2019年6月1日、中国当局がアメリカの巨大物流企業であるフェデックス(FedEx)の配送体制をはじめとする各種調査に乗り出したことが、中国国営の新華社通信の報道によって明らかになりました。これは、フェデックスが中国の通信機器のリーディングカンパニーであるファーウェイ(華為技術)の重要な小包を、同社の許可なくアメリカへ転送していたという事実に端を発しています。米中間の関税合戦が激化の一途をたどるなか、中国当局による今回の動きは、アメリカ企業に対するプレッシャーを強める意図があると見られています。
この問題は、2019年5月中旬に発生しました。ファーウェイが日本の東京から中国国内へ送ろうとしていた2つの小包が、フェデックスによって無断で米国へと転送されてしまったのです。フェデックスの中国法人はこれに対し、「誤配だった」として謝罪の声明を発表し、「第三者から転送を求められた事実は一切ない」と主張しています。しかし、この説明にもかかわらず、中国国内のSNS上などでは「本当に単なるミスなのだろうか?」「これはアメリカ当局の意向を受けて行われた転送ではないか?」といった疑念や憶測が噴出している状況です。
物流業界の巨人であるフェデックスが、世界的に注目を集めるハイテク大手のファーウェイの貨物を「誤配」したという事態は、単なる配送ミスで済まされない、地政学的な問題として捉えるべきでしょう。国際物流という極めて重要なインフラが、国家間の貿易摩擦や安全保障の争いの舞台になりつつある、と考えられます。現代社会において、物流は経済活動の血液とも呼べる存在であり、その信頼性が揺らぐことは、国際的なサプライチェーン全体に深刻な影響を及ぼすに違いありません。物流企業には、いかなる圧力にも屈しない中立性と透明性がこれまで以上に求められています。
この一件は、米中間のテクノロジー覇権争いが、すでに個々の企業のオペレーションレベルにまで深く浸透していることを示唆しているのではないでしょうか。ファーウェイは、次世代通信規格である5G技術の分野で世界をリードしており、アメリカは同社の製品が安全保障上のリスクをもたらすとして、各国に排除を促しています。このような背景を考慮すると、今回のフェデックスによる小包の無断転送は、単なる偶然では片付けられない政治的な意味合いを帯びていると見て間違いありません。今後の中国当局の調査の行方が、米中関係、そして国際的なビジネス環境にどのような影響をもたらすのか、私たちは注視していく必要があるでしょう。