地方都市の持続可能なまちづくりと高齢者の健康増進を両立させる、富山市の画期的な取り組みが注目を集めています。富山市は2019年5月31日、市の公共交通と高齢者の医療費の関連性について調査結果を公表しました。この調査から、市が発行する交通パスを利用している高齢者の方が、より多く歩き、結果的に医療費も少なく抑えられているという、非常に興味深いデータが明らかになったのです。
この調査の対象となったのは、65歳以上の高齢者644人です。参加者には、GPS(全地球測位システム)と歩数計の機能を持つ専用の端末が配布され、詳細な行動データが収集されました。GPSとは、衛星からの信号を利用して現在地を正確に把握する仕組みのことです。富山市は、このデータを基に、路面電車などの公共交通機関に安価で乗車できる割引パス「おでかけ定期券」の利用者と、非利用者との日々の活動を比較分析しています。
調査結果によると、2016年の実績で「おでかけ定期券」を使っている人の1日あたりの平均歩数は5,287歩でした。これは、定期券を持っていない人に比べて約7%も多い歩数にあたります。公共交通の利用が増えることで、バス停や駅までの移動、あるいは目的地での散策など、日常的な活動量が増加しているものと推測されますね。このわずかな歩数の増加が、健康に大きな影響を与えている可能性が見えてきました。
さらに注目すべきは、医療費の差です。2016年から2017年の平均で比較すると、定期券利用者の年間1人あたりの医療費は、非利用者よりも72,860円も少ないという驚くべき結果が出ています。これは、公共交通の利用を促す政策が、高齢者の予防的な健康維持に効果を発揮し、ひいては自治体全体の医療費削減にも繋がることを示唆しているといえるでしょう。SNSでも「富山市の調査結果、すごい! 公共交通の整備がこんな形で市民の健康に貢献するなんて」「やっぱり歩くって大事。市の取り組みがうまく回っている証拠だね」といった声が聞かれ、大きな反響を呼んでいます。
調査結果について、森雅志市長は同日の記者会見で「社会資本、すなわち都市のインフラが、市民の暮らし方そのものを良い方向に変え、医療費の削減という具体的な成果に結びつく可能性を示している」と述べました。社会資本とは、道路や鉄道、公共施設といった社会生活や経済活動の基盤となる設備のことです。市長は、今後もこの関連性についての調査を継続していく方針を示しています。
私自身の見解としましては、富山市の「おでかけ定期券」の取り組みは、高齢化が進む日本において、非常に示唆に富む政策モデルだと感じています。都市計画とヘルスケア政策が連携することで、人々の外出意欲を高め、フレイル(虚弱)の予防に繋がるという好循環を生み出しているのでしょう。単なる移動手段の提供に留まらず、健康的な行動を促すトリガーとして公共交通を活用する「富山モデル」は、他の自治体が目指すべき地域活性化と健康長寿の理想的な形だといえるのではないでしょうか。