2019年6月1日付けで報じられたニュースによると、日本の景気動向を敏感に反映する**「日経商品指数42種」**が、2019年5月末時点で前年水準を6カ月連続で下回るという事態になりました。この指数は、景気変動の影響を受けやすい資材や燃料などの企業間取引価格をもとに算出されており、この連続下落は日本経済、ひいては世界経済の先行きに懸念をもたらす結果と言えるでしょう。特に、中国経済の減速が強く影響し、非鉄金属の価格が急激に下落していることに加え、それまで市況を支える要素となっていた原油価格が反落に転じたことが、今回の下げ幅拡大の決定的な要因と考えられます。
原油価格が下落に転じた背景には、米中貿易摩擦の激化があります。米国との対立が深まることで、世界最大の需要国の一つである中国の景気がさらに冷え込み、結果として原油の需要が減少するのではないかという市場の観測が強まったためです。アジア市場の指標となるドバイ原油は、5月中旬には中東情勢の緊迫化を背景に1バレル72ドル台まで上昇していたにもかかわらず、月末の31日時点では64ドル前後まで下落しました。この原油価格の反落は、化学製品など多岐にわたる分野の企業間における価格交渉にも、先行きの不透明感をもたらしていると見て間違いありません。
具体的に指数を見てみますと、日経商品指数42種の2019年5月末値は182.033(1970年=100)となり、前年同月比で2.5%の下落を記録しました。この下落率は、4月の1.6%からさらに拡大しており、市況の弱さが加速している様子が窺えます。特に下げ足を速めているのが非鉄金属で、前年同月比12.3%の大幅な下落となりました。銅やアルミニウムといった非鉄金属は、建設や自動車、電気製品など幅広い産業で使われるため、価格の変動は景気の先行指標として注目されますが、これほどの下げ幅は世界的な製造業の減速を色濃く反映していると言えるでしょう。
原油安の動きは、ガソリンや灯油といった石油製品の市況にも直接的な影響を与えています。例えば、ガソリンのスポット(業者間転売)価格は京浜地区の陸上物で1キロリットルあたり11万7250円前後と、前年同期比で4%の値下がりです。また、暖房用需要期を脱した灯油は一段と値下がりし、海上物で1キロリットルあたり5万9250円前後と、前年同期より11%も安い水準で推移している状況です。国内の製油所が定期修理で操業を停止しているにもかかわらず、需給の逼迫感が見られないという事実は、需要の弱さを裏付けていると言えるでしょう。
原油価格の動向が左右する化学・合成樹脂の値上げ交渉
原油の目先の値動きは、特に石油化学製品の市場にとって、今後の展開を大きく左右する関心事となりそうです。化学・合成樹脂メーカー各社は、4月以降の原油高に伴うナフサ価格の上昇を受けて、ポリエチレンやポリプロピレンといった合成樹脂製品の価格を1キログラムあたり10~15円以上引き上げると相次いで表明していました。ナフサとは原油を精製して得られるガソリン留分の一種で、合成樹脂の主要な原料となるため、その価格が製品価格に直結します。
しかし、大型連休が明けるとナフサ価格は下落に転じ、現在では各社が値上げを打ち出した際の想定をすでに下回る水準で推移しています。原料価格の上昇に加え、物流コストも高まっていることから、合成樹脂メーカー側は顧客企業に値上げの受け入れを強く求めている状況です。これに対して、フィルム大手などの需要家からは「ナフサの価格が短期間に大きく変動しているため、すぐには値上げを受け入れがたい」といった声が上がっています。このため、値上げの幅や実施時期を巡って、メーカーと顧客の間で激しい攻防が続いているというのが実情でしょう。
その他の素材市況では、紙・板紙が需給の引き締まりを背景に底堅い動きを見せている一方で、鋼材は上値の重い展開となっています。素材市況全体としては、景気の停滞感が優勢であるという印象を強く受けます。SNS上でも「景気が後退しているサインではないか」「米中がこのまま対立したら、さらに下がるのでは」といった懸念の声が多く見受けられ、今後の市況に対する不安感が広がっているようです。私見ではありますが、現状は米中貿易戦争という地政学的なリスクが、需要と供給という経済の基本原理を歪ませ、市場を混乱させていると認識しています。米中対立が好転しない限り、原油価格が下がり続ける可能性は高く、その場合、素材市況全体に対する下押し圧力はさらに強まるものと危惧しています。