世界の金融市場が急速に変化する中、デジタル資産の動向が注目されています。タイ証券取引委員会が4月1日からデジタル資産を決済手段として使用することを禁止するとの発表は、金融の安定性を保つための重要なステップとされています。タイはデジタル資産の利用が盛んで、商業施設や不動産などでの決済が広がっていましたが、規制の強化により、その利用は大きく制限されることになりそうです。
一方、中南米ではデジタル通貨の導入が進んでおり、特にジャマイカとメキシコが注目されています。ジャマイカは2022年中に中央銀行デジタル通貨(CBDC)の導入を予定しており、メキシコも2024年までに同様の取り組みを進めると発表しました。これらの国々では、銀行口座を持たない人々が多いため、デジタル通貨が金融サービスの普及を促進すると期待されています。
また、仮想通貨取引所コインチェックが、マネックスグループの支援を受けて米国のナスダックに上場する計画も話題となっています。日本の仮想通貨業者が米国の証券市場に上場するのは初めてであり、この動きはグローバルな展開を視野に入れた新たな戦略の一環と見られています。
デジタル資産の価格と本質的価値の乖離についての議論も盛んです。仮想通貨やデジタル資産は、価格の変動が激しく、その本質的価値との乖離が問題視されています。ウクライナ危機では、ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産による寄付が1億ドルを超えるなど、支援の手段としても利用されています。
また、ロシアとの仮想通貨取引に対する規制が強化される中、日本政府も新たな対策を講じています。ロシアでのVisaやMastercardの停止、そしてJCBの取引縮小が、キャッシュレス社会に大きな影響を与えています。
これらの動きは、デジタル金融の未来を形作る重要な要素となっており、各国の政策や規制がどのように進化していくのか、引き続き注目が集まります。
タイ証券取引委員会、デジタル資産決済禁止を発表!金融安定性への対策
タイでは、2022年4月1日から、仮想通貨やその他のデジタル資産を商品やサービスの決済に利用することが禁止されることが発表されました。タイ証券取引委員会(SEC)は、この規制を通じて金融や経済の安定性を保つことを目指しています。具体的には、既にデジタル資産による決済を提供している事業者には、2022年4月末までの猶予を与え、その後の停止を求めています。
この新たな規制は、すべての仮想通貨を決済対象から外すものであり、商品やサービスの購入には使用できなくなります。ただし、投資目的での売買は引き続き認められます。SECは、タイ中央銀行と協力しながらデジタル資産の利点とリスクについて議論し、その結果、規制と管理の必要性を認識したと説明しています。特に価格変動による損失や、不正アクセスによる盗難、マネーロンダリングといったリスクが指摘されています。
タイでは、デジタル資産の人気が高まり、決済手段としての利用が広がっています。たとえば、小売り大手のザ・モール・グループは、2021年12月から傘下の商業施設でデジタル資産決済を導入しました。また、財閥チャロン・ポカパン(CP)グループ系の不動産開発会社は、デジタル資産で購入できる分譲住宅を発売しています。調査会社スタティスタによると、タイは2021年にデジタル資産の保有率が回答者の31%に達し、56カ国中で2位となっています。このように、デジタル資産の利用が急速に進むタイですが、規制の影響でその動向が注目されます。
中南米のデジタル通貨革命:ジャマイカとメキシコのCBDC導入計画の詳細
中南米では、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の導入が急速に進んでいます。特にカリブ海のジャマイカは、2022年3月中にCBDCを実用化する計画を発表しました。ジャマイカ中央銀行のナタリー・ヘインズ副総裁によると、すでに試験運用を終え、2億3,000万ジャマイカ・ドルのCBDCを導入し、技術的に問題がないことを確認しています。今後は順次規模を拡大し、年間で5%の通貨をCBDCに置き換えることを目指しています。
メキシコも2024年までのCBDC導入を予定しており、メキシコ銀行は即時性や安全性、効率性の向上を狙いとしています。既存の決済システムをCBDC対応にする計画が進行中です。ブラジルでは、2022年内に「デジタル・レアル」のテスト実施を目指し、2024年からの本格導入を見込んでいます。技術的な提案を今年7月までに民間企業から募る予定です。
中南米のデジタル通貨の導入が進む背景には、従来の金融サービスの普及の遅れがあります。例えば、ジャマイカでは国民の約2割、メキシコでは成人の過半数が銀行口座を持っていないという調査結果があります。手数料の高さや銀行への不信感が影響しており、デジタル通貨の導入によってスマートフォンさえあれば金融サービスにアクセスできるようになります。ジャマイカ中央銀行のヘインズ氏は、「貧困層の金融アクセスを高めるのが最大の目的だ」と語っています。
