世界を揺るがす「中国発のデフレ輸出」 安価な素材や製品で各国はどう動く?

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中国から値ごろ感のある製品や素材が海外へ大量に押し出される「デフレ輸出」が拡大しているようです。最近では鋼材や家電、さらには穀物や水産品など、多くの主要品目で輸出単価が下がり続けており、国内の過剰生産分を無理やり海外へ回している印象を受けます。背景には、中国の不動産市場の低迷や消費の停滞があるとされ、中国政府が思うように内需を振るい立たせる手立てを示していないため、外へ逃がすしかないという構図が見え隠れします。

輸出が好調とはいえ、この安値攻勢で各国から反発の声が高まっているのが現状です。アメリカや欧州連合(EU)は、中国製の鉄鋼や電気自動車に対して関税を引き上げる動きを強めつつあり、ブラジルをはじめとする中南米でも同様の動きが見受けられます。たとえば、国内の鋼材メーカーは中国からの安価な製品流入で売り上げが落ち込み、雇用維持が難しくなるのではないかといった懸念が広がっているようです。一方で、一般の消費者からは「安い商品が手に入るのは嬉しい半面、国内産業の衰退が心配」という声も聞かれます。

実際、鋼材は2024年1〜7月の輸出量が大きく増えたにもかかわらず、金額ベースでは単価下落によって落ち込んでいます。家電や集積回路なども同様に価格競争力を武器に海外に流れ込み、世界中の企業にとっては厳しい競争を強いられる状況です。また、これまで中国市場に期待してきた海外企業の中には「内需の回復が進まない限り、この安値輸出は続くのではないか」という見方をするところもあるようです。

中国政府はインフラ投資や国有企業を中心に生産拡大を進めて成長率5%前後を目指しているとされますが、肝心の消費の伸び悩みが足を引っ張っているため、当面は「輸出頼み」が続く可能性があるでしょう。こうした状況で、世界各国が自国産業を守るために一段と貿易対策を強化するかもしれません。その一方で、中国製品の魅力的な価格帯に支えられる消費者のニーズも小さくないことを考えると、国際的な折り合いのつけ方が難しい段階に来ているのではないでしょうか。

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