会社の種類を理解するためには、4種の会社を区別する基準が重要となります。各種会社を区別する基準となる「直接責任と間接責任」・「無限責任と有限責任」という概念について理解したうえで、それぞれの会社の社員がいかなる責任を負担しているのかが着眼点です。
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 一 会社 株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社をいう。
会社法上の会社と、4種の会社の区別
会社法上の会社には、株式会社と持分会社との2つの類準があり、持分会社には、合名会社・合資会社・合同会社があり、これ以外の会社は認められません。
これら4種の会社を区別する基準はいろいろありますが、一般には社員の責任の態様によって区別されます。
社員の責任の態様は、直接責任か間接責任か、有限責任か無限責任かの2軸の組合せによって異なります。
会社でない者は、その名称又は商号中に、会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。
1 合名会社、合資会社又は合同会社(以下「持分会社」と総称する。)を設立するには、その社員になろうとする者が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。
直接責任と間接責任
直接責任は、社員が会社債務につき会社債権者に対して直接に弁済する責任を負う場合をいいます。
合名会社又は合資会社の各社員は、会社財産をもって会社の債務を完済することができないときは、連帯してその弁済の責めを負うとされているのです(580Ⅰ)。このように、会社債務に直接の責任を追う社員が直接責任社員です。
一方の間接責任は、社員が会社債務につき会社債権者に対して直接に弁済する責任を負わない場合をいいます。
株式会社又は合同会社の社員は、会社の債権者に対して直接に責任を負いません。
ただし、会社の社員になるにあたって会社に出資した財産は、金社の債務の弁済に充てられるので、間接的に会社債権者に責任を負っているともいえます。このように会社債務に対して間接的に責任を追う社員が間接責任社員です(104、578)。
会社は法人であり、出資者とは別個の法人格を有しています。そのため、会社の債務に対しては、会社が弁済する貴任を負担することとなるのが原則です。この意味で、社員の会社債権者に対する責任は間接責任であることが原則であり、直接責任は会社債権者保護のために法が特に認めたものであるといえます。
無限責任と有限責任
無限責任は、社員が自己の全財産をもって会社債権者に対して弁済する責任を負う場合をいいます。無限責任は、社員が直接責任を負う場合にのみ問題となるのです。
有限責任は、社員が一定額を限度として会社債権者に対して弁済する責任を負う場合(社員の責任が直接責任の場合)、又は、社員が会社に対して一定額の出資義務を負う場合(社員の責任が間接責任の場合)をいいます。
株式会社の株主、合同会社の社員(576Ⅳ、580Ⅱ)、合資会社の有限責任社員(576Ⅲ、580Ⅱ)は有限責任です。これに対して、合名会社の社員及び合資会社の無限責任社員が無限責任を負担します(580Ⅰ)。
株式会社と持分会社
社員の地位が細分化された割合的単位(株式)の形をとることにより、社員の個性が希薄化され、少額の資金の結集が可能となる会社を株式会社といいます。会社の信用の基礎が会社財産にある会社です。
一方で、社員間の人的信頼関係及び社員の経営への参加を前提とする会社を持分会社といいます。合名会社、合資会社及び合同会社がこれにあたります。
1 合名会社、合資会社又は合同会社(以下「持分会社」と総称する。)を設立するには、その社員になろうとする者が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。
株式会社
株式会社とは、株主という間接有限責任社員のみをもって組織される会社です。
株主の責任が軽い反面、株主は原則として業務執行には参加しません。また、株主の地位は細分化された割合的単位の形をとり(株式)、原則としてその譲渡は自由なので(127)、誰でも容易に会社に参加できます。
その反面、社員と会社の関係及び社員相互間の関係は希薄となり、社員の個性は重視されません。
多人数の結集が可能であり、大衆資本を集めて大企業を起こすのに適しています。
株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度とする。
合名会社
合名会社とは、無限責任社員のみをもって組織される会社をいいます。合名会社の各社員は会社債権者に対して直接に連帯かつ無限の責任を負担します。
社員は会社債権杏に対して直接無限責任という重い責任を負う反面、原則として会社の業務を執行し、会社を代表する権利義務を有し(590Ⅰ、599Ⅰ)、社員の会社に対する関係が深く、社員の個性が重視されます。持分譲渡には他の社員全員の承諾を必要とする点も特色です。、585Ⅰ)。
人的信頼関係のある少人数の者の共同企業に適する会社形態です。
1 持分会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。 一 目的 二 商号 三 本店の所在地 四 社員の氏名又は名称及び住所 五 社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別 六 社員の出資の目的(有限責任社員にあっては、金銭等に限る。)及びその価額又は評価の標準 2 設立しようとする持分会社が合名会社である場合には、前項第五号に掲げる事項として、その社員の全部を無限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。