また、中南米の貧困層は外国からの送金に依存しており、メキシコでは2021年の外国からの送金額が過去最高を記録しました。デジタル通貨の導入により、送金コストの削減が期待されています。ブラジル中銀のカンポス・ネト総裁は、「デジタル通貨は物理的な通貨に徐々に置き換わっていく」と述べ、デジタル通貨が将来的には通貨の中心的な役割を果たすと期待されています。
これまでの中南米の取り組みとしては、バハマが2020年に世界初のCBDCを導入し、エルサルバドルは2021年にビットコインを法定通貨に採用しました。従来の金融サービスの普及の遅れがフィンテックの導入を後押ししている形です。しかし、課題も残ります。CBDCの導入動機は強い一方で、フィンテックに対する知識が不足していることが問題です。実際、バハマではCBDCに関する教育や認知が不十分で、多くの店が導入していない状況です。
一方、米バイデン政権はデジタル資産の技術革新を促す大統領令に署名し、CBDCの検証作業を重要課題として位置づけました。中国や欧州中央銀行(ECB)もCBDCの準備を進めています。中南米の先行事例は、経済規模が大きい国々にとっても参考になるでしょう。
コインチェック、初の日本仮想通貨業者としてナスダック上場へ!マネックスグループの新戦略
マネックスグループは、暗号資産(仮想通貨)交換業を手がける子会社コインチェックを米国のナスダック市場に上場させる計画を発表しました。この上場は2022年中を予定しており、特別買収目的会社(SPAC)との統合を通じて実現する見込みです。もし成功すれば、日本の仮想通貨交換業者としては初の上場となります。マネックスグループは、この上場により人材の獲得や提携先の確保を目指し、米国や欧州などの海外展開も視野に入れています。
上場準備に向けて、マネックスグループはSPAC企業との契約を結び、新たに設立する中間持ち株会社にコインチェックとナスダック上場のSPACを統合する予定です。中間持ち株会社をナスダックに上場させ、その後もマネックスの連結子会社として位置づける計画です。
マネックスグループの松本大社長は、米国上場を選んだ理由について、「仮想通貨関連の規制や税制、人材、技術が日本では十分に整っていないことが大きな要因」と述べています。また、東京証券取引所が仮想通貨交換業者の上場審査を受け付けていないことも、米国上場の決定に影響を与えたと考えられます。
暗号資産とお金のバブル理論:本質的価値と価格乖離の真実
経済学の視点から見たバブルの理論について、ここで解説します。バブルとは、資産の取引価格がその本質的な価値から大きく乖離した状態を指します。具体的には、経済学においてはこの乖離の度合いがバブルの大きさを決定します。例えば、暗号資産(仮想通貨)のケースを考えてみましょう。暗号資産の価格が急激に高騰している背景には、その本質的な価値に対する見方が大きく影響しています。
暗号資産の本質的な価値とは、言い換えれば、その背後にある裏付け資産が存在しないため、単なる電子データの集まりに過ぎません。例えば、もしも暗号資産が通信手段を失い、孤立した無人島での価値を見つけるのは難しいでしょう。つまり、その価値はゼロに近いと言えるかもしれません。
しかしながら、現在の市場では多くの暗号資産が正の価格で取引されています。これは、経済学的に見れば、取引価格と本質的な価値との乖離がバブルを形成していることを意味します。同様の概念は「お金」でも当てはまります。例えば、1万円札は精巧なデザインや偽造防止技術が施されていますが、本質的には紙切れに過ぎません。そのため、1万円札の実際の価値は数十円程度だと考えられることが多いです。従って、1万円という価格はその本質的な価値を大きく上回っており、経済学的にはバブルと言えるのです。
ウクライナ危機が暗号資産寄付を加速:ビットコインとイーサリアムで集まった1億ドル超の支援
ウクライナ戦争が暗号資産の利用を加速させたというニュースが報じられました。ウクライナ政府は、戦費調達のためにビットコイン、イーサリアム、テザーといった暗号資産の寄付を呼びかけ、世界中から支援を受け入れています。当初は単なる宣伝と見られていましたが、実際には予想以上の反響を呼びました。
暗号資産関連の起業家であるブリタニー・カイザー氏によれば、SNSを通じた募金活動では約1億600万ドル(約125億円)の寄付が集まりました。この寄付額は、欧州連合(EU)が発表した初期の9000万ユーロを上回り、EUの支援額はその後増加しています。ウクライナのフョードロフ副首相兼デジタル転換相が展開する募金活動には、多くのハイテク人材が協力しているとされています。
寄付の中にはイーサリアム共同創業者ギャビン・ウッド氏がポルカドットを使って500万ドルの寄付をする意向を示すなど、多様な暗号資産が含まれています。ウクライナ中央銀行も現在、NFTを含む多様な暗号資産を受け入れており、カイザー氏はこれを「前代未聞のイノベーション」と評しています。
金融界では、暗号資産の利用拡大に対して保守的な意見もありますが、多くの投資家や政策立案者は、この寄付の規模を軽視するわけにはいかないでしょう。ウクライナ侵攻が暗号資産の普及を加速させる可能性が高いとされています。
