2019年5月31日、自動車業界に衝撃が走る巨大再編計画をめぐり、提携関係にある日産自動車と仏ルノーのトップが、それぞれの立場から見解を表明しました。ルノーのジャンドミニク・スナール会長は、前日の5月30日に日本経済新聞の取材に応じ、欧米のフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)との経営統合交渉に関して、日産に対し非常にオープンな姿勢を示しています。会長は、同月29日に開催されたルノー、日産自動車、三菱自動車の3社連合トップ会談でFCAとの統合案について説明したことを明かし、「もし日産がFCAとルノーの統合に参加を希望するならば、我々はいつでも門戸を開いている」と語りました。
この発言は、ルノーがFCAとの統合を通じて世界的な巨大自動車グループの構築を目指す中で、長年のパートナーである日産の参加を強く意識していることを示唆しています。また、ルノーが日産に提案していたとされる経営統合案については、「撤回や提案といった話ではなく、私一人が決めることではなく、取締役会で協議し判断するべき事柄だ」と述べるに留め、取締役会での決定に委ねる意向を表明されました。さらに、日産が6月の定時株主総会に提案する新しい取締役の体制案に対しても、「反対はしない」として、日産の経営体制刷新に理解を示す姿勢を見せられました。
一方、日産の西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)も5月30日の午後に日本経済新聞の取材に応じ、ルノーとFCAの経営統合計画について「現時点では影響を慎重に見極めたい」という考えを明らかにされました。西川社長は、「日産とルノーがこれまで締結してきた契約や、両社が共通で保有している資産が今後どのように引き継がれるのかを詳細に検討する必要がある」と強調し、すぐに結論を出すのではなく、まずは状況の精査を優先する姿勢です。この「慎重な対応」という表現からは、巨大な提携枠組みの変化に対する日産の戸惑いや警戒感が垣間見られます。
西川社長はまた、現在の3社連合(日産、ルノー、三菱自動車)の枠組みだけでも「オペレーション(事業運営)は拡大しており、既に既存の体制を見直す必要性に迫られている」と指摘されました。その上で、「もしFCAが加わるとなると、さらに運営規模が格段に大きくなり、その複雑さも増してしまう」と懸念を表明されています。このことから、ルノーと日産の間には、今後の巨大アライアンスのあり方や、そのガバナンス(企業統治)を巡って、意見の隔たりが存在していることが浮き彫りになりました。日産がこの巨大統合案にどの程度協力するのか、その判断には相当の時間を要すると見られています。
巨大再編の裏側!日産とルノーの根深い溝
スナール会長の「我々はオープン」という言葉は、非常に前向きで魅力的ですが、日産側の反応は極めて冷静です。この背景には、アライアンスと呼ばれる企業間の協力関係において、提携する各企業の独立性を保ちつつ共通の利益を追求するという、非常に繊細なバランスが存在します。特にルノーと日産の間では、資本関係のあり方や、どちらが主導権を握るかという問題が長らくくすぶってきました。FCAという新たな巨大勢力の参入は、単に規模が大きくなるだけでなく、この複雑なガバナンス(企業統治)の問題をさらに複雑化させる要因となるでしょう。日産が「慎重に対応」するのは、自社の利益と独立性を守るための当然の行動であり、性急な判断は避けるべきでしょう。
この一連の報道に対するSNSでの反響を見ると、「日産は安易に統合に乗るべきではない」「まずは足元の経営再建に注力すべき」といった、日産の独立性を尊重すべきだという意見が多く見受けられます。また、「FCAが入ることで、技術やマーケットの補完関係が生まれる可能性もある」といった、統合のメリットに期待する声も一部にはあります。しかし、日産が重視するのは、規模の拡大よりも、これまで築いてきたルノーとの技術的な連携や資産をどう守り、今後の競争を勝ち抜くための事業運営の効率性をいかに確保するかという点に尽きるでしょう。自動車産業は「CASE」(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ばれる新しい技術革新の波に晒されており、ただ規模を大きくするだけでは生き残れません。重要なのは、迅速かつ柔軟な意思決定ができる体制を維持することだと私は考えます。