【味の素の決断】「残業ゼロ」達成の先へ。外国人材×創造性で挑む、2019年流・真の働き方改革

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みなさん、こんにちは。インターネットメディア編集部です。2019年6月1日、働き方改革が叫ばれる現代日本において、非常に興味深いニュースが飛び込んできました。あの食品大手の味の素が、年間労働時間を1800時間に削減するという目標を、なんと予定より2年も前倒しで2018年度末にほぼ達成したのです。

しかし、ここで驚くべきは、西井孝明社長が下した次なる決断でした。通常であれば「さらなる時短」を目指すところですが、西井社長は2019年春の経営会議で「1日の所定労働時間を7時間に短縮する目標は取り下げる」と宣言したのです。一体なぜ、順調に進んでいた時短への歩みを止めたのでしょうか。

数値目標の達成と「創造性」のジレンマ

2015年度と比較して、従業員1人当たりの時間当たり売上高は15%も増加しました。午後7時には社内から人が消える風景が定着しつつあります。しかし、西井社長は「何か足りない」と感じていたようです。それは、数字を追うあまりに、本来必要な「創造的な仕事」や「将来の成長につながる種まき」まで削ぎ落としてしまっているのではないか、という懸念でした。

これにはSNS上でも、「確かに早く帰るだけが目的になってはいけない」「クリエイティブな時間は余裕から生まれるものだ」といった、共感の声が多く上がっています。単なる時短競争から、質の向上へとフェーズが移行した瞬間と言えるでしょう。

カギを握るのは「7割のノンジャパニーズ」

では、1800時間という限られた枠の中で、いかにして世界企業と戦い、生産性を上げていくのか。その答えの一つが「外国人材の活用」です。実は、世界の味の素グループで働く3万4千人のうち、日本人はわずか3割。残りの7割を占める海外の人材力を、日本国内の組織にも取り入れようという戦略です。

このグローバル戦略を牽引するのが、2014年7月にヘッドハンティングされた高倉千春グローバル人事部長です。元農林水産省の官僚であり、米国留学を経てMBA(経営学修士)を取得、外資系企業での経験も豊富な彼女は、生え抜き主義が強かった味の素に新しい風を吹き込んでいます。

ポーランドからペルーへ、国境を越えるラーメン戦略

高倉氏の手腕により、2019年初頭から海外法人の精鋭たちが東京本社に集結しています。例えば、ポーランド人の男性社員にはユニークなミッションが与えられました。それは「ポーランドでラーメンをどう売るか」という課題です。

彼は来日中、なんとラーメンが主力商品となっているペルーへ出張しました。地球の裏側での成功事例を肌で感じ、供給体制や販売手法を学び、それをポーランド市場へ応用する戦略を立てるためです。こうしたダイナミックな人材配置は、ドメスティックな視点だけでは決して生まれない発想でしょう。

編集部の視点:働き方改革の「第2章」が始まった

私自身、このニュースを見て強く感じるのは、味の素が働き方改革の「第2章」に突入したということです。時間を減らすだけの「守り」の改革から、多様な人材を混ぜ合わせ、新しい価値を生み出す「攻め」の改革への転換です。

食文化や商習慣は、国や地域によって千差万別です。高倉氏が語るように「日本人だけで国際競争には勝てない」というのは、グローバル市場における真理でしょう。異なるバックグラウンドを持つ人材が交わることで、これまでの社内常識が打破され、イノベーションが生まれる土壌が整いつつあると感じます。

現実は甘くない、だからこそ挑む価値がある

もちろん、手放しで喜べる状況ばかりではありません。味の素の2019年3月期の連結決算を見ると、売上高こそ1兆1274億円と微増ですが、純利益は296億円と前期比51%もの減益となっています。目標とする「世界食品企業トップ10」入りの目安となる事業利益1300億円に対し、実績は926億円と、道半ばです。

「早く帰れ、そして稼げ」。このシンプルかつ過酷な命題に対し、味の素がどう答えを出していくのか。外国人材との化学反応が、数字という結果にどう結びついていくのか。2019年、同社の挑戦は、日本の企業社会にとっても大きな試金石となるに違いありません。

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