ヘッジファンド大手のブリッジウォーター・アソシエーツは、この戦争が暗号資産市場における構造的変化を促進する重要な要因であると指摘しています。シリコンバレーのハイテク企業スティール・パーロットのCEOミシェル・リッター氏も、SNSによる「アラブの春」同様に、暗号資産が転換点を迎えていると述べています。
ウクライナが暗号資産を巡る動きが活発で、技術革新の拠点となっていることも、この流れを後押ししています。しかし、戦争によって従来の決済手段が使えない中、暗号資産は支払い手段としての役割には限界があると指摘されています。
さらに、ロシア中銀への制裁により、ドルを避ける動きが強まる可能性があるものの、短期的にはドルの地位は揺るがないとされています。米政府はデジタル資産分野での国家戦略を発表し、暗号資産業界のイノベーションを米国の規制範囲内で進める意向を示しています。これは、暗号資産業界の大手プレーヤーが支配層との良好な関係を築こうとする動きと合致しています。
このように、ウクライナへの暗号資産寄付の急増は、地政学的な要因が金融市場に与える影響を示す象徴的な事例となっていると言えるでしょう。
仮想通貨取引停止命令:ロシア制裁に対する日本政府の新たな対策
金融庁と財務省は、2022年3月14日に国内の暗号資産(仮想通貨)交換業者に対し、ウクライナ侵攻に関わるロシアへの制裁対象者との取引を停止するよう要請しました。これは、米国や欧州と連携して、仮想通貨取引がロシアへの経済・金融制裁の抜け穴にならないようにするための措置です。
具体的には、仮想通貨の支払い先が制裁対象者である場合や、その疑いがある場合には支払いを中止し、金融庁および財務省への報告を求められます。政府は制裁対象者のリストと照合し、取引の監視を強化するよう指示しています。これに基づき、外為法と資金決済法を根拠に、仮想通貨も「支払い」の一部として規制対象に含められています。
また、日本暗号資産取引業協会(JVCEA)も対応指針を策定する方針で、交換業者が管理する仮想通貨に対するロシアとの取引停止を視野に入れ、金融庁と協議を進めています。しかし、依然として抜け穴のリスクは残ります。ロシアとの仮想通貨取引の実態は不透明であり、制裁対象者が偽名を使用するケースもあるため、見抜くことが課題です。また、個人が交換業者が管理しないウォレット同士で仮想通貨をやり取りする場合には、事実上規制が難しい状況です。
ロシアとの仮想通貨取引監視強化、政府が自主規制団体に新たな規制を要請
政府はロシアとの仮想通貨取引に対する監視を強化する方針を決定しました。ウクライナ侵攻に伴い、ロシアに対する経済制裁が厳しくなる中、政府は自主規制団体に対し、より厳格な規制の導入を求めることを検討しています。これにより、仮想通貨取引を通じて制裁を回避する手段を防ぎ、金融面でのロシア封じ込めをさらに強化する狙いがあります。
現行の外為法では仮想通貨の取り締まりが難しく、抜本的な規制強化には法改正が必要です。しかし、法改正には時間がかかるため、政府は即効性のある対策に重点を置くことに決めました。その一環として、仮想通貨交換業者に対し、ロシアとの仮想通貨送受信の停止を求める案が検討されています。
また、日米欧の連携のもと、一部のロシアの銀行が国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除されたり、中央銀行の資産が凍結されるなど、様々な経済制裁が実施されています。これに対抗して、仮想通貨による取引が制裁の抜け穴となることを防ぐための対策が急務です。欧州連合(EU)も仮想通貨が制裁回避手段として利用されないように、対応策を模索しています。
ビットコイン法定通貨化で進化するエルサルバドルのフィンテック業界
エルサルバドルは、中米で初めてビットコインを法定通貨として採用し、その動きが注目されています。ビットコインの導入によって、新興のITスタートアップが同国で存在感を高めています。リスク資産の回避傾向が強まる中、ビットコインそのものの信頼性には揺らぎがありますが、法定通貨としての定着が進むエルサルバドルでは技術の需要が確かです。スマートフォンアプリや中小企業向けのローンなど、さまざまな分野で参入が進んでおり、各企業はビットコインが抱える課題に対して商機を見出しています。
例えば、米国のスタートアップ「アルファポイント」は、エルサルバドルの電子財布「チボ」に自社の技術を提供し、アプリの安定性や顔認証機能の向上を図っています。エルサルバドル政府は2021年9月にビットコインを法定通貨として採用し、同時に「チボ」と専用のATMを導入しましたが、アプリやATMの不具合が頻発していました。このため、アルファポイントの技術を導入し、アプリの改善を進めることになったのです。利用者離れを防ぐために、政府はアプリの安定化を急いでいる様子が見受けられます。国内の大学による調査では、国民の70%がビットコインを法定通貨にした政策に不信感を抱いていることが判明しており、政府にとってチボは経済活動を把握する重要な手段となっています。
