2019年5月29日付の報道は、日本の老舗味噌メーカーであるひかり味噌(長野県下諏訪町)が、巨大な中国市場へユニークな挑戦を始めたことを伝えました。同社は、中国の食品加工会社である龍大食品集団(山東省)と業務提携を結び、中国では前例のない**「スープ春雨」**の販売を開始したのです。この挑戦の裏側には、中国社会のライフスタイルの変化を見据えた、緻密な市場戦略がありました。
中国では、春雨はこれまで炒め物や鍋料理に使われることが一般的であり、日本で広く親しまれているような即席のスープタイプの商品はほとんど存在していませんでした。しかし、ひかり味噌は、共働き世帯の増加によって、手軽に短時間で食事を済ませたいという中食(調理済み食品)への需要が確実に高まっていると判断しました。SNS上でも当時、「味噌メーカーが春雨とは意外」「忙しい中国の若い世代にはウケそう」といった、事業の新規性に対する反響が見受けられました。
同社はまず、提携先の龍大食品傘下のスーパーで販売をスタートし、その後は中国全土へ販路を拡大していく計画でした。さらに、同年6月からは、中国の巨大なインターネット通販サイトでも取り扱いを始めるなど、デジタルを活用した販売戦略も同時に展開する方針でした。ひかり味噌の当時の売上高は約145億円でしたが、同社は「中国にスープ春雨の市場がないため、まずは売り場での定着を目指したい」と、市場の創造という高い目標を掲げました。
コラムニストとしての私の意見ですが、このひかり味噌の挑戦は、日本の食品メーカーが海外市場で成功するための重要なヒントを示しています。それは、**「現地の食文化を尊重しつつ、ニーズの隙間を突く」**という戦略です。中国の調理習慣を知りながら、日本の即席食品のノウハウを応用することで、忙しい現代のライフスタイルに合致した新しい市場を開拓しようとしています。この「スープ春雨」が、中国の食卓に新しい習慣として根付くことを期待したいものです。