長年にわたり、他社のブランドを支える影の立役者として、高品質な製品を作り続けてきた日本の職人たち。その中でも、香川県東かがわ市に拠点を置く革カバンメーカーのアーバン工芸が、大きな潮目を迎えようとしています。2019年5月29日の時点において、同社は従来のOEM(オーイーエム、相手先ブランドによる生産)事業とは一線を画し、初めて自社ブランドによる事業に乗り出すことを発表しました。その新しいブランドこそが、「TIDE(タイド)」です。
「TIDE」とは、文字通り「潮の流れ」を意味する言葉です。これは、長らくOEMを専門としてきた会社の事業の「流れ」を自ら変え、新たなステージへと舵を切るという、プロジェクトを主導してきた内海公翔氏の熱い思いが込められています。彼にとって自社ブランド展開は長年の夢だったと語られており、この新ブランドは単なる商品展開ではなく、企業のアイデンティティを再構築する壮大な挑戦だと言えるでしょう。
この「TIDE」の最大の魅力は、同社が革手袋の製造で培ってきた高度な職人技が惜しみなく注ぎ込まれている点にあります。特に注目すべきは、縫い目を外側に見せないように仕上げる「内縫い」という特殊な手法です。これにより、製品に洗練された美しいフォルムと、どことなく和の雰囲気が漂う独自の美学がもたらされています。実際、展示会でも和装小物販売店から引き合いがあるなど、そのデザイン性の高さはすでに評価されているようです。
デザイン面では、複数の牛革を組み合わせた立体的な「パッチワーク」が特徴的です。瀬戸内の潮の流れや大地の等高線をイメージして表現されたその模様は、まるでアート作品のようですね。ラインナップは、トートバッグや財布など男女兼用の5種類が用意され、価格は税抜き2万円から8万8,000円と、従来のOEM製品とは異なる高価格帯で展開されます。
一般販売は2019年6月を予定しており、百貨店などでの展開が検討されています。SNS上では、「日本の職人技が表に出るのが嬉しい」「内縫いの美しさをぜひ見てみたい」といった、技術への期待の声が上がっています。アーバン工芸は、この自社ブランドを5年後に年間5,000万円、将来的には売上高の3割を占める事業へと育てたい考えです。私は、日本の誇るべき職人技術が、OEMという下支え役から、TIDEのように表舞台で輝く主役となることを心から応援したいと考えます。