体験型店舗で「一石三鳥」!丸井グループが描く、金融と融合した新時代の小売戦略とは?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

🛍️百貨店の常識を打ち破る、丸井グループの革新的な店舗戦略が、今、注目を集めています。かつては商品を仕入れて販売する「百貨店型」のビジネスモデルを展開していましたが、現在はテナントからの家賃収入を主軸とする「ショッピングセンター(SC)型」へと大きく舵を切りました。そして、その進化は止まりません。近年では、商品そのものを売るのではなく、顧客に特別な「体験」を提供する「モノを売らない店」を段階的に増やしており、消費の変化への対応と、祖業である金融事業の成長を巧みに組み合わせた、全く新しい収益モデルを構築しているのです。

この戦略転換は、株式市場でも高く評価されており、その具体例として東京・新宿にある新宿マルイアネックス3階のスペースが挙げられます。2018年11月にオープンした、電子ペン大手のワコムの直営店が、まさに丸井グループの新戦略を象徴していると言えるでしょう。このユニークな店舗では、ワコムの電子ペンを実際に試すことはできますが、その場で商品を購入することはできません。購入を希望するお客様は、インターネット経由か、他の小売店を利用する仕組みになっています。

つまり、ワコムが丸井グループから借りているのは、売り場ではなく、あくまで「消費者との接点」なのです。さらに驚くべきことに、この店舗の運営自体は丸井グループが受託しており、現場で働くのは丸井グループの従業員です。この一見奇妙な店舗形態の裏側には、「脱・百貨店型」と、もう一つの柱である金融事業の強化という、二つの重要な戦略が融合しています。

丸井グループの上席執行役員である青木正久氏は、ワコム店舗の運営受託について、「来店客に(自社の)エポスカードへの入会を勧めやすい」と、その狙いを明かしています。丸井グループは、クレジットカードなどのフィンテック事業(金融サービスとIT技術を組み合わせた事業)を経営の柱と位置付けており、実店舗をカード会員を獲得するための重要な拠点と考えているのです。これにより、賃料収入を得るだけでなく、店舗の運営も請け負い、さらにカード会員の増加も実現するという、「一石三鳥」のビジネスモデルが成立します。

こうした新形態は、2015年3月期から進めてきた、商品を仕入れて販売する百貨店型から、定期的な賃貸借契約を結んで家賃を得るSC型への転換の成果です。通常のSC型では、店舗の売上高に連動した歩合賃料を重視するケースが多い中、丸井グループは固定賃料の割合を高く設定していると見られます。この固定賃料を重視する契約形態のおかげで、ワコムのように、実店舗での販売よりも、商品やブランドの認知度向上や浸透を重視するテナントを誘致することが可能になりました。

多様な体験型テナントによって集客力を高め、その来店客をカード会員の獲得へと繋げるのが、丸井グループの戦略の肝です。この金融事業の強化により、2020年3月期には、フィンテック事業の営業利益は390億円に達し、小売事業の約3倍の規模に膨らむ見通しです。この結果、連結純利益は前期比9%増の275億円となり、1991年度(当時は1月期)以来の高水準が予測されています。

インターネットを利用したEC(電子商取引)の普及や、「コト消費」(モノの所有ではなく、旅行や体験といったサービスにお金を払う消費行動)の隆盛により、「お店でモノを買う」という従来の消費行動は、将来的な先細りが懸念されています。もちろん、丸井グループの店舗でも物販は重要な柱の一つとして残りますが、カードビジネスというもう一つの柱が持つ柔軟性は、一等地にある店舗のコンテンツを自由に入れ替えるという大きな強みをもたらしています。

元々、家具の月賦(げっぷ:分割払い)商からスタートした丸井グループは、「もともと金融事業が主役」(関係者)と言われる背景があり、他の小売企業よりも「金融で収益を上げる」ことへの抵抗感が少ないのでしょう。この独自のビジネスモデルに対し、市場からは「ほかの小売業には見られないビジネスモデルを構築している」(国内証券アナリスト)と評価が高く、時価総額(株式市場における企業の価値)は約5000億円と、百貨店最大手の三越伊勢丹ホールディングスの約3500億円を上回っています。

📚編集者の視点:小売の未来を担う「目利き力」

この丸井グループの革新的な戦略は、小売業界の未来を指し示すものだと、私は強く感じています。モノが溢れ、いつでもどこでも買える時代において、店舗が果たすべき役割は、「販売の場」から「体験と接点の場」へと確実に変化しています。丸井グループは、この変化を敏感に察知し、自社の強みである金融事業と掛け合わせることで、誰も真似できない独自の収益構造を作り上げています。これは、従来の小売の枠を超えた、ビジネスモデルの再定義と言えるでしょう。

この戦略の成否を分けるカギとなるのは、佐藤俊簡記者も指摘されているように、集客力を左右するテナントの「魅力」でしょう。小売の常識にとらわれない、顧客を本当に惹きつけるテナントを選び抜く「目利き力」を磨き続けることが、丸井グループの持続的な成長に向けた、新たな挑戦課題になるはずです。SNSなどでも、「マルイがまた面白い店を入れてきた」といった、テナントの話題性が拡散されており、この目利き力に対する注目度の高さが伺えます。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*