東北電力が、地域に点在する小規模な発電設備を束ねて一つの大きな発電所のように機能させる「仮想発電所(VPP)」の事業化へ向けて、猛烈な巻き返しを図っています。2019年07月06日現在、同社は先行する他電力大手に追いつくべく、自治体や海外企業との強力なタッグを次々と結成しました。このVPP(バーチャル・パワー・プラント)とは、太陽光パネルや蓄電池、電気自動車などをIoT技術で一括制御し、まるで一つの巨大な発電所であるかのように電力を需給調整する仕組みを指します。
SNS上では「余った電気を賢く使えそう」「ポイント還元があるなら参加したい」といった期待の声が上がる一方で、「本当に停電を防げるのか」という技術的な関心も高まっています。東北電力は2018年度からこの実証実験を開始しましたが、東京電力や関西電力が2016年度から着手していたことを踏まえると、後発としてのスタートを余儀なくされていました。しかし、2021年度に予定されている「需給調整市場」の創設を見据え、同社は独自の戦略で勝負を挑んでいます。
特筆すべきは、2019年11月から開始される「卒FIT」世帯向けの画新的なサービスでしょう。FIT(固定価格買い取り制度)とは、再生可能エネルギーで発電した電気を国が定める価格で一定期間買い取ることを約束する制度ですが、その期限を迎える家庭が続出しています。東北電力は、通常の買い取りに加え、VPP実証に協力する家庭に電子マネー等へ交換可能なポイントを付与するメニューを用意しました。これは国内初の試みであり、ユーザーにとっても非常にメリットの大きい選択肢となるはずです。
ドイツの巨人「ネクスト社」との提携がもたらす革新
東北電力の石山一弘執行役員は、2019年05月にドイツのVPP大手であるネクストクラフトベルケ社と協定を締結しました。同社は欧州全域で原発7基分に相当する約700万キロワットもの電力を制御する、まさに世界トップクラスの技術を誇る企業です。この提携により、高度な予測システムを活用した蓄電池の最適制御が可能になります。家庭にとっては蓄電池の充放電が効率化されることで設備の長寿命化が期待でき、電力会社にとっては安定した調整力を確保できるという、理想的な関係が築かれています。
東北地方は広大な土地と安価な地価を背景に、太陽光発電の連系量が全国の約10%、風力に至っては約33%を占める「再エネの宝庫」です。ネクスト社のアレクサンダー・クラウツ部長も、この地域のポテンシャルの高さを高く評価しており、再エネ先進国であるドイツのノウハウを惜しみなく提供する姿勢を見せています。VPPの確立は、火力発電への依存度を下げ、燃料費の削減や二酸化炭素の排出抑制にも直結するため、持続可能な社会を実現する鍵となるでしょう。
さらに東北電力は、2018年04月の仙台市を皮切りに、福島県郡山市や新潟市とも連携を深めています。避難所となる小中学校の太陽光設備を遠隔制御することで、災害時の防災力を高める狙いもあります。実証規模も2019年度には5000キロワット、2020年度には1万キロワットへと拡大する計画です。個人的には、このVPPという仕組みこそが、地域のエネルギー自給自足を促進し、電力の安定供給と環境保護を両立させる「魔法の杖」になると確信しています。