激震!世界貿易の秩序は崩壊するのか?G20大阪サミットを前に考える「米中摩擦」と「WTO改革」の未来

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世界の貿易体制は今、これまでにない異常な事態に直面しており、平和で穏やかな通商の日々を思い出すことさえ困難になっている状況です。ほんの数年前の2016年、世界の通商における最大の関心事は、米国が主導する環太平洋経済連携協定(TPP)の行方でした。これは、米国がアジア太平洋地域の11カ国を結集させ、自国の経済的な足場を世界に拡大できるかという点に注目が集まっていました。当時の米国は言葉を選びながらも、TPPが非軍事的な「中国包囲網」としての性格を帯びていたことは明らかでしょう。というのも、中国では広範囲な企業への補助金供与や、外国企業への強制的な技術移転(外国企業が中国市場に進出する際、技術の提供を強制される慣行)といった行為が懸念されており、米政権はこうした問題に対し、**世界貿易機関(WTO)**を通じて追及することが賢明だと考えていたのです。

しかし、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)という決定と、米国でのドナルド・トランプ大統領の誕生が、世界の潮目を一変させました。2016年6月、英国でEU離脱派が国民投票で勝利を収めた後、英国とEUの間で始まった離脱交渉は、一度単一市場に入り込んだ国がそこから抜け出そうとする際に、どのような混乱が生じるのかを試す実験場となっています。一方、米国では、トランプ氏が就任するやいなや、従来の世界貿易におけるあらゆる規範や法令を破り捨て、自国の利益を最優先する姿勢を打ち出しました。

2017年にトランプ大統領が就任して以降、メキシコ、カナダ、日本、EUといった近隣や同盟国に対してさえも、鉄鋼やアルミニウムに対する関税措置を講じ、激しい非難を浴びせました。特に、**北米自由貿易協定(NAFTA)**の再交渉を迫り、EUや日本との交渉では、自動車関税を「ゆすり」の道具としてちらつかせたのです。多くの専門家は、国家の安全保障を理由に関税を正当化することは適切ではないと考えていますが、現行の制度では政府の裁量が認められているのが実情です。これは、国際貿易のルールが、政治的な駆け引きによって容易に歪められてしまう脆弱性を露呈していると言えるでしょう。

トランプ氏の怒りの矛先が最も強く向けられたのは中国です。中国からの輸入品に対し、次々と高関税を課すトランプ氏の行動原理は、「関税の代償を払うのは輸入国の消費者ではなく、輸出国だ」という独自の信念に基づいています。さらに、敵を打ち負かすための強力な道具として、中国の巨大通信機器メーカーである華為技術(ファーウェイ)にも目をつけました。具体的には、同社と取引を行う企業からの輸出を禁じることで、ファーウェイを世界のサプライチェーン(部品の調達から製造、消費者に届くまでの供給網全体)から締め出し、中国の巨大企業を弱体化させようと試みたのです。

ただ、トランプ氏の強硬な施策が本当に意図した効果を発揮するかどうかは定かではありません。関税を課すだけでは、国際収支の赤字を根本的に解消することは困難でしょう。国際収支の中でも、モノやサービスの取引を示す経常収支(貿易や投資など、国と国との継続的な取引の収支)は、その国の貯蓄率など、より広範なマクロ経済的要因(国全体の経済活動に関わる要因)にも強く影響されるためです。また、ファーウェイに関しては、同社の製品が次世代通信規格「5G」ネットワークの中心的な技術であり、欧州をはじめとする多くの国々は、トランプ氏による中国排除の呼びかけに対し、否定的な姿勢を見せています。

もしトランプ氏が本当に米国と中国の経済を完全に分離(デカップリング)させるつもりであれば、「多国籍企業が米中の両国でビジネスをすることは許されない」といった主張を打ち出し、さらに強力な干渉をせざるを得なくなるでしょう。しかし、これは賢明な選択とは言えません。なぜなら、米中経済の分離は世界経済全体に甚大な悪影響を及ぼすと考えられるからです。私見では、トランプ大統領の一連の行動は、短期的には国内の支持層に訴える効果はあるかもしれませんが、長期的には、米国自身が築き上げてきた自由貿易体制を揺るがし、結果として米国の国益を損なうリスクをはらんでいると考えられます。

一方で、米国以外の主要な貿易大国は、これまでのところ、守りの姿勢を保ってきました。EUと日本は、可能な限り多くの国と二国間協定を結ぶことで、通商上のリスクを分散しようとしています。特に日本は、米国が離脱した後のTPPを**環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)**として復活させ、貿易自由化の旗手としての役割を果たしています。EUも数年にわたる交渉を経てカナダとの協定を締結し、メキシコとの合意を更新するなど、着実に手を打っています。さらに、オーストラリアやニュージーランドとの協議にも着手しており、多角的な貿易ネットワークの構築に努めている状況です。

しかし、もはやどの国も、トランプ氏の「気まぐれ」に振り回されずに貿易交渉を進めることはできなくなっています。メキシコはトランプ氏の批判に応じてNAFTAの見直しに同意しましたが、その後、移民問題を解決しない限り、関税という道具で脅迫され続けるという厳しい現実を突きつけられました。また、EUと日本は、日米欧が協調して中国に産業補助金の改革を迫ることで、トランプ氏をWTOを通じたルールに基づく行動に立ち返らせようとしています。これは一筋縄ではいかない試みで、未だ米国の対中政策を根本的に転換させるまでには至っていません。

トランプ氏の行動を予測することは、ほぼ不可能に近いと言えるでしょう。なぜなら、従来の貿易規範を無視するという点以外に、一貫した行動パターンが見当たらないからです。2019年6月28日および29日に開催されるG20大阪サミット(主要20カ国・地域首脳会議)では、こうした米中摩擦や保護主義の台頭が主要な議題となる見込みですが、事態の打開は容易ではないでしょう。現時点でほぼ確実と言えるのは、世界の貿易体制にとって、第2次世界大戦以降で最大の試練が、少なくとも今後1年半は続くであろうということです。SNSでは、「貿易戦争で結局損をするのは消費者だ」「自由貿易はもう終わったのか」といった不安や懸念の声が広がっており、世界の通商秩序の行く末に、国際社会全体が大きな注目を寄せています。

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