【インバウンド需要】わずか5000円以下で泊まれる!福岡発「mizuka」が仕掛ける“ホテル業界のファストファッション”戦略と東京進出の勝算

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ホテル業界に新風を吹き込む、福岡発のスタートアップ企業Hosty(ホスティ)の勢いが止まりません。同社は2019年5月31日、福岡市の繁華街である中洲に新たなホテルを開業し、その勢いをさらに加速させています。Hostyが展開するのは、マンションやビルの一室を改装して客室とする、「コンパクトホテル」という革新的なスタイルです。これは、従来の大型ホテルとは一線を画す、小規模かつ機動性の高い宿泊施設を意味します。

今回、中洲にオープンした新ホテルは、ほぼ一棟を借り上げて客室数は65室を確保しています。特筆すべきはその価格設定で、なんと1泊3,500円から5,000円という非常に手頃な料金を実現している点です。これは、高騰する宿泊費に頭を悩ませる訪日外国人(インバウンド)旅行者にとって、大きな魅力となるでしょう。Hostyは、この割安な料金設定を武器に、急増するインバウンド需要の取り込みを図っているのです。

Hostyが展開するコンパクトホテルは「mizuka(ミズカ)」というブランド名で親しまれています。このビジネスモデルの巧妙さは、複数の客室の受付業務を天神と中洲にある単一のフロントに集約し、チェックインとオンライン決済を行う点にあります。これにより、各客室にスタッフを配置する必要がなくなり、大幅な運営費用の削減を可能にしているのです。同社の山口博生社長が語る「ホテル業界の『ファストファッション』を目指す」という言葉は、まさにこの徹底的なコスト効率化と、手軽さを追求する戦略を端的に表していると言えるでしょう。

私が考えるに、今後のホテル市場は、最高級の「ラグジュアリー」体験を提供する高価格帯と、利便性とコストパフォーマンスを追求する低価格帯に、明確に二極化する流れは必然です。Hostyの「mizuka」は、まさにこの低価格帯市場において、「必要な機能をミニマムに、そして最大限の効率で」提供するという、時代が求める答えを提示しているのではないでしょうか。

2017年に福岡市でコンパクトホテル事業をスタートさせて以来、Hostyの成長は目覚ましいものがあります。2018年5月時点ではわずか5部屋だった客室数は、2019年5月末までに123部屋へと急拡大を遂げました。福岡市では土地や建物の価格が高騰していますが、Hostyは大規模用地の確保といった初期投資(事業を始めるにあたって最初に必要となる資金や資産への支出)を省くことで、この課題をクリアしています。その代わりに、駅の近くなど利便性の高い場所にある既存のビルの一室などを改装し、ホテルとして再生させる戦略が功を奏しているのです。

Hostyの革新的な取り組みは、SNSでも大きな反響を呼んでいます。「この価格で博多の中心部に泊まれるのはすごい」「立地が良いから旅行がもっと身近になる」といった、その立地の良さと価格の手頃さを評価する声が多く見受けられます。また、「空き部屋の有効活用として画期的だ」と、遊休資産(使われずに放置されている土地や建物などの資産)の活用という側面にも注目が集まっています。

KDDIとの強力な提携で加速する首都圏進出

そして今、Hostyは次の大きな一歩として、首都圏への進出を目指しています。2020年の東京五輪という世界的なイベントを目前に控え、この動きはまさに時宜を得たものと言えるでしょう。同社はこのたび、KDDI(au)などから総額3億3,000万円の出資を受け、さらに同年4月には業務提携も締結しました。この強力なパートナーシップのもと、Hostyは2019年中の東京進出を目標に掲げ、2020年5月までには全国で750室の展開を目指しており、そのうち300室を東京で展開する計画を打ち出しています。

通信大手のKDDIは、Hostyの首都圏での事業展開を全面的に支援する体制を整えています。特に注目すべきは、Hostyが今後目指す、各部屋に設置されたタブレット端末でのチェックインシステム導入への技術的な支援です。KDDIの持つ通信技術が、この非接触型で効率的な運営をバックアップするのです。これにより、宿泊者はよりスムーズに、煩わしい手続きなしに客室へアクセスできるようになるでしょう。

Hostyのコンパクトホテルは、場所を確保してから最短2カ月という驚異的なスピードで開業できるという、その機動性の高さが最大の強みです。もし採算が合わなくなった場合でも、撤退が容易である点も、このビジネスモデルの柔軟性を示しています。さらにKDDIは、位置情報などのビッグデータを活用し、観光客が集まる場所を詳細に分析することが可能です。KDDIの中馬和彦ビジネスインキュベーション推進部長が語るように、「インバウンドに人気が出た観光地の近くに、タイムリーに開業できる」という、データに基づいた戦略的な出店が可能になるのです。

私見を述べさせていただきますと、このKDDIとの提携は、単なる資金提供以上の意味を持ちます。Hostyの機動性とKDDIのデータ分析能力、そして通信技術が融合することで、日本のホテル業界のあり方を根本から変える可能性を秘めていると感じています。これは、不動産や人件費の高騰という構造的な課題を抱える日本の宿泊業界にとって、一つの解決策となり得るでしょう。Hostyの「mizuka」が、手軽さとスマートさを兼ね備えた宿泊体験を、今後どのように全国へ、そして世界へと広げていくのか、目が離せない状況です。

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