2019年05月30日、令和のゴルフ界に渋い輝きを放つニュースが届きました。男子プロゴルフのベテラン、米山剛選手(54)が、今年07月04日から始まる国内メジャー「日本プロ選手権」への出場権を獲得したのです。昨年のシニアツアーでの優勝が切符となりましたが、戦いの舞台となるのは鹿児島県の「いぶすきゴルフクラブ」。ここは彼にとって、ただのコースではありません。かつて1999年に劇的な逆転勝利を飾り、年間3勝目を挙げた思い出の地なのです。
名匠・井上誠一氏が設計し、「薩摩富士」と呼ばれる開聞岳(かいもんだけ)の麓に広がるこの難コース。20年前、首位と2打差からスタートした米山選手は、ノーボギーの7バーディーという神がかり的なプレーを見せつけました。当時の彼は「自分はアプローチとパットでしのぐ選手」と謙遜していましたが、時を経てシニアとなった今、再びこの地に立つことになります。レギュラーツアーはシニアよりもラフが深く、セッティングも過酷ですが、彼は「予選通過」を目標に、あくまで自然体で挑む構えです。
「笑顔」と「緩急」が武器?シニアならではの戦い方
米山選手の言葉からは、ベテランならではの達観した強さが感じられます。「良い時も悪い時も笑顔で。集中とリラックスをいい加減でミックスする」。これぞ、修羅場をくぐり抜けてきたシニアプロの境地でしょう。飛距離では若手に及ばなくとも、彼には抜群の正確性という武器があります。自分に過度なプレッシャーをかけず、ゴルフそのものを楽しむ姿勢は、私たちのアマチュアゴルファーにとっても大いに参考になるメンタル術ではないでしょうか。
SNS上でも、この挑戦に対して往年のファンから熱いエールが飛んでいます。「99年のいぶすき、覚えてる!あの再現を見たい」「シニアがレギュラーで若手を翻弄するのは痛快」「米山さんの粘り強いゴルフが好き」といった書き込みが見られ、オールドファンの期待が高まっていることが分かります。若手のパワーゲームも魅力的ですが、技と経験でコースを攻略するベテランの姿には、独特の色気があるものです。
プロ冥利に尽きる「会心の一打」を求めて
米山選手が選ぶ自身の「ベストショット」は、2017年のファンケルクラシックでのプレーオフだそうです。負ければ終わりの場面で7メートルのパットをねじ込み、「どうせ一度は死んだ身」と開き直って放った4番ユーティリティー(アイアンとウッドの中間のクラブで、扱いやすく飛距離が出る)での一打。ピンそば30センチにつけたそのスーパーショットは、ギャラリーを熱狂させました。
コラムニストとして私が思うに、プロスポーツの真髄とは、記録やスコア以上に「観客の期待を超えた瞬間」にあります。米山選手自身も「ギャラリーの期待に応えるプレーができた時が会心」と語っています。06月07日からは米シニアツアー「マスターカードジャパン選手権」への参戦も決まっている米山選手。これからも私たちを沸かせる「魅せるゴルフ」を続けてくれることでしょう。なお、本コラムは今回で一区切りとなり、次回からは若手のホープ、稲森佑貴プロにバトンタッチします。