東欧の国ルーマニアにおいて、長らく政界の最高実力者として君臨してきた与党・社会民主党のリビウ・ドラグネア党首が、ついにその権力の座から引きずり降ろされました。2019年5月27日、職権乱用の罪に問われていたドラグネア氏に対し、最高裁判所が禁錮3年6カ月の原判決を支持する判断を下し、刑が確定したのです。ドラグネア氏は判決が確定したその日のうちに収監される運びとなりました。
この事件は、汚職が蔓延し、司法の独立(権力からの干渉を受けず、法に基づいて公平な判断を下すこと)が脅かされてきたルーマニアにおいて、極めて大きな転換点です。欧州連合(EU)など国際社会も、このルーマニアの状況に対し強い懸念と批判を強めていました。そのため、最高実力者の収監は、ルーマニアが脱汚職へと向かうための「大きな一歩」であり、この動きは他の東欧諸国、特に権威主義的な傾向が見られる国々にも影響が広がる可能性を秘めていると言えるでしょう。
ドラグネア氏は、2人の党職員を公的機関で働いていると偽装し、不当に給与を支払わせていたとされています。この不正に対する判決が確定した際、首都ブカレストでは、ロイター通信などが報じたところによると、判決を歓迎する数百人の市民が街頭に繰り出しました。渋滞の中、刑務所へと向かうドラグネア氏の車に向かって、「刑務所行きだ」と歓喜の声を上げる市民の姿も見られたといいます。野党指導者からは「ドラグネア時代の終わりだ」という声が上がり、国民の間に積もっていた不満と、司法への期待の高さが感じられます。
ドラグネア氏は、2016年に政権を獲得した社会民主党のトップとして、自分に近しい人物を首相に据えるなどして、絶大な影響力を行使してきました。その権力は非常に強大で、2017年には、汚職や横領などに問われた政治家の罪を減免するための緊急法令を打ち出したことさえありました。この試みは、かつてのチャウシェスク政権崩壊をもたらした1989年以来の規模となる大規模なデモを引き起こし、法令は撤回されましたが、その後もドラグネア氏は司法への介入を繰り返し試みていた経緯があります。
国民の「ノー」が決定打に
今回の収監の直前には、国民の**「脱・汚職」への意思が鮮明になる出来事がありました。2019年5月26日、中道派の大統領が呼びかけた国民投票では、政府による司法を弱体化させる動きに対して、投票した市民の80パーセント以上が反対の意思を示したのです。同日に実施された欧州議会選挙でも、ドラグネア氏率いる社会民主党は惨敗を喫しており、国民の厳しい審判が、彼の政治的な追い込まれ具合を決定づけたと言えるでしょう。
私見を述べさせていただきますと、このルーマニアの最高実力者失脚のニュースは、単なる一国の汚職事件の結末ではありません。現在、東欧ではハンガリーやポーランドなどで、強権的な政権が台頭し、メディアや司法の独立が危ぶまれる状況が続いています。そんな中で、ルーマニアの国民が国民投票と選挙を通じて「ノー」を突きつけ、司法が最高権力者に対して断固たる判断を下したことは、民主主義の後退に歯止めをかけようとする、極めて重要な動きでしょう。事実、隣国のスロバキアでは、反汚職を掲げる大統領が当選するなど、民主主義を守ろうとする「希望の動き」が生まれており、ルーマニアでのこの出来事が、他の東欧諸国の市民を勇気づける歴史的な波紋**を広げていくことを期待しています。