国土交通省は2025年度の税制改正に向け、古くなったマンションを丸ごと改修したり取り壊したりして敷地を売却した場合、そこで得た収益を非課税にする特例措置を検討しています。これまでは建て替えに伴う増設部分の売却益や所有権移転にかかる税金しか軽減されませんでしたが、改修や解体も含めて優遇範囲を広げることで、深刻化する老朽マンション問題を解消しようとしているようです。こうした対策が進めば安全性が高まり、周辺地域へのリスクも抑えられるでしょう。
さらに、区分所有法を改正してマンション全体のリノベーションや敷地売却に必要な合意形成を四分の三の賛成で実施できるようにすることが検討されています。国は同時に、管理不全になっているマンションを解体する際の費用補助を用意するなど、建物だけでなく住民の“高齢化”も進む中で負担を軽減する仕組みづくりを急ぐ方針です。実際、「築数十年のマンションを所有しているが、老朽部分の修繕費用を捻出できず悩んでいたので、国の支援はありがたい」という声もあります。解体に踏み切る前段階で専門家を派遣して状況をアドバイスする制度も打ち出されており、あらゆる手段を講じて“二つの老い”への対策を進めようとしているのです。
全国に700万戸以上あるとされるマンションの中には、外壁崩落など周囲に悪影響を及ぼす恐れがある物件も少なくありません。税制と予算の両面から早期の解体や大規模改修を後押しすることが必要になりそうです。所有者にとっては負担が減る一方で、計画段階では合意形成が難しいという問題も残っていますが、この新しい税制優遇が導入されれば、老朽マンション再生に向けた動きが加速するのではないでしょうか。