北海道土産の代名詞といえば、誰もが思い浮かべるのが「白い恋人」ではないでしょうか。その製造販売を手掛ける石屋製菓から、2019年5月28日、単なる新作お菓子の発表よりもはるかにインパクトのあるニュースが飛び込んできました。なんと同社は、総額10億円規模の投資ファンドを立ち上げ、北海道内の企業を金融面から支援するというのです。
一製菓メーカーが、銀行や証券会社のような「ファンド」を運営するのは、北海道内では極めて異例の試みと言えます。この「ISHIYAクリエイティブス」と名付けられた新ファンドは、2019年5月31日から募集を開始し、最大で12年間にわたって運用される予定です。甘いお菓子を作る会社が、なぜこれほど硬派な経済活動に乗り出したのか、その背景には北海道が抱える切実な事情がありました。
黒字でも廃業?「後継者不足」という時限爆弾
投資の対象となるのは、主にお菓子の原材料を作る農家や、包装資材メーカー、物流会社など、石屋製菓のビジネスに深く関わる道内企業です。実は今、北海道に限らず日本全国で、素晴らしい技術やノウハウを持ちながらも、後継者がいないために廃業を余儀なくされる中小企業が急増しています。
こうした「事業承継」の問題は、地域経済にとって深刻な打撃となります。そこで石屋製菓は、資金を提供するだけでなく、人手が足りない企業に自社の社員を派遣したり、場合によっては経営そのものを引き継ぐことまで視野に入れています。まさに、お菓子作りを支えるサプライチェーン(供給網)全体を、自らの手で守ろうという覚悟の表れでしょう。
SNSでの反響とコラムニストの視点
この発表に対し、SNS上では道民や「白い恋人」ファンから称賛の声が相次いでいます。「地元企業が地元を支える、これぞ理想の経済循環だ」「白い恋人を買うことが北海道への応援になるなら、もっと買いたい」といった温かいコメントが多く見られ、企業の社会的責任(CSR)という観点からも非常に高い評価を得ているようです。
私自身、この決断には膝を打つ思いです。昨今のインバウンド(訪日外国人客)ブームで、石屋製菓の業績は絶好調と言われています。しかし、彼らは「海外の好調さにあぐらをかかず、足元の国内基盤を固める」という極めて冷静かつ長期的な視点を持っています。自分たちだけが儲かればいいのではなく、地域の仲間と共に生き残る道を選んだ石屋製菓の姿勢は、令和の時代の新しい企業モデルとして、多くの経営者に勇気を与えるのではないでしょうか。