チボが国民の決済の基盤として定着すれば、政府は国民の決済データを収集し、経済政策の実施がしやすくなる可能性があります。エルサルバドルは2001年に自国通貨の「コロン」を廃止し、米ドルを法定通貨に採用しました。これにより、物価や金利の安定が図られましたが、独自の金融政策には限界がありました。2022年現在、中央銀行デジタル通貨(CBDC)を導入する動きが世界的に高まっていますが、自国通貨の運用を一度諦めたエルサルバドルが独自のデジタル通貨を発行しても信用を得るのは難しいとされています。そのため、エルサルバドルではビットコインを採用する方が合理的だとされています。
エルサルバドルのブケレ大統領は、ビットコインプロジェクトを政府主導で進めており、企業が支援する形で展開しています。政府と民間の連携は、チボ以外にも広がりを見せています。例えば、フィンテックスタートアップの「アキュメン」は、政府と連携し中小企業向けのローンを提供しています。このローンは、金利が通常の銀行よりも低く設定されており、貸し手と借り手を結ぶDeFi(分散型金融)の仕組みを活用しています。
しかし、政府のビットコイン導入政策には批判もあります。2021年11月には「ビットコインシティー」の建設計画が発表され、空港や住宅、商業施設の建設が予定されていますが、進捗が不透明です。法律でビットコインの支払いを拒否できないように義務づけられたものの、明確な罰則がなく、技術的に不十分な店舗は対象外とされています。そのため、一部の店舗ではビットコインによる決済を拒否し、ドル決済を続ける姿勢を見せています。また、ビットコインを法定通貨にする法律の制定が急速に進められたことや、チボのシステムに関する情報が十分に開示されていないことについても、透明性の欠如が指摘されています。
米国のデジタル資産戦略:デジタルドルとCBDCの未来に迫る
バイデン米政権は2022年3月9日、デジタル資産分野における初の国家戦略を発表しました。これにより、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の検証が政府の重要な課題として位置づけられ、デジタルドルの実用化が探られます。中国が「デジタル人民元」の発行を進める中、米国も民間の暗号資産(仮想通貨)を含むデジタル資産開発で主導権を握る意向を示しました。
バイデン大統領は同日、デジタル資産の技術革新を促進する大統領令に署名しました。これにより、ホワイトハウスが中心となり、国家安全保障と経済政策の両面から戦略を策定することが決定しました。これまで、米連邦準備理事会(FRB)や米証券取引委員会(SEC)が個別に対応を進めていましたが、統一された政府戦略が整うのは初めてです。
今後2~6カ月以内に、財務省などの関係省庁が具体策の検討を進める予定です。デジタル資産戦略の中では、消費者や投資家の保護、金融システムの安定、不正防止、米国の競争力維持、銀行口座を持たない人への金融サービス提供、そして責任あるイノベーションが重点的に扱われます。特に、米国版CBDC「デジタルドル」の研究開発が注目されています。大統領令には、米国が国際的な実験に参加し、開発競争で主導権を握るという方針が明記されています。
FRBはこれまでデジタルドルの発行には慎重な立場を取っており、2022年1月の報告書ではその効率化や金融包摂の可能性を認める一方で、サイバー攻撃のリスクなどの課題も指摘していました。もし基軸通貨ドルが取引不能になれば、世界経済に深刻な影響を与える可能性があるとされています。この報告書は、政府と議会の支持がなければデジタルドルを発行しないとの姿勢も示していました。
しかし、今回の大統領令はデジタルドルに対する前向きな姿勢を示しており、その背景には中国の「デジタル人民元」に対抗する必要があるとされています。中国はデジタル人民元の実証実験を始め、国内だけでなく国際的な貿易決済や送金にも視野を広げています。また、ロシアも欧米の制裁を受けて、SWIFTから締め出される中で新たな決済システムの構築を進めています。このような状況が、米国のドル覇権を脅かす可能性もあります。
さらに、仮想通貨市場の膨張も米国のデジタルドル発行に影響を与えています。2021年11月にはデジタル資産の時価総額が3兆ドルを突破し、米国人の約16%が仮想通貨に投資していると回答しています。仮想通貨は規制のコントロールが難しく、ロシアのウクライナ侵攻を受けた制裁回避の手段として利用されるなど、「抜け穴」としての問題もあります。大統領令では、省庁間の連携で仮想通貨を使った不正行為の防止や摘発を強化し、同盟国との協調も求められています。
米政府高官は、基軸通貨を発行している国としてデジタル化に対する慎重な姿勢を説明する一方で、ドルの役割が国際通貨システム全体にとって極めて重要であることを強調しました。ドル覇権を維持するためには、政府としてCBDCの検証を加速することが必要だと認識されています。
デジタル金融の最前線:自民党がNFTや暗号資産に本格参入する背景とは?
