【2019年6月】米中貿易摩擦の影が忍び寄る中、日本経済は「緩やかな回復」を維持できるのか?

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2019年6月18日、政府は月例経済報告を公表し、国内景気の全体像について「輸出や生産の弱さが続いているものの、緩やかに回復している」との判断を据え置きました。この表現は2019年5月からの維持で2カ月連続となっており、景気に対する総括的な見方は変わっていないことが分かります。世界経済の動向、特に米国と中国の間の貿易摩擦が外需、すなわち海外からの需要に影を落としている一方で、日本国内の需要である内需については引き続き力強い支えがあるという認識を示しているのでしょう。

その内需の根幹をなす要素として、雇用情勢と企業収益が挙げられます。労働市場は安定しており、企業が稼ぎ出す利益も堅調に推移していると政府は評価しています。今回の月例経済報告では、景気の個別項目14項目のうち、企業収益と国内企業物価の2項目で判断が変更されました。具体的には、企業収益について、これまでの「改善に足踏みがみられる」という慎重な見方から、「底堅く推移している」と一段階引き上げられ、企業活動の安定性が強調されています。

一方で、企業が仕入れる原材料などの価格動向を示す国内企業物価については、「緩やかに上昇」から「横ばい」へと判断が修正されました。これは、原油価格の下落など外部環境の変化や、企業の価格転嫁の動きが鈍いことを反映していると推測されます。そのほかの項目では、一般消費者の購買動向を示す個人消費が「持ち直している」という判断を維持したほか、企業の景況感を示す業況判断は「製造業を中心に慎重さがみられる」といった表現が使われており、楽観視できない状況も見て取れることでしょう。

景気回復が「緩やか」なペースで進んでいるという政府の見方に対し、SNS上では「実感がない」「一部の大企業だけでは」といった厳しい声も散見されました。多くの国民は、給与の上昇や生活費の負担軽減といった形での景気回復の恩恵をまだ十分に感じられていないのかもしれません。特に、製造業の景況感の慎重さや国内企業物価の「横ばい」という判断変更は、企業活動の勢いが一部で失速している可能性を示唆しており、先行きへの不安を感じる人が多いのも頷ける話です。

世界経済を揺るがす貿易摩擦の行方

政府は、景気の先行きに対する下振れリスクにも引き続き警鐘を鳴らしています。特に、米中間の通商問題の動向が世界経済に与える影響については、「一層注意する」という5月と同じ文言が踏襲されており、最大の懸念材料となっていることは明白です。通商問題とは、国際的な貿易に関する問題の総称で、ここでは米国と中国がお互いの輸入品に高い関税をかけ合う「貿易戦争」の様相を呈している事態を指しています。

この貿易摩擦は、グローバルなサプライチェーン(部品調達から製造、販売に至るまでの一連の流れ)を混乱させ、結果として日本の輸出や生産にも悪影響を及ぼしています。日本経済は外需への依存度が高いため、この問題の長期化は、国内の「緩やかな回復」基調を揺るがしかねない大きな脅威です。政府の判断は現時点では「回復」維持ですが、その裏には、通商問題の悪化という予期せぬ事態が起こる可能性に対する強い警戒感が含まれていると見るべきでしょう。

個人的な意見として、日本経済がこの「緩やかな回復」を確かなものにするためには、内需のさらなる底上げが不可欠だと思います。外需頼みの成長では、常に国際情勢という外部リスクに晒され続けてしまうからです。そのためには、賃金上昇を伴う雇用環境の改善を継続させ、消費者の将来不安を払拭し、個人消費を力強く伸ばすことが政府の最重要課題となるでしょう。また、米中貿易摩擦の影響が広がる中、企業には、サプライチェーンの多様化や新たな市場開拓といった、リスクヘッジの取り組みも求められていると考えられます。

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