近年、医療技術の進歩に伴い、病気やケガの治療における入院日数の短期化や、外来での通院治療が増加しています。このような医療環境の変化に対応するため、民間の医療保険に新しい潮流が生まれているのです。従来の「入院日額タイプ」とは異なり、日帰りや1泊といった短い入院でもまとまった一時金を受け取れる商品や、高額になりがちな薬剤治療の費用を保障する商品などが続々と登場し、進化型医療保険として注目を集めています。
新しい保障内容は安心感を高めてくれる一方で、保険料が割高になるケースも少なくありません。公的な医療保険制度との役割分担や、ご自身の家計状況を踏まえて、どのような方が民間の医療保険を必要としているのか、そして保険選びの際に注意すべきポイントは何なのかを詳しく見ていきましょう。
日本の公的医療保険制度の「安心の土台」を再確認しましょう
まず、私たちが暮らす日本では、すべての方が「高額療養費制度」という非常に心強い公的な制度に守られています。これは、1か月に支払った医療費の自己負担額が一定の限度額を超えた場合、その超えた分が健康保険から払い戻される仕組みです。例えば、年収が370万円から770万円の現役世代の方が、もし月間に100万円の医療費がかかった場合、窓口では一旦3割にあたる30万円を支払いますが、この制度のおかげで、約21万円が後から払い戻され、実質的な自己負担額は約9万円で済む計算になります。この高額療養費制度は、万一の出費に備えるための大きな柱だと言えるでしょう。
しかし、公的制度が充実しているからといって、民間の保険が不要かと言えば、必ずしもそうではありません。特に、住宅ローンを抱える子育て世帯など、教育費や日々の生活費で資金需要が大きい家庭では、計画的に貯蓄をしていても、病気による突然の大きな出費には対応しきれない可能性があります。また、病気のリスクが高まる高齢層の方々にとっても、保険による追加的な安心感は非常に重要でしょう。
短期入院のトレンドに対応!まとまった「一時金」で安心を確保
厚生労働省の2017年の調査によると、平均入院日数は29.3日と、過去20年間で約10日も短くなっています。特に注目すべきは、退院患者の約6割が10日以内に入院を終えているという事実です。これは、脳血管疾患のような一部の病気を除けば、心疾患やがんなども入院日数が20日弱に収まる傾向にあるためです。このような短期入院のニーズに対応するため、各保険会社から短期入院に手厚い保障が販売され始めています。
日本生命保険が2019年4月に発売した「入院総合保険 NEW in 1(ニューインワン)」では、従来の「入院日額タイプ」ではなく、日帰り入院からでもまとまった一時金30万円を受け取れる保障を基本としています。また、明治安田生命保険の「50歳からの終身医療保険」も、50歳から加入でき、入院1日から10万円の給付金を受け取ることが可能です。さらに、健康に過ごせれば5年ごとに5万円のキャッシュバックがあるというユニークな仕組みも設けられています。
三井住友海上あいおい生命保険が2018年4月に発売した「&LIFE 新医療保険Aプレミア」は、日帰り入院でも基本で5日分、特則を付加すれば10日分の給付金を受け取れる設計となっております。このように、日帰りでも数日分の給付を受け取れる商品は、医療技術の進歩によって早期退院するケースが増えている現代の治療実態に、よりマッチしていると言えるでしょう。ただし、手厚い保障ゆえに、保障内容がシンプルな「日額タイプ」に比べ、保険料は月数百円程度割高になる傾向にあるため、保障内容と保険料のバランスを見極めて選ぶ必要がございます。
通院治療時代の新しい備え:「薬剤治療」を重点保障
従来の医療保険は、入院や手術を保障の中心とすることが多かったため、外来での高額な薬剤治療には十分に対応できていないという課題がありました。これに対応するため、メディケア生命保険は2019年5月、薬剤による治療を保障する保険「メディフィットEX」の販売を開始いたしました。これは、がん、心疾患、脳血管疾患の3大疾病に加えて、糖尿病など計9つの疾病を対象とし、入院や手術の有無を問わず、抗がん剤などの対象薬剤治療を受けた月に10万円または5万円を受け取れるという画期的な内容です。
特に、がん治療の分野では、放射線治療や抗がん剤を用いた化学療法など、入院を伴わない通院での治療の重要性が増しています。チューリッヒ生命保険のように、がんの診断一時金などをオプションとし、抗がん剤治療をメインで保障する商品も登場しています。これらの動きは、がん治療の進歩に合わせて、保険も進化していることの表れだと言えるでしょう。
読者からの反響と編集者としての私見
SNS上では、「短期入院でも一時金が出るのは心強い」「抗がん剤治療の保障は時代に合っている」といった好意的な意見が多く見受けられます。一方で、「公的保険があるのに必要か?」「保険料が上がると家計が苦しい」といった、保険の必要性と費用のバランスに悩む声も散見されます。
ファイナンシャルプランナーの竹下さくら氏は、「自己負担額に充てる貯蓄があれば民間の医療保険は基本的に不要」としながらも、「公的な制度と貯蓄で賄えない場合に考えたい」とアドバイスされています。私もこの考え方に賛同し、まず高額療養費制度とご自身の貯蓄でどれだけカバーできるかを把握することが、保険選びの第一歩だと考えます。その上で、医療費以外にかさむ差額ベッド代、家族の交通費、身の回り品代といった費用や、働けない期間の収入減を補うために、民間の医療保険を検討することが賢明でしょう。各社から魅力的な新商品が続々と投入される競争の激しい市場だからこそ、ご自身のライフスタイルとニーズに応じた保障をしっかりと見極めていただきたいと思います。