兵庫県南西部、日本製鉄の広畑製鉄所などに代表される「鉄のまち」として知られてきた播磨地域が、今、情報技術(IT)と**人工知能(AI)を核とした新たなイノベーションの波を生み出しています。地域を支える産業に先端技術が融合することで、世界市場を見据えた斬新なビジネスモデルが次々と登場しているのです。SNSでは「播磨の技術力すごい」「鉄とAIのコラボレーションは熱い」と、その進展に注目が集まっています。
例えば、貨幣処理機大手のグローリー(姫路市)は、硬貨や紙幣の識別で培った高度な技術力を、顔認証システムに応用し、ソフトバンクグループのヒト型ロボット「ペッパー」などにも採用されています。同社は、単に認証を行うだけでなく、カメラ映像の解析によって、来店客がある商品を何秒間眺めたか、最終的に購入したかといった詳細なマーケティング情報を企業に提案する、新たな事業にもつなげています。
また、川崎重工業の明石工場(明石市)では、AIを使ったバイクの開発が進められています。これは、クラウド上の膨大な走行データと、車体に関する独自の知見を融合させることで、「スピードを5キロ落とせば次の信号を青で通過できます」といった、安全かつ快適な走行につながる情報を運転手に提供できるシステムです。AIの指示によって、運転手の技能や経験に応じた最適なバイクのセッティングも可能になると期待されています。
播磨地域では、独自の技術を持つ中小企業の躍進も目立ちます。コンベヤー用モーター内蔵型ローラーで世界シェア7割を握る伊東電機(加西市)は、AIと高速コンベヤーを組み合わせた複雑な仕分け作業の自動化システムを開発しました。また、システム開発のブレイン(西脇市)が手がけるパンのAIレジは、トレーを置くだけでパンの種類を瞬時に判別し、レジ業務の大幅な省力化に貢献しています。
さらに、ブレインはこのAI技術を応用し、尿中のぼうこうがん細胞を識別する装置を開発しました。これは、病理医(病気の原因などを診断する医師)が不足している現状を背景に、病理診断の支援という社会的な課題解決につなげたいという強い思いからです。このように、播磨ではIT技術が、製造業の効率化だけでなく、医療や社会インフラといった他分野の課題解決にも貢献し始めていると言えるでしょう。
そして、播磨の未来を支えるもう一つの柱が、播磨科学公園都市(上郡町など)にある先端研究施設です。ここには、大型放射光施設「スプリング8」と、その10億倍明るい「X線自由電子レーザー」**を作れる施設「サクラ」が集積しています。これらの施設は、国内外の産官学の研究者に開放されており、物質の変化の仕組みを原子レベルで解明できるため、高品質タイヤの開発やパン作りの気泡構造の解明といった身近な分野にも活用されてきました。
理化学研究所の石川哲也センター長(当時)は「播磨が最先端研究を支える頭脳拠点となっている」と話しています。2019年5月17日には、X線照射によって極めて短時間に起こる現象の観測に成功したと発表されました。将来的には、タンパク質の構造解析が進むことで、創薬研究の発展に大きく貢献することも期待されており、播磨は「鉄」と「光」の二刀流で世界的な産業・研究のハブへと進化し続けるでしょう。