デジタル金融の広がりを背景に、自民党内でデジタル資産やデジタル通貨に関する政策が活発化しています。NFT(非代替性トークン)や暗号資産の拡大に伴い、制度整備のニーズが高まる中、ブロックチェーン推進議員連盟が主導的な役割を果たしています。この議連の会長を務める木原誠二官房副長官は、岸田文雄首相の「最側近」として多忙な公務の合間にも会合に出席し、国家戦略としてデジタル金融を位置づける姿勢を見せています。
ブロックチェーン技術は、取引記録を暗号技術で保護し、ネットワーク上で安全に管理する仕組みです。この技術は暗号資産やデジタル通貨、NFTなど、今後のデジタル経済の基盤を支える重要な要素とされています。
自民党内では、デジタル金融サービスの拡大に伴い、現在の制度が現実に追いついていないという問題意識が高まっています。議連の発起人である平将明氏は、日本での暗号資産に対する重い税負担や曖昧な法制度が、企業の海外流出を招いていると指摘しています。彼は、デジタル社会推進本部内のNFT政策検討プロジェクトチームの座長も務めており、この分野のリーダーシップを発揮しています。
さらに、中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する検討も進んでおり、党金融調査会の藤丸敏氏は、国際的な競争の中で日本が遅れを取らないようにすべきだと強調しています。この調査会は2019年からデジタルマネー推進プロジェクトチームを設立し、議論を深めてきました。
木原氏や村井英樹首相補佐官などの財務省出身の議員が、岸田派(宏池会)に多く所属していることは、金融行政において彼らの知見がいかに重要であるかを示しています。宏池会は、歴代の首相が金融政策に精通してきた伝統を持ち、その知識が現在のデジタル金融分野にも生かされています。
宮沢洋一税制調査会長は、デジタル通貨は規制の枠内で信頼を維持することが不可欠だと述べています。また、日銀出身で金融庁にも在籍した経歴を持つ新人議員、神田潤一氏は、技術の進歩が民間で起きている現状を阻害してはならないと訴えています。さらに、弁護士出身の塩崎彰久氏は、イノベーションとコンプライアンスの両立が必要であると強調し、デジタル本部で積極的に制度の議論に加わっています。
ロシアでビザ・マスターカード停止、JCBも取引縮小へ|キャッシュレス社会に大打撃
ロシアへの金融制裁がますます強化される中、日常生活にも深刻な影響が広がりつつあります。米国の大手クレジットカード会社であるビザとマスターカードは、ロシア国内での業務を停止すると発表し、日本のJCBも取引を縮小する方針を示しました。この動きにより、ロシア国内のキャッシュレス決済システムが大きな打撃を受けることが予想されます。
ロシアではクレジットカードの約7割を国外ブランドが占めており、これらのカードが国内外で使えなくなることで、生活に深刻な影響が出るでしょう。さらに、SWIFTからの排除や通貨ルーブルの急落なども相まって、金融インフラが厳しい状況に直面しています。特に、キャッシュレス化が進んでいるロシアでは、この影響が一層顕著になるでしょう。
ビザとマスターカードの決定は、ウクライナからの要請や米国内の圧力によって後押しされたものであり、制裁強化の一環として行われました。ビザのCEOはこの決定について「加盟店やカード会員に影響を与えることを遺憾に思う」と述べていますが、制裁解除の条件が整えば、業務再開に向けた取り組みを行う意向も示しています。
一方で、日本のJCBは制裁対象となる銀行との取引を停止する方針を示しつつも、すべての取引を停止することには慎重な姿勢を見せています。この対応には、ロシア国内で既に普及しているJCBの利用が、生活に与える影響を考慮してのことが背景にあるでしょう。
送金サービス業界も同様に、ロシア向けのサービスを停止しており、ペイパルなどもその流れに加わっています。しかし、ロシアは既に独自のカード「MIR(ミール)」を発行しており、代替策として利用される可能性があります。また、制裁の影響を受けない中国の銀聯カードの導入も検討されている状況です。
仮想通貨を使った金融制裁回避を防ぐため、米欧日は協力して対策を講じようとしていますが、個人間の取引を完全に規制することは難しい課題です。バイデン米大統領も3月には仮想通貨規制に関する大統領令を出す見込みであり、今後の規制の実効性が問われることになるでしょう。
