育児用品のトップランナーとして知られるピジョンが、2019年07月04日に発表した最新の決算予想を読み解くと、同社の「攻め」と「守り」の現在地が鮮明に見えてきます。現在、主力である中国市場では哺乳瓶などの需要が極めて堅調に推移しており、同社のブランド力は衰えを知りません。しかし、国内に目を向けると、規制強化の影響でかつての勢いがあった訪日外国人による「インバウンド需要」には陰りが見え始めているようです。
前年の同時期に発売された新商品が大ヒットを記録した反動もあり、売上高全体としては横ばいの数字を維持する形となりました。さらに注目すべきは、今回「統合基幹業務システム(ERP)」という巨大なデジタル投資を断行した点です。ERPとは、企業の会計や販売、物流といった重要な情報を一元管理する司令塔のようなITシステムを指します。この新たなシステムの稼働に伴い、一時的な償却費用や運用コストが増大し、表面上の利益を押し下げる要因となっています。
SNS上では、この減益のニュースに対し「ピジョンほどの企業でもIT投資の壁は高いのか」と驚く声がある一方で、「将来の効率化を考えれば避けて通れない投資だ」と、同社の長期的な成長戦略を支持するポジティブな反応も目立っています。短期的にはコストが重くのしかかる局面ですが、これはグローバル企業として更なる飛躍を遂げるための、いわば「成長痛」のようなものと言えるでしょう。私個人としても、目先の数字に惑わされない強気な姿勢は評価すべきだと考えています。
世界を股にかける実質増収増益のシナリオ
表面的な減益に目が行きがちですが、中身を精査すると同社の力強い底力が見えてくるから不思議です。中国ではインターネット通販が爆発的に伸びており、東南アジアや米国といった地域でもベビー用品のニーズが着実に拡大しています。世界各地でシェアを広げることで、先述したシステム関連の莫大な費用をカバーする勢いを見せているのです。グローバル展開の加速こそが、現在のピジョンを支える最大のエンジンであることは間違いありません。
また、同社は今期から大きな経営判断として、決算期をこれまでの1月から12月へと変更しました。この変更によって計算期間にずれが生じるため単純比較は難しいのですが、12カ月の実質ベースで比較すれば「増収増益」を達成する見込みとなっています。現場の活気と世界市場でのブランド優位性を鑑みれば、この決算予想は非常に前向きなものとして受け止めるべきでしょう。これからのピジョンがどのような世界基準の育児文化を創造していくのか、期待が膨らみます。