2019年5月28日、世界の金融市場が「政治リスク」という暗雲に覆われ始めています。激化する米中貿易交渉、混迷を極める英国のEU離脱(ブレグジット)問題、そして予断を許さない日米通商交渉。世界経済の先行きを曇らせる材料が増え、投資家はリスクの高い資産(株式など)を売り、安全な資産(円や国債)を買う「リスク回避」の姿勢を強めています。
2019年5月27日に行われた安倍首相(当時)とトランプ米大統領(当時)の共同記者会見は、和やかな雰囲気で進みました。米国側から具体的な厳しい要求がなかったことで、市場には一時的な安心感が広がり、為替は円安方向に振れ、日経平均株価も反発しました。しかし、多くの市場専門家はこれを「一時的な動き」と冷静に分析しています。
なぜなら、最大の焦点である「自動車」を巡る交渉はこれからが本番だからです。米国が追加関税や輸入数量規制を求めれば、日本の自動車メーカーの収益懸念から株安を招き、結果として「リスク回避の円買い」につながるとみられています。さらに、米国が通貨安誘導を禁じる「為替条項」(相手国が輸出に有利になるよう意図的に通貨を安くすることを防ぐ取り決め)の導入を求めていることも、円安の進行を阻む大きな要因となっています。
加えて、2019年5月上旬に再燃した米中貿易摩擦も深刻です。この影響で円相場は111円台から109円台へと円高が進み、日経平均も1000円以上下落したままです。欧州でも議会選挙で「ポピュリズム(大衆迎合主義)」政党が躍進し、英国のメイ首相退陣でEU離脱の混乱は深まるばかり。2019年6月下旬のG20(大阪サミット)での米中首脳会談が、次の大きな分岐点となりそうです。
こうした状況に、SNS上では「政治リスクだらけで株なんて買えない」「結局、安全な円が買われるだけだ」といった悲観的な声が目立ちます。日本国内の政治リスク(衆参同日選など)は政権基盤が安定しているため、市場は問題視していません。しかし、海外の政治リスクが顕在化すれば、日本経済への打撃は避けられません。金融市場が海外の政治動向に過敏に反応する、神経質な局面が続きそうです。