ロシア制裁の抜け道?暗号資産(仮想通貨)の規制強化で米欧日が一致
2022年3月、欧州連合(EU)や主要7カ国(G7)は、ロシアに対する経済・金融制裁の抜け穴として暗号資産(仮想通貨)が利用されることを防ぐため、規制強化に乗り出しました。日本の自主規制団体も、仮想通貨交換業者に対し、ロシアとの取引を停止する方向で検討を開始しています。こうした動きは、ロシアの一部銀行が国際決済網から排除されるなど、制裁の実効性を確保するためのものです。しかし、多くの仮想通貨交換業者が無国籍であることから、実効性のある対策が求められています。
日本暗号資産取引業協会(JVCEA)は、仮想通貨の送受金をロシアと制限する方針を検討中です。同協会の会長であるコインチェックの蓮尾聡氏は、金融庁と協力して具体的な対応策を模索していると述べました。一方で、米欧日も仮想通貨を通じた制裁回避の防止に向けて足並みを揃えています。EUは財務相会合で、仮想通貨を利用した制裁回避の手段に対応することに合意し、G7でもドイツ財務相がこの議論を進めています。
ロシアの通貨ルーブルは一時的に3割も下落し、ロシア国内では仮想通貨が資金移動の手段として広がっています。特に、安定した値動きを持つ仮想通貨「テザー」の取引量が急増しており、ドル資産を増やそうとする動きが見られます。仮想通貨の利用が増えている背景には、ロシア国内の経済不安や富裕層による資金逃避のニーズがあり、データによると、ロシアには1730万人もの仮想通貨保有者がいるとのことです。
JVCEAの規制案に加え、ロシアのマイニング業者や政府関係者の仮想通貨資産の凍結も検討されています。米国ではFBIが仮想通貨の資産を差し押さえるためのチームを立ち上げ、英国も制裁回避を監視するための新しいチームを設置しました。しかし、個人間で仮想通貨を送金する際の規制が難しいという課題も残っています。特に、無国籍業者であるバイナンスなどは、一律の利用停止を拒否しており、制裁の抜け道としての仮想通貨の利用が完全に防げるかどうかは不透明です。
仮想通貨業界をリードする米国では、仮想通貨の投資家保護を目的とした規制の導入が議会で議論されており、バイデン大統領も近く規制に関する大統領令を発表する見込みです。制裁回避を防ぐためにも、今後の規制強化が重要な鍵を握ることになるでしょう。
仮想通貨がルーブルを超える? 金融制裁がもたらすビットコイン急騰の理由
ロシアへの金融制裁が厳しくなる中、ビットコインをはじめとした暗号資産が急騰しています。特に、制裁で取引が制限されたルーブルの代替手段として仮想通貨が注目され、価格が上昇しています。2022年3月2日にはビットコインが約4万4000ドルに達し、SWIFTからロシアの一部銀行が排除された2022年2月26日と比較して13%も上昇しました。これは、リスク資産から仮想通貨に資金を移す動きが世界的に広がっていることや、ルーブルやウクライナ通貨フリブナ建ての取引が増加していることが要因です。
このような状況下で、ビットコインの時価総額は約8200億ドルに達し、ルーブルを上回る規模となりました。さらに、ブロックチェーン調査会社カイコのデータによれば、2022年2月28日のルーブル建てビットコインの取引量は10億ルーブルを超え、以前の約5倍に増加しています。また、ステーブルコインの一つであるテザーのルーブル建て取引量も急増し、侵攻前と比べ10倍以上に増えました。これに対し、ウクライナ政府は仮想通貨での寄付を呼びかけ、制裁や戦禍で銀行送金が難しい状況で仮想通貨が活用されています。
一方で、仮想通貨が制裁の抜け道になることへの懸念も高まっています。米バイデン政権は、制裁回避に仮想通貨が悪用されるリスクに対処する姿勢を示しました。また、ウクライナの副首相もロシアからの仮想通貨利用を禁止するよう、世界の交換所に要請しています。しかし、多くの交換所は規制に消極的で、世界最大の交換所であるバイナンスは、制裁対象となった口座の凍結には協力するものの、一般ユーザーのアクセス制限には否定的な姿勢を示しています。
日本のステーブルコイン規制強化:デジタル通貨の未来はガラパゴス化か?
