二〇一九年五月二十八日、秋田市を拠点とするCG(コンピューターグラフィックス)制作会社「ゼロニウム」から、私たちの日常空間を一変させるかもしれない、非常に夢のある技術が発表されました。それは、壁や床に映し出された映像に手やボールで触れると、その動きに応じて映像がリアルタイムに変化する「インタラクティブウオール」です。
この技術の核心は「インタラクティブ(双方向性)」にあります。プロジェクター、センサー、そして独自のソフトウェアを搭載したパソコンが連動し、人の動きを即座に映像にフィードバックさせるのです。デモンストレーションでは、新元号「令和」の映像に触れると花火が上がり、「令和二年」「令和三年」と年数が進んでいく様子が披露されました。まさにデジタルと現実が融合した体験と言えるでしょう。
この発表に対し、SNS上では「壁がモグラたたきになるの?子供が喜びそう!」「高齢者のリハビリに使えるのが良い。ゲーム感覚で楽しめそう」といった、その応用範囲の広さに期待する声が早くも上がっています。商業施設のアトラクションや、人が触れるたびに変化する新しい広告はもちろんですが、私自身、この技術の真価は別の場所にあると感じています。
私が特に注目したいのは、介護施設などでの「リハビリテーション」への活用です。数字に触れて数を増減させるような、ゲーム感覚での機能訓練が可能になります。家庭用ゲーム開発に携わってきた伊藤茂之社長の知見が、エンターテインメントの力を「ウェルビーイング(より良く生きること)」の領域に昇華させようとしているのです。これは、高齢化が進む地域社会の課題解決に、テクノロジーが優しく寄り添う素晴らしいモデルケースではないでしょうか。
ゼロニウムは、伊藤社長が二〇〇四年に秋田市へUターン起業した会社です。二〇一八年秋の「種苗交換会」におけるプロジェクションマッピング(建物などに映像を投影する技術)や、二〇一九年四月に阿仁合駅にオープンした施設でのジオラマ投影など、地元秋田で着実に実績を積み重ねてきました。「あきた創業サポートファンド」の出資も受け、地方発の小さな企業が大きな可能性を提示した。この「インタラクティブウオール」は、秋田から日本の未来を照らす、希望の光となるかもしれません。