日々の移動を劇的に変える「パーソナルモビリティー」が、今まさに大きな注目を集めています。2019年07月03日、東京・霞が関の経済産業省で小型モビリティーの展示・試乗会が開催され、名だたる企業が最新の電動車両を公開しました。トヨタ自動車は、歩行速度に近い時速2キロメートルから10キロメートルで走行する1人乗り車両を披露しており、その操作性の高さが話題を呼んでいます。
一方で、2019年05月からシェア自転車事業に参入したパナソニックは、自慢の電動アシスト自転車を出展しました。昨今、高齢ドライバーによる事故や免許返納が社会問題化する中で、低速で安全な小型モビリティーは「車に代わる新しい選択肢」として期待されています。SNS上でも「これなら免許を返しても買い物に行ける」「デザインが格好いい」といった、前向きな反応が数多く寄せられている状況です。
この動きの背景には、世界的に加速する「移動革命」の存在が欠かせません。特に注目されているのが「MaaS(マース)」という概念です。これは「Mobility as a Service」の略称で、バスや鉄道、タクシーなど複数の交通手段をITで統合し、一括で予約や決済を行うサービスを指します。目的地までの「最後の一歩」を補う手段として、電動キックボードなどが重要な役割を果たすと考えられています。
新興企業の動きも活発化しており、ウィンド・モビリティー・ジャパンは2019年03月末からさいたま市で、2019年07月からは千葉市で電動キックボードの実証実験をスタートさせました。しかし、現行の法律ではこれらは「原動機付き自転車」と同等の扱いです。そのため車道の走行やヘルメットの着用、さらには免許証の携帯が義務付けられており、手軽に利用するにはまだハードルが高いのが現状でしょう。
利便性とルールの共存に向けた新たな挑戦
こうした規制の壁を乗り越えるべく、2019年05月末には「マイクロモビリティ推進協議会」が設立されました。業界団体が中心となり、専用ルールの制定を国に働きかけるとともに、年内の自主規制作成を目指しています。先行して普及した欧米では、ルールの未整備による事故や放置車両が問題となりました。日本においては、海外の失敗を教訓とした慎重かつ迅速な制度設計が求められているのです。
編集者の視点から言えば、この新しい移動手段は単なる便利な道具以上の価値を持っています。歩くことが困難になった方々が再び自由に外出できる喜びは、QOL(生活の質)の向上に直結するはずです。過剰な規制で産業の芽を摘むことなく、安全性を担保しながらいかに社会に溶け込ませるか。2019年の今、私たちは日本の移動の歴史が塗り替わる歴史的な転換点に立ち会っていると言えます。