2022年、金融庁は、法定通貨に連動するデジタルマネー「ステーブルコイン」に関する規制を導入する予定です。この規制により、日本国内でもようやくステーブルコインが決済や送金に利用できるようになります。しかし、厳しい銀行規制に準じたルールが設けられるため、海外の代表的なステーブルコインが締め出される可能性が高いです。
ステーブルコインは、法定通貨に価値を連動させたデジタルマネーで、例えば1コイン=1円のように安定性が保たれています。海外ではドルやユーロ建てのステーブルコインが発行され、すでに市場で広く利用されていますが、日本の法律では仮想通貨として扱われず、法的枠組みが整っていなかったため、これまで日本の取引所では取り扱われてきませんでした。
今回の規制では、ステーブルコインを「デジタルマネー類似型」と「暗号資産型」の2つに分類し、特に「デジタルマネー類似型」を新たな規制対象にします。この新たな枠組みによって、ステーブルコインの発行者には銀行業や資金移動業のライセンス取得が義務付けられます。さらに、ステーブルコインの管理や移動を行う「仲介者」という新しいライセンスも導入され、安全性を確保しながら、価値の円滑な移転を促進する狙いがあります。
この動きに呼応するように、民間企業も活動を活発化させています。例えば、「デジタル通貨フォーラム」はステーブルコイン「DCJPY」の実証実験を始める予定です。このシステムは、新法で導入される「仲介者」機能を組み込むことで、銀行以外の企業も決済機能を提供できるように設計されています。
一方で、三菱UFJ信託銀行の「プログマコイン」は信託財産を裏付けに発行され、デジタル証券の売買などに利用される予定です。しかし、仮想通貨交換事業者は「海外のステーブルコインの取り扱いが難しくなる」と懸念を示しており、日本国内でのステーブルコインの普及にはまだ課題が残っているといえるでしょう。
さらに、テザーなど海外の有力なステーブルコインが日本で自由に流通するのは困難と予想されています。日本は仮想通貨に関する規制を強化し、安全性を重視しているものの、グローバルなステーブルコインへのアクセスが制限されることで、利用者からは不満が出るかもしれません。こうした背景から、日本のデジタル決済は、携帯電話産業のように「ガラパゴス化」する可能性が高まっていると言えるでしょう。
仮想通貨がロシアの経済制裁回避に利用?注目されるビットコインの役割と影響
米株式市場が再び下落する中、ウクライナ情勢の緊迫が市場全体に影響を与え、2022年3月、原油価格は約7年9カ月ぶりの高値を記録しました。このような不安定な状況下で、ビットコインをはじめとする暗号資産も揺れ動いています。特にウクライナへの寄付が行われる「光」の側面が注目される一方で、制裁回避のために利用される可能性が懸念され、投資家たちの不安を増幅させています。
ビットコインの価格は、一時4万5000ドル近辺まで上昇し、3週間ぶりの高値を記録しました。24時間での上昇幅は約5%に達しています。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻が始まる前の週には、リスク資産の売りが広がり、ビットコインの価格も3万4000ドル台まで下落していました。
特に目立つのは、ロシアの通貨ルーブル建ての仮想通貨取引の急増です。英調査会社コインシェアーズによると、2022年2月19日から25日の間に、ルーブルを使用したビットコイン取引の量が前週比で2.2倍に膨れ上がりました。これは、ルーブルの暴落に直面したロシアの一部の投資家が、危機から資産を守るために暗号資産に頼ったためと見られます。
ウクライナは近年、仮想通貨産業の発展を推進してきました。ブロックチェーン分析会社チェーンアリシスによると、2021年時点での仮想通貨普及率において、ウクライナは世界第4位となり、米国やロシアを上回る位置にあります。こうした背景もあり、今回の危機に際してウクライナは「仮想通貨フレンドリー」な国としての恩恵を受け、国際社会からの支援を仮想通貨を通じて受け取ることが可能となりました。
ウクライナのデジタル転換相を兼務するフョードロフ副首相は、2022年2月26日にツイッターで仮想通貨による寄付を呼びかけ、その結果、ウクライナ政府や軍を支援する非政府組織(NGO)には、2022年3月1日までに3000万ドルを超える寄付が集まりました。寄付額は日々増加しており、ウクライナ政府の公式ツイッターは、仮想通貨コミュニティからの支援に感謝の意を表しています。
