外交の第一線で活躍された元駐イラン大使が、部下の女性に対する強制わいせつの疑いで、2019年5月30日に警視庁麹町(こうじまち)署から書類送検されるという衝撃的なニュースが飛び込んできました。この一件は、外交官としてのキャリアを築いた人物が、その職務の場において不適切な行為に及んだのではないかという、極めて重い問題を提起しています。書類送検されたのは、駒野欽一(こまの・きんいち)元大使(72)で、2012年当時、イランの首都テヘランにある大使公邸内で事件が起きたとされています。
具体的にどのような容疑なのかというと、2012年10月14日、大使公邸という公的な場所でありながら、部下の女性を抱き寄せたり、キスをしたりするなど、性的な満足や嫌悪感を与える目的で行われる「わいせつな行為」に及んだ疑いが持たれているのです。この「強制わいせつ」という容疑は、暴行や脅迫を用いて、相手の自由な意思に反してわいせつな行為をすることを意味し、刑法に定められた重大な犯罪行為に該当します。外交の最前線という、信頼と品格が求められる場所での出来事とあって、その衝撃は計り知れないでしょう。
被害を訴えているのは、外務省に入省し、2012年6月に在イラン日本大使館に着任したばかりの女性職員です。事件が起こったとされるのは、駒野元大使がイランから離任する前日に公邸で開かれた夕食会の後のことだといいます。職場のトップという、逆らいがたい立場にある人物から受けた被害のショックや苦痛は、想像に難くありません。被害女性は、この出来事から長い時間を経た2019年1月になって、外務省に対し、被害の事実を公表すること、そして元大使に対してしかるべき処分を下すよう強く要求しました。
しかし、外務省側からは、女性の要求に応じるという明確な回答が得られなかったため、ついに女性は、2019年3月に警視庁麹町署に告訴状を提出するに至りました。これは、組織内での解決が図れなかったことで、法の裁きに委ねるという、被害者にとって苦渋の決断だったに違いありません。この事件がSNSで報じられると、「#MeToo」(ミートゥー)運動にも通じる、組織内の権力関係を利用したハラスメントや性的な加害行為に対する憤りの声が非常に多く見受けられました。特に、外交官という国家の顔ともいえる立場の人物が起こしたとされる事件だけに、「日本の品格に関わる」「外務省の隠蔽体質ではないか」といった厳しい意見が、SNS上で大きな反響を呼んでいます。
私自身の意見としては、今回の事件は、組織における上下関係や権力の濫用が、いかに個人の尊厳を踏みにじる行為に繋がりかねないかを痛烈に示していると感じています。特に外交の場は、国内外の信頼の上に成り立っているものですから、そこで働く職員の安全と人権が最優先されるべきです。外務省は、単なる組織防衛に走るのではなく、被害者の訴えに真摯に向き合い、透明性のある対応を示す必要があったのではないでしょうか。この書類送検を機に、日本の官僚機構全体が、ハラスメントに対する意識を根本から見直し、より健全な職場環境を構築することが強く望まれます。