1 社員は、次に掲げる場合には、連帯して、持分会社の債務を弁済する責任を負う。 一 当該持分会社の財産をもってその債務を完済することができない場合 二 当該持分会社の財産に対する強制執行がその効を奏しなかった場合(社員が、当該持分会社に弁済をする資力があり、かつ、強制執行が容易であることを証明した場合を除く。) 2 有限責任社員は、その出資の価額(既に持分会社に対し履行した出資の価額を除く。)を限度として、持分会社の債務を弁済する責任を負う。
合資会社
合資会社とは、無限責任社員と有限責任社員とをもって組織される会社をいいます。無限責任社員は合名会社の社員と同様の責に任ずる社員であり、有限責任社員は各自の出資の価額を限度として会社債権者に対し直接かつ連帯して弁済の責に任ずる社員です。
合資会社の有限責任社員は、その責任が直接責任であるという点において、株主その他の有限責任社員とは異なります。
なお、有限責任社員の責任は出資額が限度ですが、業務執行権限を有するので、有限責任社員が業務執行にあたり悪意・重過失があったときには、連帯して、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負います(597)。
合資会社はいわゆる人的会社に属するものであり、合名会社との差異は社員の一部に有限責任社員が存在するかどうかという点にあります。
合名会社同様、少人数による共同企業に適する会社形態です。
1 持分会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。 一 目的 二 商号 三 本店の所在地 四 社員の氏名又は名称及び住所 五 社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別 六 社員の出資の目的(有限責任社員にあっては、金銭等に限る。)及びその価額又は評価の標準 3 設立しようとする持分会社が合資会社である場合には、第一項第五号に掲げる事項として、その社員の一部を無限責任社員とし、その他の社員を有限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。
2 有限責任社員は、その出資の価額(既に持分会社に対し履行した出資の価額を除く。)を限度として、持分会社の債務を弁済する責任を負う。
合同会社
合同会社は、会社法制定の下で新たに創設された会社形態です。会社の内部関係あるいは構成員間の関係では自由な合意に基づく組合的規制がなされますが、外部関係では社員全員が出資を限度とする間接有限責任だけを負います。
合同会社では、社員の責任は問接有限責任であるが、所有と経営は一体となっています。
ジョイント・ベンチャーやスタートアップ・ベンチャー企業等の場合には、会社内部は自由度が極めて高く、なおかつ外部関係でも社員の有限責任が確保されるような会社組織に対するニーズが高いものでした。
そのためアメりカの各州法で導入されていたLLCを念頭に置いて、会社法制定で合同会社が取り入れられたのです。
4 設立しようとする持分会社が合同会社である場合には、第一項第五号に掲げる事項として、その社員の全部を有限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。
各種会社の投下資本の回収
出資者が安心して出資するためには、自らが投下した財産を回収できなければなりません。そのため、投下資本の回収を保障する必要があります。まず、投下資本の回収方法には、会社解散後の残余財産の分配請求があります。しかし、会社存続中に投下資本を回収する方法として、社員たる地位の譲渡(持分の譲渡)、又は、出資の払戻し(退社)の制度があります。ただ、これらが認められるか否かは、各種会社の社員の責任の態様、会社と社員の関係、社員相互の関係に基づく差異があります。
持分会社の社員の業務執行権
従来は、合資会社の有限責任社員の業務執行は禁止されていましたが(旧156)、会社法では、持分会社の社員は無限責任社員であると有限責任社員であるとを問わず、原則として会社の業務執行の権限と代表権を持つとされています。
このように責任制限の有無に関係なく社員に業務執行の権限を認めた理由として、会社の債務につき負うべき責任が軽いことと業務の執行権限を与えることができるかどうかとは、本来別問題であること等が挙げられています。
1 社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、持分会社の業務を執行する。
1 法人が業務を執行する社員である場合には、当該法人は、当該業務を執行する社員の職務を行うべき者を選任し、その者の氏名及び住所を他の社員に通知しなければならない。
会社法上の会社と人的会社・物的会社
社員と会社との関係及び社員相互の関係が密接な会社を「人的会社」といいます。一方で、社員と会社との関係及び社員相互の関係が希薄な会社を「物的会社」といいます。
株式会社
社員たる株主は有限責任しか負わず、原則として会社経営にも参加しないから、社員間の人的信頼関係は問題とならず、社員の地位も自由に譲渡できます。また、株主は有限責任しか負わないため、債権者の 会社に対する信用はもっぱら会社財産の上に置かれ、社員の人的信用に関係しないことから、物的会社の典型といえます。
もっとも、株式譲渡制限の定めがなされている株式会社については、株式会社の実質的所有者は誰かが重要となるため、その個性が重視されます。その意味で、人的会社としての性質を有していることになるのです。
合名会社・合資会社
合名会社は、少数の信頼する者同士が比較的小規模な営業を共同して行うのに適する会社形態であり、経済的には組介企業に近いものである。合資会社は、無限責任社員の経営する事業に有限責任社員が資金を提供し、その事業から生ずる利益の配当を受けるという点に特色があるが、これも合名会社と同様に人的結合の範囲は限定されてくる。
合名会社にしても合資会社にしても、無限責任を負う社員がいるということは、社員が誰であるかが、債権者にとってはもちろん社員相互間でも極めて重要な関心事となるから、この両者は人的会社の典型といえる。
合同会社
社員は間接有限責任しか負わず、会社債権者にとっては会社財産の充実だけが関心事となる会社です。
