世界人口増加×気候変動…迫る食料危機、フードテックが切り拓く培養肉・植物肉の可能性

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世界の人口が増加し、気候変動も進むなか、私たちの食卓を守るための手立てに陰りが見えています。特に培養肉や植物由来の代替たんぱく質を開発する企業への世界的な投資はこの2年で大幅に減少し、既存の味や価格を乗り越えるには長い時間と莫大なコストが必要だと指摘されています。実際、アメリカで培養肉の量産をめざしていた新興企業が資金を十分に集められずに撤退するなど、将来の技術革新を担うはずの芽が次々としぼみかねない状況にあるようです。

こうした中、植物肉の大手であるビヨンド・ミートも不振が続いており、外食店ではインフレ下で価格の高い代替肉を扱わなくなる例が出始めています。アメリカに住む日本人女性のなかには、そもそもの風味が気に入らないうえ、添加物も多いのではないかと感じて買うのをやめたという声もあります。一般の消費者からは「環境や健康に配慮した商品は魅力的だけれど、値段も味も納得できないと続けて購入しにくい」という本音が少なくないようです。

しかし、世界人口が2050年に100億人近くまで増えると見込まれる今、「飢え」を解決するフードテックの役割はますます重みを増すでしょう。野村総合研究所は、将来的にたんぱく質が7%ほど不足する可能性を指摘しており、気候変動による作物不作などが重なれば、さらに深刻な事態を招くといわれています。そこで新たな品種や耐候性をもつ農作物の開発が鍵を握るものの、品種改良は長期的な取り組みが求められるため、十分な投資と継続的な研究環境をどう整えるかが課題です。

近年は中国が品種登録数を急速に伸ばす一方で、日本とアメリカの伸び悩みが目立っているとされます。特に日本はカロリーベースで食料自給率が4割を下回るだけに、国を挙げて対応する必要があるでしょう。培養食品の法整備も遅れているため、明治ホールディングスのように海外の新興企業と協力しながらアメリカで先行発売するといった動きが進んでいます。世界各国がこぞってフードテックに力を入れるなか、日本も投資や制度面の強化に踏み込まなければ、将来の食を巡る競争で出遅れかねないのではないでしょうか。

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