2019年5月31日、日本の電力小売市場に大きな変革をもたらすニュースが飛び込んできました。公正取引委員会と経済産業省が連携し、長らく市場の優位性を保ってきた大手電力会社による「安定的な電源の囲い込み」に、ついに規制のメスを入れる方針を固めたのです。これは、消費者がもっと自由に、そして安価に電気を選べる未来を実現するための、極めて重要な一歩となるでしょう。
現在、電力の小売市場を見ると、大型水力発電所や原子力発電所といった、発電コストが比較的低く、安定供給が可能な電源を多く保有する大手電力が、新電力(特定規模電気事業者とも呼ばれます。2016年の電力小売りの全面自由化以降、新規参入した電力会社のことです)に対して、圧倒的な優位性を誇っている状況にあります。この構造が、新電力のシェア拡大を難しくしてきた大きな要因だと指摘されてきました。
政府が目指すのは、この不公平な競争環境を是正し、大手電力と新電力との間で、健全な価格競争を促すことです。消費者は2016年の電力小売りの全面自由化によって、電気を買う会社を自由に選べるようになりましたが、その選択肢が価格面や安定性の面で真に競争力を持つためには、新電力が安定した電源を確保できることが不可欠となります。
この実現に向けた具体的な施策として、経済産業省と公正取引委員会は、2019年5月30日に改定された「適正な電力取引についての指針」の中で、大手電力に対してある要求を突きつけました。それは、保有する発電電力の一部を、新電力会社に提供するための市場へ投入することです。この新しい市場は2019年7月に新設される予定となっております。
特に重要なのは、経済産業省が定めた量を下回らない電力をこの市場に投入するよう、大手電力に強く求めた点でしょう。この要求に違反する行為は、独占禁止法上、問題となる可能性があると明記されています。これは、大手電力による不当な競争制限行為、つまり市場における不公平な取引を厳しく取り締まるという、政府の強い意志の表れと言えるのではないでしょうか。
SNS上では、この規制の動きに対して「これでようやく新電力が戦えるようになる」「電気代が安くなることに期待したい」「大手電力の寡占状態が是正されるのは良いことだ」といった、公平な市場競争への期待を込めた肯定的な意見が多く見受けられます。一方で、「供給の安定性は本当に大丈夫なのか」といった、懸念の声も一部で出ています。
しかし、私は今回の公正取引委員会と経済産業省による規制強化は、消費者利益と市場の活性化という二つの面から、非常に妥当な判断だと考えます。電力自由化の最大の目的は、企業間の競争を通じて、消費者により良いサービスとより安い価格を提供することにあります。この指針改定は、その目的に近づくための強力な推進力となるはずです。
水力や原子力のようなベースロード電源を持たない新電力が、大手電力と同等に競争できる土俵が整備されることは、イノベーションを生み出し、日本のエネルギー供給全体をより強靭なものにしていくことにつながるでしょう。2019年7月の新市場開設を前に、電力市場の動向から目が離せません。