一方で、この会社のニーズなどからして内部関係においてきわめて自由であり(ex. 損益配分に関 する622条等)社員間の信頼関係も重要な会社です。そのため、人的資本会社と呼ばれることもあります。
各種会社における会社債権者保護
会社には、合名・合資・合同・株式会社がありますが、会社財産は会社債権者に対して第一次的な責任財産を構成することになります。他方、会社は営利性を有するので、会社の実質的所有者である社員は、できるだけ多くの自己の利益を得ようと努めることになります。
そこで会社財産の社員による自由な処分から会社債権者をいかに保護するかが問題となるのです。
どの程度まで会社財産を確保し会社債権者を保護するかについては、会社財産以外に債権の担保となるようなものがあるか、すなわち各種会社の社員の責任の態様によって異なります。
一般法上の会社・特別法上の会社
一般法上の会社とは、一般法たる会社法の規定だけに従う会社です。特別法上の会社とは、一般法たる会社法の他、さらに特別法の規定にも従う会社を指します。
特別法上の会社の中には、特定の種類の営業を目的とする会社のための一般的な特別法(銀行法、保険業法等)に従うものと、特定の会社だけのための特別法に従う特殊会社(日本電信電話株式会社、日本たばこ産業株式会社等)があります。
大会社・大会社でない会社
大会社とは、最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上である会社、又は最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上である会社をいいます(2⑥)。会社法上、大会社か否かにより、機関設計についての差異が設けられています(328参照)。
旧商法下では、大会社・中会社・小会社の区別がなされていました。すなわち、資本の額が5億円以上であるか負債の額が200億円以上である株式会社を大会社とし(旧商特1ノ2Ⅰ)、資本の額1億円以下の会社を小会社としていたのです(同Ⅱ)。
これに対し、会社法では大会社の定義を見直し、さらに中会社と小会社の区別を廃止しました。大会社とそれ以外の会社との区分に加えて、さらに会社の規模により差異を設ける実益は小さいと考えられたからです。
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 六 大会社 次に掲げる要件のいずれかに該当する株式会社をいう。 イ 最終事業年度に係る貸借対照表(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、同条の規定により定時株主総会に報告された貸借対照表をいい、株式会社の成立後最初の定時株主総会までの間においては、第四百三十五条第一項の貸借対照表をいう。ロにおいて同じ。)に資本金として計上した額が五億円以上であること。 ロ 最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が二百億円以上であること。
公開会社・公開会社でない株式会社
公開会社とは、その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社をいいます(2⑤)。
公開会社でない会社とは、これ以外の会社、すなわち、その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けている株式会社です。
つまり、その発行する株式のうち、会社の承認を受けずに自由に譲渡できる株式が1株でもある場合は、当該株式会社は公開会社となります。
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 五 公開会社 その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社をいう。
親会社・子会社
親会社は、株式会社を子会社とする会社その他の当該株式会社の経営を支配している法人として法務省令(規3Ⅱ)で定めるものをいいます。その中でも総株主の議決権の全部を有する親会社を完全親会社というのです(851Ⅰ①)。
子会社は、会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令(規3Ⅰ)で定めるものです。
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 三 子会社 会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう。 四 親会社 株式会社を子会社とする会社その他の当該株式会社の経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう。
1 責任追及等の訴えを提起した株主又は第八百四十九条第一項の規定により共同訴訟人として当該責任追及等の訴えに係る訴訟に参加した株主が当該訴訟の係属中に株主でなくなった場合であっても、次に掲げるときは、その者が、訴訟を追行することができる。 一 その者が当該株式会社の株式交換又は株式移転により当該株式会社の完全親会社の株式を取得したとき。 二 その者が当該株式会社が合併により消滅する会社となる合併により、合併により設立する株式会社又は合併後存続する株式会社若しくはその完全親会社の株式を取得したとき。
子会社・親会社の概念
旧商法下では、子・親会社概念の対象となるのは株式会社・有限会社のみであり、その判断基準は「議決権の過半数」という形式的なもののみでした。しかし、親子会社関係にかかる規制の趣旨(粉飾計算や不正な支配の防止等)に鑑みれば、規制対象を株式会社や有限会社に限定する理由はありません。また、形式的な基準よりも実質的な基準による方が、より規制目的を達成することができます。
そこで会社法は、規制対象を株式会社に限定せず、支配関係という実質的な基準により判断すべきものとしました。
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