円の行方はどうなる?海外資金還流と投資家心理が左右する為替相場の展望

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この2か月ほどで、円が対ドルでおよそ16円も値上がりし、世界的にも突出した動きとなっています。背景には、長らく円を売って高金利の外貨を運用する「円キャリー取引」が盛んだったところへ、国内企業が海外子会社から資金を本国に戻し始めたことや、生命保険会社が円高リスクに備えて為替ヘッジを積極的に検討するなど、円買い要因が重なっている構図があるようです。市場関係者からは「一時期の歴史的な円安局面には戻りにくいのでは」という声が聞かれます。

実際、日銀が7月に追加利上げした一方で、アメリカのFRB(連邦準備理事会)が9月に利下げへ舵を切るとの観測が高まったことで、投機筋が抱えていた円売りポジションが解消されやすくなったとの見方もあるようです。その結果、為替相場は1ドル=144〜146円前後で動きづらい状態になり、値動きの幅も拡大しました。個人投資家からは「ここまで急に円が上がると、どう動いたらいいのかわからない」という戸惑いの声もあり、含み損を抱えて身動きが取れない人も少なくないようです。

一方、海外子会社からの配当によって国内に資金を還流させる企業が増え始めており、この動きは配当や自社株買いなどに利用される可能性があります。実際、信越化学工業や味の素も積極的に海外から資金を呼び戻す方針を示しており、こうした外貨売り・円買いの流れが強まれば円の押し上げにつながるでしょう。また、生命保険会社が将来的な円高に備えて為替ヘッジ付きの外債投資にシフトすると、その過程でも円の需要が増えると考えられます。さらに、もしカナダの流通大手がセブン&アイ・ホールディングスを買収する計画が実現すれば、5兆円を超す買収額に見合う円買いが行われるとして注目を集めているようです。

ただ、日本はエネルギーや食料品の輸入が多く、貿易赤字が慢性化しやすい構造的な円安要因があるのも事実です。一般の人からは「円高になれば海外旅行がしやすくなるけれど、輸出企業は大丈夫なのだろうか」という声も聞こえます。実際、円相場は今後のアメリカや日本の金融政策の動向、さらには国際情勢の変化によって大きく左右されるため、一気に円高に傾くシナリオは描きにくいといわれます。

それでも、円売り一辺倒だった構図が変わりつつあるのは明らかでしょう。足元では1日の値幅が1.5円に広がる日もあるなど、市場参加者の思惑が交錯しているようです。今後は国内外の要因が複雑に絡み合いながら、円相場がどの方向へ進むのかが注目されるでしょう。円安で苦しんできた輸入企業や海外旅行を躊躇していた人々にとっては、しばらく目が離せない展開が続きそうです。

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