一方で、仮想通貨がサイバー攻撃や制裁逃れに利用される可能性に対する懸念も高まっています。フョードロフ副首相は仮想通貨の交換所に対し、ロシアの利用者の口座を凍結するよう求めましたが、大手交換所であるバイナンスやコインベースは、制裁対象者の利用を停止する一方で、ロシア全体の利用者の口座凍結は行わない方針を示しています。バイナンスはその理由として、仮想通貨が経済的自由を提供するための手段であり、一方的なアクセス制限はその理念に反すると説明しています。
国際決済網のSWIFTからロシアの銀行を締め出し、米マスターカードがロシアの銀行との取引を停止するなど、金融分野におけるロシア包囲網はますます強化されています。紛争下での仮想通貨の利用が注目される中、交換所はこれまでにない難しい局面に直面していると言えるでしょう。
暗号資産が政情不安国で急拡大!ウクライナやトルコで仮想通貨の需要急増
政情不安や経済混乱が続く国々で、暗号資産(仮想通貨)が新たな希望として広がりを見せています。戦乱に巻き込まれたウクライナや、インフレが止まらない国々では、自国通貨や金融システムへの信頼が揺らぎ、人々は代替手段として仮想通貨を選び始めました。
例えば、ウクライナではロシアの侵攻による混乱の中で、仮想通貨が普及しつつあります。南部の港湾都市オデッサに留まるオレクシー・シニロさんは、ドルやビットコインを活用して資産を分散投資してきました。ウクライナではすでに人口の約13%が仮想通貨を保有しており、特に電力が安い同国では「マイニング」と呼ばれる仮想通貨の採掘活動が活発です。
一方、ロシアでは国際制裁の影響でルーブルが急落し、仮想通貨への資金移動が進んでいます。アフガニスタンでも、タリバン政権下で米欧の経済制裁が強まる中、テザーを利用した国際送金が注目されています。通貨リラの急落に見舞われたトルコでも、若者たちは蓄えの価値を守るために仮想通貨に頼り始めています。
しかし、暗号資産の未来は一筋縄ではいきません。米国の金融引き締めや中国の規制強化が、ビットコインをはじめとする仮想通貨の価格に影響を及ぼすリスクがあるからです。政情不安と経済的な困難が続く中、人々は暗号資産に希望を託していますが、その選択には慎重さが求められるでしょう。
ウクライナで仮想通貨取引が急増!ロシア侵攻と寄付・資金逃避の実態
ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、ウクライナ国内で暗号資産、いわゆる仮想通貨の利用が急増しています。ウクライナへの支援や寄付の手段として、さらには富裕層が資金を国外へ退避させる手段として、仮想通貨が重要な役割を果たしているのです。一部のロシアの銀行が国際銀行間の送金・決済システムから排除されたことから、ロシアでも仮想通貨が送金の抜け道として利用される可能性が高まっています。
ブロックチェーンの分析会社エリプティックによると、ウクライナ政府や軍を支援するNGOなどが2022年2月27日時点で約1,400万ドル(約16億円)相当の寄付を仮想通貨で受け取っており、そのうち55%がビットコインで占められています。また、大手仮想通貨交換業者FTXトレーディングは、ウクライナの利用者に対し1人当たり25ドルの寄付を行いました。
2014年のロシアによるクリミア半島への侵攻以降、ウクライナ周辺ではNGOやハッカー集団が個人から寄付を集める動きが活発化しています。今、仮想通貨は法定通貨に代わる選択肢として、その存在感を一層強めています。特に、ウクライナの金融機関が停止する事態を見越し、仮想通貨への依存が高まっているのです。
また、資金逃避の手段としても仮想通貨が活用されています。ロシアが侵攻した2022年2月24日、ウクライナの仮想通貨交換業者クーナでの取引が急増し、取引金額は通常の4倍に達しました。富裕層は、価格変動が少ない仮想通貨テザーを利用して資金を国外へ逃がし始めているのです。今後、ルーブルが急落する中、ロシアでも個人が資金を仮想通貨に移す動きが加速するでしょう。
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