2019年05月31日、安倍晋三首相を議長とする経済財政諮問会議が開かれ、今年の経済財政運営の基本指針、いわゆる「骨太の方針」の骨子が示されました。この中で特に注目すべきは、世界経済の減速懸念が高まった場合、G20(主要20カ国・地域)全体で協力して内需を下支えする必要性を示唆する文言が盛り込まれた点です。これは、来る2019年06月下旬に大阪で開催されるG20首脳会議を見据えた、議長国日本としての重要なメッセージとなるでしょう。
私たち国民にとって最も気がかりなのは、やはり2019年10月に予定されている消費税率の10%への引き上げではないでしょうか。今回の骨子を見る限り、政府は予定通り増税を実施する構えを崩していません。しかし、世界経済の雲行きが怪しくなる中で、政府は増税による悪影響を最小限に抑えるための布石を打ち始めています。SNS上でも「本当に増税して大丈夫なのか」「ポイント還元などの対策だけでは不安だ」といった、生活防衛に対する切実な声が多く上がっており、先行きの不透明感が拭えません。
過去のサミットとの比較から見る「増税」の行方
ここで思い出されるのが、2016年05月の伊勢志摩サミットでの出来事です。当時、安倍首相は「リーマン・ショック級の不況に陥るリスク」に言及し、その後に消費増税の延期と大規模な経済対策を打ち出しました。今回のG20大阪サミットを前に、今のところ首相は増税実施の姿勢を堅持しています。政府は増税による増収分を上回る2兆3000億円規模の対策を用意し、キャッシュレス決済時のポイント還元などで消費の落ち込みを防ごうとしていますが、これがどこまで効果を発揮するかは未知数です。
もし米中貿易摩擦がさらに激化し、世界経済が急速に冷え込むような事態になれば、政府はさらなる追加の経済対策を視野に入れることになるでしょう。骨子に盛り込まれた「G20各国が協調して内需を支えていく」というメッセージは、いざという時に機動的に財政出動を行うための準備とも読み取れます。つまり、状況次第では「増税対策」という名目で、さらなる大型の景気刺激策が打たれる可能性も否定できないのです。
GDP速報値が示す日本経済の「実力」と不安要素
内閣府が2019年05月20日に発表した2019年01月から03月期のGDP(国内総生産)速報値についても触れておく必要があります。実質ベースで年率2.1%増という数字は、マイナス成長を予測していた市場を驚かせました。しかし、この数字を額面通りに受け取るわけにはいきません。なぜなら、このプラス成長は「輸入が大幅に減少したこと」による計算上の結果だからです。GDPの計算式では、輸入の減少はプラス要因として扱われますが、それは決して経済が活性化していることを意味しません。
実際、内需の柱である個人消費や設備投資は減少に転じており、日本経済の足腰は弱まっていると言わざるを得ません。ネットニュースのコメント欄などでも、「景気が良い実感は全くない」「数字のトリックだ」といった冷静な分析や批判的な意見が散見されます。米中の対立激化に加え、日米貿易交渉における自動車分野への圧力など、外需頼みの日本経済にとって向かい風は強まる一方です。政府も6月のGDP改定値や7月の日銀短観などの指標を注視し、慎重な判断を迫られることになるでしょう。
デジタル社会への転換と「選挙」を見据えた戦略
今回の骨子では、経済対策以外にも「デジタル政府」の早期実現や、国境を越えたデータ流通の枠組み作りが掲げられました。特に製造業やサービス業ではデータの重要性が増しており、先進国間での共通ルール作りはビジネスチャンスを広げる可能性があります。また、雇用に関しては、希望する高齢者が70歳まで働ける制度改正や、就職氷河期世代への支援強化が打ち出されました。これらは夏の参議院選挙を意識し、幅広い層からの支持を得やすいテーマを選んだ印象を受けます。
私自身、メディアの編集者として今回の発表を見て感じたのは、政府が非常に難しい舵取りを迫られているという現実です。消費増税という国民負担を求めつつ、世界経済のリスクに備え、さらに選挙に向けたアピールも行わなければなりません。社会保障の抜本的な見直しなど、痛みを伴う議論が先送りされている点には懸念が残ります。世界経済の波が高まる中、私たち一人ひとりも、政府が打ち出す対策の本質を見極め、自衛策を講じていく必要があるのではないでしょうか。