待機児童ゼロの先にある課題とは?拡充と質の向上が求められる保育の新時代

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4月1日時点で保育所などに入れない待機児童の数が2567人となり、昨年より113人少なく6年連続で過去最少を更新しました。しかし、これをもって保育の問題がほぼ解決したと考えるのは時期尚早でしょう。実際には想定を上回る少子化が背景にあり、さらに共働きや女性の就労支援にとって保育サービスの役割はむしろ高まりつつあるようです。

一方で、特定の園を希望して入れない「隠れ待機児童」は約7万1000人にのぼり、4月時点だけで算出しているため年度途中の保育ニーズを十分に反映しているわけでもありません。25〜44歳の女性就業率は右肩上がりで、1・2歳児の保育利用率は10年前より大幅に上昇しているといわれます。周囲からは「働きながら子育てしたいけれど、近所の園が定員いっぱいで諦めるしかなかった」と嘆く声もあれば、「安心して通える園がもっと増えれば、少子化対策にもなるのでは」といった期待も聞こえます。

今後の課題としては、まず保育の質を高めることが挙げられるでしょう。4・5歳児に対する職員配置基準は76年ぶりに見直されましたが、具体的な改善は途上だと指摘されています。子どもと向き合う時間がきちんと確保され、きめ細やかに目配りできる体制を整えるために、十分な人材や予算をどう確保するかが問われているのです。

さらに2026年度からは「こども誰でも通園制度」が全国で始まり、3歳未満児が保護者の就労にかかわらず保育を利用できるようになると期待されています。ただ、そのためには深刻化する保育士不足をどう解消するかが不可欠でしょう。今回、待機児童を完全に解消できなかった自治体からは「人手不足が大きなネックになっている」との声が目立ちます。実際、同制度の試行事業でも利用時間が月10時間までに限られるなど、人材や施設環境の整備が不十分な地域ではスムーズに進まない恐れがあるようです。

最終的に目指すべきは、共働き家庭はもちろん、専業主婦家庭も含めて誰もが安心して子育てできる環境をつくることでしょう。子どもがいろいろな経験や交流を積める場を増やすことは、人口減少時代の社会にとって大きな財産になるはずです。国と自治体には、これまでの待機児童対策をスタートラインに据え、保育基盤の新しいグランドデザインを早急に検討してほしいものです。

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