2019年5月末に大塚ホールディングス(HD)から公表された新たな中期経営計画に対し、市場関係者の間で**「違和感」の声が目立っています。この計画は、国際会計基準(IFRS)に基づく事業利益を2023年12月期までに2,000億円(2018年12月期比で65%増)へと、年平均10%以上伸ばすという、非常に意欲的な目標を掲げているためです。
この大胆な成長戦略の具体的な内訳を見てみましょう。医薬品などの医療関連事業では、目標利益として1,450億円(49%増)を見込んでいます。一方で、健康食品や飲料などの機能性食品は650億円(51%増)と、医療分野に劣らない大きな伸びを期待している点が注目されています(これらはいずれも、内部売上高や全社費用の差し引き前の数値で示されています)。
特に、機能性食品事業の柱と位置づけられているのが、「乳製品代替品」市場への本格参入です。具体的には、エンドウ豆をはじめとした植物由来の原料を用いたチーズやアイスクリームを、カナダの子会社が菜食主義者**(ベジタリアン)や健康志向の消費者向けに生産しています。大塚HDは、この乳製品代替品の売上高を年平均25%という驚異的なペースで伸ばし、機能性食品全体の成長を牽引する計画です。
しかし、この強気の予測に対して、市場からは懐疑的な意見が出ています。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の若尾正示氏が「達成の確度に不透明感が残る」と指摘するように、その理由は、潜在的な需要の掘り起こしにかかっている乳製品代替品の将来性が見通しにくい点にあるでしょう。対象となる患者数が統計的に把握しやすい医薬品とは異なり、これから市場を創造していく機能性食品は、その分、販促費などのコストもかさむ傾向があります。
私自身の考えとしては、健康志向の高まりや多様な食文化への対応という点で、植物由来の食品市場は確かに有望です。しかし、既存の強力なブランド力と、これから市場浸透を図る製品との間には、大きな**「壁」**が存在します。この「壁」を乗り越えるための具体的な戦略と、それに伴うリスクを市場へ明確に示していく必要性があるのではないでしょうか。
腎臓病薬「ジンアーク」の成長見込みに市場の熱視線
一方で、医薬品事業においても、会社側と市場関係者の間で期待値に**「ズレ」が見られるのが、遺伝性疾患による腎不全などの原因となる疾患の治療薬「ジンアーク」です。大塚HDは、2023年までにこの薬を1,000億円強の大型薬**(メガブロックバスター、一般的に年間売上高が1,000億円を超える医薬品を指します)に育て上げる考えを示しています。
これは、当時の売上高が100億円前後とみられる「ジンアーク」にとって、非常に高い目標設定です。市場では、「これまでなかった領域の薬」であるという特性から、もっと速いスピードでの普及を期待する声も多く、会社側の計画が保守的すぎると受け止められた側面もあるようです。つまり、機能性食品の成長期待は楽観的すぎると捉えられ、一方の主力医薬品の成長期待は控えめすぎると感じられていることが、「違和感」の正体と言えるでしょう。
期待値の「ズレ」が招く株価の下落とSNSの反響
こうした市場とのボタンの掛け違いは、株価にも影響を与えています。大塚HDの株価は、2018年11月に急性骨髄性白血病の治療薬の開発中止を発表したことを契機に下落に転じました。同年11月末からの下落率は**35%にも達し、業種別日経平均の「医薬品」(14%安)と比較しても、その下げ幅は際立っています。
この状況に対し、SNSでは「大塚HDは堅実なイメージがあったが、成長戦略にギャンブル性を感じて不安」や「機能性食品の成長率に納得できる根拠が欲しい」といった、不安や疑問を呈する意見が散見されました。一方で、「新領域への挑戦は評価できる。特に植物性食品は将来性がある」と、挑戦的な姿勢を支持する声も一部にはあります。
このように、新たな経営計画は、市場の期待値と会社側の見通しに大きな「隔たり」**を生じさせているのが現状です。大塚HDは、この計画に対する市場の懸念を払拭し、成長への道筋を具体的に示すことで、信頼回復に努める必要性に迫られていると言えるでしょう。今後の動向から目が離せません。