🚨世界同時「金利低下」連鎖!米10年債2%割れで迫る金融緩和の波、株高の裏に潜むリスクとは?

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2019年6月、世界的に「経済の体温」ともいわれる金利の低下が急速に進んでいます。特に注目すべきは、6月19日(水)のニューヨーク債券市場で、米10年物国債の利回りが一時1.97%と、トランプ政権下での最低水準を記録したことです。国債の利回りとは、国が発行する借金の金利のことで、これが下がるということは、それだけ「安全な資産」とされる国債の需要が高まっている、または、経済成長やインフレの期待が低くなっていることを示唆します。この動きの背景には、世界景気に対する懸念の高まりと、それに対応するための各国中央銀行による金融緩和への期待があると言えるでしょう。

この利下げ期待の動きは、株式市場に追い風をもたらしています。6月20日(木)の米国市場では、主要な株価指数である米S&P500種株価指数が一時、史上最高値を更新しました。景気不安から金利が下がり、その結果として株価が上がるという、一見矛盾したこの状況は、経済の実態と市場の動きが乖離していることの表れかもしれません。筆者としては、この「景気不安を抱える株高」は、いつ調整局面に入ってもおかしくない、危うさをはらんでいると考えます。

米国の金利低下の引き金となったのは、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が、経済情勢に応じて利下げに転じる可能性を示唆したことです。市場では、7月の次回会合での利下げがほぼ確実視されており、中には通常の0.25%ではなく「0.50%の大幅利下げもありうる」と予想する声(米ゴールドマン・サックスなど)も浮上しています。利下げとは、中央銀行が政策金利を引き下げることで、景気の過熱を抑える金融引き締めとは逆の、景気を刺激するための金融緩和の手段です。

この動きは米国だけにとどまりません。前日の6月18日(火)には、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が、経済状況によっては「追加の景気刺激策が必要になる」と発言しました。また、6月に入ってからオーストラリアやインドがすでに利下げを実施しており、新興国も含めた世界的な緩和競争の様相が色濃くなっているのです。欧州では、フランスやスウェーデンでも10年物国債の利回りがマイナスになるという異例の事態が生じ、スイスでは20年以上の長期国債までマイナスに沈んでいます。

さらに、日本国内にもこの金利低下の波は押し寄せています。6月20日(木)の東京市場では、日本の10年物国債の利回りが一時、マイナス0.185%という、2016年8月以来、約2年10カ月ぶりの低水準を記録しました。世界的に金利が下がることで、日米の金利差縮小観測が強まり、これが為替市場で円高を招いています。実際、6月20日の為替市場では、円相場が1ドル=107円台前半まで円高に傾きました。日本銀行の黒田東彦総裁も、金融政策決定会合後の会見で、物価安定が損なわれる恐れがあれば「ちゅうちょなく追加緩和を検討する」と述べ、世界的な緩和ムードに追随する可能性を示唆しています。

世界景気「減速」懸念が金利を押し下げる構造

このような世界的な金利低下の背景にあるのは、世界経済の減速懸念です。景気は2018年から陰りが見え始め、特に中国や欧州の景気の弱さが目立っていました。当初は、中国の景気対策などにより2019年後半には回復するという楽観的な見方が主流でした。しかし、米中間の貿易摩擦が長期化し、解決の糸口が見えないことで、景気への懸念が一段と強まってしまっています。専門用語でいう米中貿易戦争とは、両国が輸入品に追加関税をかけ合うことで、世界貿易やサプライチェーンに大きな影響を及ぼす事態を指します。

これまで世界経済の「1強」とされてきた米国景気にも陰りが見え始めました。2017年から2018年の高成長を支えた減税の効果が薄れ始めているためです。個人消費は堅調に推移しているものの、企業の景況感の悪化が顕著になっています。サマーズ元米財務長官のような識者からは、「景気後退リスクを遠ざけるためには、少なくとも0.5%の利下げを行うべきだ」といった、危機感を募らせる意見が増加している状況です。ニューヨーク連邦準備銀行が算出する「米景気後退確率」も3割近くに上昇し、過去の景気後退局面の直前とほぼ同じ水準に達しているのです。

「カネ余り相場」が生み出す株高と、その脆さ

景気減速への懸念から利下げ期待が高まる一方で、この金融緩和のムードが株価を押し上げる原動力となっています。6月20日の米国市場では、米ダウ工業株30種平均も続伸して始まり、昨年10月につけた史上最高値(2万6828ドル)に迫る勢いでした。世界の主要な株価水準も、米中摩擦が再燃した5月の下落前の水準に近づいています。この株高の裏側には、金利収入が期待できない状況下で、より高い利回り(リターン)を求めて資金が株式市場に流れ込んでいる、いわゆる「カネ余り」の構造が存在します。

投資家は、長期間にわたって金融緩和が続いた経験から、株価が下がるリスクよりも、「早く投資しないと、利益を得る機会を逃してしまう」という機会損失の恐れを強く感じがちです。しかしながら、モルガン・スタンレーなどからは、「FRBの利下げ余地は過去に比べて小さく、利下げを行ったとしても景気減速や後退の流れを食い止められない可能性がある」との指摘も出ています。もし市場の注目が、緩和による一時的なプラス効果から、企業業績や実体経済の悪化に向かい始めれば、現在の株高はあっという間に崩壊し、株安を招きかねません。投資家は、この金利低下が示す景気不安の本質と、それによってもたらされているカネ余りの株高という、一見矛盾した状況を冷静に見極める必要があるでしょう。

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