技術の粋を結集!パラリンピック選手の跳躍を支える名取製作所の「スポーツアダプター」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

2016年リオデジャネイロ・パラリンピックの興奮は、今も鮮明に記憶されていることでしょう。特に男子走り幅跳びの山本篤選手が6メートル62の記録で銀メダルを獲得した瞬間は、多くの人々の胸を打ちました。この歴史的な跳躍を陰で支えていたのが、埼玉県上尾市に拠点を置く名取製作所です。同社の名取秀幸社長は、テレビでその快挙を見届けた際、思わずガッツポーズが出たといいます。なぜなら、山本選手の義足には、同社が誇る技術の結晶が組み込まれていたからです。

名取製作所が手掛けたのは、義足の「板バネ」と「膝関節」をつなぐ、非常に重要なパーツである「スポーツアダプター」という部品です。板バネとは、パラリンピックの陸上競技などで使用される特殊な義足のことで、その名の通り、バネのようにしなって力を生み出す役割を果たします。この板バネを、選手の走り方や競技の特性に合わせて最適な角度に調整するために、スポーツアダプターが不可欠となるのです。跳躍競技において、軽さと同時に極めて高い強度が求められるこの部品は、まさに技術の挑戦状ともいえるものでした。

この難題をクリアするため、同社は産業技術総合研究所と連携し、高い加工技術を持つ「チタン合金」を素材に採用しました。チタン合金は、非常に強度が高く、それでいて軽量という、まさにスポーツアダプターに理想的な性質を持っていますが、加工が非常に難しいことでも知られています。しかし、名取製作所は、硬くて延びにくい金属素材を丁寧に、そして正確に「プレス加工」する技術に定評があり、この技術力が功を奏したのです。プレス加工とは、金型に強い圧力をかけ、金属を押し曲げたり、打ち抜いたりして成形する技術のことで、同社は自動車などのワイパー部品で国内トップシェアを誇るなど、その技術力には確固たる自信を持っています。

従業員およそ50名という少数精鋭ながら、設計から加工、そして品質管理までを一貫して自社で担う生産体制も、同社の大きな強みといえるでしょう。スポーツ義足の製作への挑戦は、義肢装具士の方からの紹介で、自転車競技の藤田征樹選手と出会ったことから始まりました。藤田選手が2012年ロンドン・パラリンピックで銅メダルを獲得した際にも、同社のチタン加工技術が遺憾なく発揮されています。SNS上では、リオでの山本選手の活躍後、「日本のモノづくりがパラアスリートを支えている!」「小さな町工場の技術が世界を変える」といった感動と称賛の声が多く寄せられており、国内の高い金属加工技術が、世界的な舞台で脚光を浴びたことに、日本中が誇りを感じた瞬間でした。

もちろん、開発の道のりは決して平坦ではありません。選手一人ひとりのニーズに応えるための試行錯誤は、まさに連続です。それでも名取社長は、「選手との密なやり取りを通じて改良を重ねることこそが、付加価値の高い提案ができる企業へと成長するための意義深いプロセスだ」と、強い思いを語っています。企業の技術革新が、アスリートの夢と直結しているという事実は、私たちの心に深く響くものでしょう。2020年東京パラリンピックまで残すところ1年余りとなった今、名取製作所における開発のピッチはさらに上がっていることでしょう。

私自身の考えですが、名取製作所のような中小企業の持つ高い専門技術こそが、日本の国際競争力の源泉であると確信しています。特に、チタン合金のような難加工材を扱う技術は、他の追随を許さないレベルにあるといって差し支えありません。世界の視線が集中する2020年東京パラリンピックという大舞台で、「名取製」のスポーツアダプターが再び選手の飛躍を後押しし、その技術が世界に認められることは、日本のモノづくり全体の大きな飛躍の好機となるに違いありません。今後の開発の進展と、選手たちの活躍から、ますます目が離せない状況です。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*