米中貿易摩擦から1年!激変する世界のサプライチェーンと日本企業が直面する新常識とは

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世界を震撼させている米中貿易戦争が、激しい応酬を繰り返しながら2年目という未知の領域に突入しました。2019年07月06日現在、両国が第3弾まで積み上げた上乗せ関税の壁は、もはや一時的な障害ではなく、世界の貿易地図を根本から塗り替える巨大な地殻変動を引き起こしています。かつての自由な商流は影を潜め、企業は生き残りをかけた供給網(サプライチェーン)の再構築を余儀なくされているのです。

SNS上では「身近な製品の値上げが怖い」「もはや米中だけの問題ではない」といった悲鳴に近い声が上がっています。供給網とは、原材料の調達から製造、販売に至るまでの一連のバリューチェーンを指しますが、この複雑に絡み合った糸が今、強制的に引きちぎられようとしています。私たちは今、特定の国に依存することのリスクがかつてないほど高まった、歴史的な転換点に立ち会っていると言えるでしょう。

ブラジルが「中国の台所」に?塗り替わる資源・農産物の勢力図

対立の余波は意外な場所に波及しています。中国が米国産の大豆などに報復関税を課したことで、ブラジルが代替の供給源として急浮上しました。2018年07月から2019年04月までのデータによれば、ブラジルの対中輸出は前年同期比で49%も急増しています。この勢いは凄まじく、ブラジルではギリシャの国土面積に匹敵する広大な農地拡大が予測されるほどですが、一方で他国への供給が滞るという新たな歪みも生んでいます。

エネルギー分野でも同様の地殻変動が起きています。米国産の液化天然ガス(LNG)が中国市場から締め出される一方で、サウジアラビアやロシアがそのシェアを奪う形で対中輸出を大幅に伸ばしました。個人的な見解を述べれば、この動きは単なる貿易量の変化に留まりません。一度構築された物流インフラや契約関係は容易には戻らず、米国が自ら築き上げた「資源大国」としての優位性を自ら手放しているようにも映ります。

「脱・中国」が加速する製造業とベトナムの光と影

製造業の現場でも、中国を回避する「チャイナ・プラス・ワン」の動きが加速しています。特に対米輸出の拠点として注目を浴びているのがベトナムです。2018年07月から2019年04月にかけて、ベトナムの対米輸出は2割も拡大しました。米国のIT大手アップルの製品を担う中国企業までもが、ベトナム北部に巨額を投じて新工場を建設するなど、生産拠点の移転はもはや止めることのできない潮流となっています。

しかし、この急激な変化には「迂回輸出」という危うい側面も潜んでいます。これは、関税を免れるために中国製品を一度他国へ運び、産地を偽装して米国へ送る行為を指します。トランプ米大統領は、ベトナムに対しても厳しい制裁を示唆しており、貿易網の混乱が新たな火種を生む悪循環に陥っています。企業の皆様には、単なる拠点の移動だけでなく、原産地証明の厳格化といった法務面のリスク管理が、これまで以上に求められるでしょう。

第4弾の脅威と2020年米大統領選への思惑

2019年06月29日の首脳会談では、ひとまず関税第4弾の発動が見送られ、協議の再開が合意されました。しかし、市場に楽観視するムードはありません。トランプ大統領は「米国に有利な取引でなければならない」と主張し続けており、中国側の「対等の精神」とは真っ向から対立しています。2020年の米大統領選を控え、支持基盤である農業州や工業州の意向を反映した強硬策が、いつ再燃してもおかしくない状況です。

編集者の視点から見れば、この貿易摩擦は単なる経済的な駆け引きを超え、ハイテク分野における覇権争いへと変質しています。中間財と呼ばれる、製品の組み立てに必要な部品一つひとつにまで関税がかかる現状では、もはや「どこで作るか」が企業の利益率を決定づける最大の変数となりました。今後も続くであろう不透明な情勢に対し、日本企業もまた、特定の国に縛られない柔軟で強靭な戦略を構築することが不可欠となるはずです。

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