が長く、現在はリース子会社の社長を務める松岡弘樹氏が新会社の社長に就任されます。新体制では、事務処理やシステムの共通化によるコスト削減や、お客さまへのサービスを一つの窓口で完結できるワンストップ化を推進し、グループ運営の効率性を高める計画でいらっしゃるのです。
さらに、新しい事業展開の動きも活発化しています。南都銀行は、すでに2017年4月の信託業務への参入や、証券会社の子会社化を進めてきました。中間持ち株会社は、今後金融庁が進める業務範囲の規制緩和に対応し、新しい事業の受け皿とする狙いも込められています。特に注目すべきは、7月に子会社の1社を「南都コンサルティング」に商号変更し、業務を拡大する点です。この新会社では、中小企業の経営戦略立案支援、ビジネスマッチング、そして人材紹介など、地域企業の発展に直結するコンサルティング業務を手掛けることになります。
この「南都コンサルティング」の社長には、経営共創基盤から船木隆一郎氏が招かれました。また、今月下旬の株主総会後に副頭取に就任される予定の石田諭氏も、かつて経営共創基盤に在籍されていたご経験があり、外部の知見を取り入れ、グループ全体のコンサルティング能力を強化する姿勢が鮮明になっています。地銀の苦境は、長引くゼロ金利政策の影響もありますが、その根本には、奈良県においても加速する少子高齢化や人口減少といった地域経済の構造的な問題があると言えます。
特に奈良県は、北部が大阪のベッドタウンとして発展したため高齢化の波が急速に押し寄せ、山間部では深刻な人口減少に直面しています。さらに、県外への就業率や県外での消費の割合も高い状況が続いており、地域経済の活性化は容易な道のりではありません。南都銀行は、こうした厳しい環境を乗り切るため、3年間で店舗と人員をそれぞれ2割削減するというコスト削減策も表明されています。地域の雄である南都銀行が、いかにコストを抑えつつ、地域経済の活性化という重責を担うことができるのか、その真価が問われる局面を迎えていると言えるでしょう。
高コスト体質からの脱却と競争激化の波
2019年3月期の南都銀行単体ベースの実質業務純益は、前の期からほぼ半減し56億円まで落ち込んでおり、これはアベノミクス開始後の関西地銀の「稼ぐ力」が大幅に低下している傾向を裏付けています。奈良県内で圧倒的なシェアを誇る同行も例外ではないのです。この収益悪化の大きな要因として指摘されているのが、高コスト体質です。低金利環境への対応としてコスト削減が不十分であった結果、2019年3月期の行員一人当たりの実質業務純益は222万円となり、アベノミクス開始前の2012年3月期と比べて約6割も減少しています。
この数値は、隣接する和歌山県を地盤とする紀陽銀行の半分以下という厳しい水準であり、南都銀行が早急に経営体質の改善に取り組む必要性が浮き彫りになっています。店舗や人員の削減によって生き残りを図ろうとしていますが、他の地銀も同様に構造改革を急いでおり、地域金融機関の間の競争は一段と激化する可能性が高いです。例えば、関西みらいフィナンシャルグループは店舗の一部を個人営業に特化し、営業担当を増員する戦略を採っていますし、池田泉州銀行も2020年度までに有人店舗を21店削減する方針を打ち出しています。
さらに、滋賀銀行が千葉銀行などとの広域連携の枠組みである「TSUBASAアライアンス」へ参加を表明するなど、地銀再編の動きも活発化しています。こうした状況下で、南都銀行の橋本頭取は、記者会見で「単独で生き残れると思っている」と力強い言葉を発されましたが、同行が圧倒的なシェアを持つ奈良県内であっても、その先行きは予断を許さない状況だと推察されます。中間持ち株会社によるグループ統括力の強化と、コンサルティング業務への本格参入は、高コスト体質からの脱却と、競争の激化に打ち勝つための、極めて重要な一手となるでしょう。