高齢化社会が急速に進む中、離れて暮らす親の「見守り」は、多くの家庭にとって喫緊の課題となっています。二〇一九年五月二十八日、この切実なニーズに応えるべく、介護施設の運営とシステム開発を手掛けるインフィック(静岡市)が、在宅自立支援を促す新しい見守りシステムの販売開始を発表しました。これは、介護のプロが本気で家庭用市場を開拓する、注目の挑戦と言えるでしょう。
新システム「LASHIC home(ラシク―ホーム)」は、同社が介護施設向けに提供していた技術を家庭用に最適化したものです。室内の温湿度や運動量を感知するセンサーに加え、ベッドに敷くシート型センサーで呼吸や睡眠状態までも把握。さらに、ボタン一つで家族に通報・通話できる「緊急連絡機能」を新たに追加し、日々の体調変化と緊急時の両方に対応します。
しかし、この「家庭用見守り」市場は、決して楽な戦場ではありません。「IoT(モノのインターネット)」技術の発展に伴い、中部電力や静岡ガスといった地域の生活インフラ系の大手企業が、ドア開閉センサーや小型カメラを武器に、すでに次々と参入している激戦区なのです。
では、インフィックの強みはどこにあるのでしょうか。それは「カメラを使わない」という一点に尽きると私は考えます。増田正寿社長が語るように、同社のシステムは自社運営の介護現場の声(ノウハウ)を反映しています。常に監視されているようなカメラの精神的負担(プライバシー侵害)を避け、運動量や睡眠といった「データ」で異常の予兆を掴む。これこそが、介護のプロだからこそ辿り着いた、利用者の尊厳を守る設計思想ではないでしょうか。
この「カメラなし」の優しさと、緊急ボタンという安心感の両立に対し、SNS上では「これなら親も嫌がらないかも」「データで睡眠を見れるのは重要」といった、プライバシーに配慮した設計を評価する声が上がっています。大手インフラ企業が「技術(IoT)」で攻める中、インフィックは「介護(人の理解)」で勝負する。この静岡発の挑戦が、日本の在宅支援のスタンダードを変えるかもしれません。