【2019年】ドゥテルテ大統領が東京で中国を痛烈批判?南シナ海の「一触即発」危機と揺れるフィリピンの現状【アジアの未来】

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2019年05月31日、東京都内のホテルで開催された第25回国際交流会議「アジアの未来」(日本経済新聞社主催)において、フィリピンのドゥテルテ大統領が登壇し、会場の空気が一瞬にして張り詰めました。同氏は、中国とフィリピンなどが領有権を争う南シナ海情勢について、「一触即発の状態が長い間放置されている」と述べ、強い危機感を露わにしたのです。この発言は、単なる現状報告にとどまらず、アジア太平洋地域における安全保障の脆弱さを浮き彫りにするものでした。

ドゥテルテ大統領は講演の中で、「海全体を自分たちのものだと主張するのは正しいことなのか」と問いかけました。国名こそ明言しなかったものの、これは明らかに南シナ海での軍事拠点化を強引に進める中国に対する強烈な「当てこすり」であり、暗に批判した形となります。これまでの親中姿勢からの揺り戻しとも取れるこの発言に、各国のメディアや外交関係者たちが注目しています。

米中対立と「持たざる国」の悲哀

また、ドゥテルテ氏は世界情勢の変化についても言及しました。「世界のパワーバランスの中心地は西から東に移りつつあり、我々の地域が大国の競争の場となりつつある」と指摘。ここで言う「大国の競争」とは、主にアメリカと中国による覇権争いを指しています。中国の台頭により新たな国際秩序が生まれつつある中で、「混乱は避けられない」という見通しを示し、小国がその波に翻弄される懸念を表明しました。

さらに、激化する「米中貿易戦争」についても触れ、「不確実性と緊張を生み、世界経済を押し下げている。だれの利益にもならない争いになりつつある」と断じました。保護主義が強まる世界経済のトレンドに対して、強い懸念を示したのです。大国同士のエゴがぶつかり合う中で、フィリピンのような経済発展途上の国々がどのような立ち位置を取るべきか、その難しさが言葉の端々に滲み出ていました。

「戦争の余裕はない」現実路線とジレンマ

一方で、ドゥテルテ大統領特有の「現実主義(リアリズム)」も健在です。中国への不満を示しつつも、「我が国は小さく、爆撃されれば海軍は壊滅する。中国とだけでなく、どの国とも戦争をする余裕はない」と述べ、軍事的な衝突は絶対に回避する姿勢を強調しました。これは、4月に北京で習近平国家主席と会談した際、中国の領有権主張を退けた仲裁判決に言及しつつも、決定的な決裂を避けてきた彼の外交スタンスと合致しています。

ここで触れられた「仲裁判決」とは、アキノ前政権時代にフィリピンがオランダ・ハーグの仲裁裁判所に提訴し、2016年に「中国の主権主張には法的根拠がない」との判断が下されたものを指します。前政権はこの判決を盾に中国と激しく対立しましたが、ドゥテルテ氏は経済支援を引き出すためにこの問題を棚上げし、中国への接近を試みてきました。しかし、中国側が島や岩礁の埋め立てや軍事施設建設を止めないため、フィリピン国内や軍部での不満が高まっており、今回の発言はそのガス抜きという側面もあるでしょう。

SNSでの反響と編集部の視点

今回のドゥテルテ大統領の発言に対し、SNS上では様々な反応が見られます。「よくぞ言った!中国の横暴を許すべきではない」「日本のど真ん中で中国批判をするなんて、さすがドゥテルテだ」といった称賛の声が上がる一方で、「結局は中国マネーも欲しいし、アメリカの軍事力も頼りたいというコウモリ外交ではないか」「戦争はできないと公言するのは、足元を見られるのではないか」といった冷静な分析や批判的な意見も散見されました。

私自身、今回のドゥテルテ大統領の発言は、非常に巧みなバランス感覚の上に成り立っていると感じます。国内の対中強硬論に配慮しつつ、国際会議という晴れ舞台で「法の支配」を訴えることで、日米などの同盟国にもアピールする。しかし、中国との決定的な対立は避けるために「戦争はできない」と弱音も吐く。この硬軟織り交ぜた発言こそが、大国に挟まれたフィリピンという国の生存戦略なのでしょう。南シナ海問題は、単なる領土問題ではなく、アジアの未来を占う試金石であり、私たち日本人も決して無関心ではいられないのです。

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