2019年5月31日、日本の重機産業をリードする住友重機械工業株式会社が、製造業の未来を大きく左右する可能性を秘めた新システムを発表しました。それは、プラスチック部品製造の要である「射出成形機」の品質管理に特化した、生産品質管理システム「i-Connect(アイコネクト)」の国内販売開始です。この動きは、まさに製造現場におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させる、重要な一歩となるでしょう。
射出成形とは、熱で溶かしたプラスチック材料を金型に高圧で流し込み、冷却して目的の形状に成形する技術です。皆さんの身の回りにある多くのプラスチック製品—例えば、家電製品の筐体や自動車の部品など—は、この技術によって生み出されています。この繊細なプロセスを、インターネットの力で進化させるのが、今回の「i-Connect」なのです。専門用語である「IoT」とは、”Internet of Things”の略で、「モノのインターネット」を意味します。工場内の射出成形機や関連するすべての機器をネットワークで結びつけ、その稼働状況やデータをリアルタイムで収集・解析することを可能にする、画期的なサービスが提供されることになりました。
この「i-Connect」は、同社の射出成形機にオプションとして特別なセンサーを取り付け、サービスを利用する形式です。気になる販売価格は、標準仕様で1台あたり190万円を超える見込みとなっており、初期投資が必要なものの、その生産性向上効果を考えれば、製造業にとって非常に魅力的な提案と言えるのではないでしょうか。日本での発売を皮切りに、今後はアジアや北米といった、世界のものづくりを支える主要地域での展開も計画されているというから、その期待の大きさが窺い知れます。
システムの最大の特徴は、現場で何が起きているかを「可視化」する能力にあります。射出成形機本体だけでなく、材料の温度を調整する温調機や乾燥機などの周辺装置にもセンサーを装着し、稼働停止やアラームの発生状況、さらには微妙な成形条件といった詳細なデータを収集するのです。そして、もし成形された製品に不具合が発生した場合、これらの大量のデータから「なぜ問題が起きたのか」という原因を迅速に解析することが可能になります。これにより、生産効率の向上に直結する、素早い問題解決と再発防止の体制を構築できるというわけです。
さらに、このシステムは、場所を選ばない新しい働き方を提案しています。スマートフォンやタブレット端末といった、ブラウザ機能が搭載されたデバイスがあれば、生産現場の様子を常時、遠隔から把握できます。現場に足を運ばなくても、経営者や品質管理担当者がリアルタイムで状況を確認し、即座に意思決定を下せるようになるため、生産管理のあり方を根本から変えるポテンシャルを秘めていると言えるでしょう。この革新的な技術の登場は、SNS上でも、「ついに来たか」「製造業の未来を感じる」といった、ものづくりに関わるユーザーを中心に、大きな反響を呼んでいます。
この「i-Connect」は、住友重機械グループが共通で使用するプラットフォームを基盤としています。これは、単に射出成形機のためだけのシステムで終わらせるつもりがないという、同社の強い意思の表れにほかなりません。今後、射出成形機以外の事業分野においても、このデータ収集や故障診断のサービスを展開し、グループ全体で「つながる工場」の実現を目指していく考えです。私見ですが、この動きは、日本の製造業が、従来の「経験と勘」に依存した生産体制から脱却し、データドリブンな意思決定を行う、真の意味でスマートな工場へと進化するための、大きな推進力になると確信しています。製造現場のDXは、もう始まっている、そう断言できるでしょう。