2018年7月の開所以来、産学官連携による革新的な研究拠点として注目を集めてきた宇都宮大学の施設「REAL(リアル)」が、このたび1周年を迎えました。REALとは、同大学が誇るロボット技術や農業分野の知見をビジネスとして社会実装することを目指し、「ロボティクス・工農技術研究所」の略称として名付けられた施設であります。文部科学省からの助成を受け、およそ7億円を投じて整備されたこの最先端の研究所は、開設からわずか1年で次々と画期的なプロジェクトを生み出しており、その活動の多様性とスピード感には目を見張るものがあります。
このREALの最大の強みは、企業が求める具体的な実証実験ができる、充実した設備が整えられている点でしょう。特に、ロボットが実際に乗り降りできるエレベーターなどの特殊な実験設備が、楽天やNECといった大手企業を強力に惹きつけている要因になっています。プロジェクトの数は、稼働当初の5件から1年で倍以上の11件にまで急増しており、農作業の効率化や物流の省力化など、現代社会が抱える喫緊の課題を解決するための多様な研究が、活発に進められているのです。
例えば、REALの2階に設けられた「インキュベーション室」では、楽天グループ傘下の楽天技術研究所が「物流支援ロボットシステム」と名付けられたプロジェクトを精力的に展開しています。彼らが目指すのは、高層ビルや住宅密集地など、ドローンでの配送が難しいエリアにおける「ラストワンマイル」への対応です。ラストワンマイルとは、物流における最終拠点からエンドユーザーへ商品を届けるまでの最後の区間を意味する専門用語であり、ここでの人手不足解消が切実に求められています。同研究所は、無人の配送ロボットが自らエレベーターを操作して建物内を移動できるようにするなど、建物の内部でも機能する革新的な技術の開発を進めている状況です。
楽天技術研究所の佐伯嘉彦氏によると、ロボットがエレベーターに乗り降りするような実環境でのテストができる施設は、国内では他に類を見ないとのことで、REALを利用できることは開発において大きなアドバンテージになっていると強調されています。現在は法律による規制があり、特定の区域(特区)以外での無人ロボットの使用は認められていませんが、将来的にはこの技術を実用化することを目指しているとのことです。私見ですが、この物流におけるロボット活用は、高齢化と人手不足が深刻化する日本社会にとって、必ずや未来のインフラを支える重要なカギとなる技術だと確信しています。
企業を魅了する実験環境と研究の広がり
REALは、プロジェクトごとに大学や企業などが連携して活動しており、3Dプリンターなどの試作設備や、農作物を栽培できる専用の栽培室まで備えられています。また、ロボット用のスロープが設置されるなど、実験しやすい環境が細部にわたって整えられているため、企業や農家、さらには行政からの視察も非常に多いと聞きます。REAL所長を務める宇都宮大学の尾崎功一教授は、プロジェクトの増加に加えて、他にもこの施設に関心を示す企業が多数存在していることを明かされており、その期待の高さが伺えます。
尾崎教授自身が率いる「農業支援ロボット」プロジェクトには、NECなどの企業も参画し、イチゴの収穫から運搬までを一貫して自動で行うロボットの実用化に挑んでいます。また、人間が歩くとその背後を自動で追尾して荷物を運ぶ農業用搬送ロボットは、すでに大学発ベンチャーを通じて数台の販売実績があるなど、研究の成果が着実に社会へ出始めている状況です。このような成果を見ると、REALが単なる研究施設に留まらず、イノベーションの「種」を蒔き、育てるための実践的なプラットフォームとして機能していることが分かります。
【SNSでの反響】「地味だけどすごい」と共感の声
このREALのような、一見地味ながらも社会の根幹を変えうる研究に関するニュースは、SNSでも一定の注目を集めています。「ロボットとエレベーターの連携テストができる施設はすごい」「地方の国立大学が、日本の未来を変える技術を研究していることに感動する」といった、知的好奇心を満たす内容へのポジティブな反応が多く見受けられました。特に、物流という身近なテーマでの実用化を目指す点に、「地味だけど、すごく重要なこと」と共感するコメントも目立ち、社会実装への期待の高さが感じられます。この反響からも、研究成果が広く社会の関心事となっていることが理解できます。
実用化への道のりと量産化の課題
順調に成果を上げているREALですが、研究を実用化し、広く普及させるためにはコスト面での課題が残されていることも事実でしょう。尾崎教授は、試作品(プロトタイプ)の作成は大学が得意とする分野であるものの、大量生産となると企業の力が不可欠となるとの見解を示されています。その上で、「量産化の段階で、大学側が企業の要求にどのように応えられるかが、今後の普及のカギとなる」と指摘されています。これは、基礎研究と産業化の間に存在する「死の谷」を乗り越えるための、本質的な課題を突いていると言えるでしょう。技術の斬新さだけでなく、いかに安価で安定的に提供できるか。宇都宮大学REALの、未来の技術が試される挑戦は、まだ始まったばかりであります。