東南アジア各国では、輸入規制を通じて中国製品の大量流入に歯止めをかけようとする動きが広がっています。インドネシアは8月に繊維製品の関税を引き上げるセーフガード(緊急輸入制限)を発動し、陶磁器などの追加関税についても45〜50%程度にする方針を示しました。ただ、こうした強い対策を取ろうとすると、中国からの報復措置を招きかねないため、当初想定よりも対象や適用範囲を絞らざるを得なかったとみられます。
実際、インドネシアは中国からの繊維製品や陶磁器の輸入が急増し、国内企業では事業再編や大幅な人員削減に追い込まれるケースが目立っているようです。一般の人々の中には「商品が安く手に入るのは助かるけれど、国内産業が衰退して雇用が失われるのは大きな問題」と懸念する声もあります。さらにインドネシアの中央統計局によると、今年1〜6月の中国からの輸入総額は前年同期比で8%増えた一方、全体の輸入額は横ばいにとどまっており、中国だけが突出して伸びているという状況のようです。
ベトナムでも同様の動きが見られ、中国からの輸入額は1〜6月期で前年同期比34%増加しました。特に鉄鋼分野では、ベトナムへの中国製鋼材が前年の約2倍に膨らみ、国内最大手ホアファット・グループのトップが「国内生産が脅かされている」と強い危機感を表明しています。同社は反ダンピング(不当廉売)関税の発動を政府に求めており、ベトナム政府もすでに価格や販売実態の調査に乗り出したといいます。
タイも7月から約6500円以下の輸入品に対し7%の付加価値税を課す措置を始めました。中国製の雑貨や衣料品のネット通販が増えるなか、国内産業を守るための手段として期待されているようです。一方で「タイ国内の流通企業がこれで一息つくのか、それとも中国製がなお優勢を保つのかはわからない」という声もあるようです。
東南アジア各国は、自国産業を守るために関税を中心とする輸入制限を検討しながらも、中国からの対抗措置を警戒せざるを得ません。インドネシアが一時は中国製を名指しして関税を大幅に引き上げる方針を示したものの、最終的には国を特定しない形に落ち着いた点は、そのジレンマを象徴しているといえそうです。輸入に頼る面も大きいこれらの国々が、今後どのようなバランスを取りながら経済を支えていくのか、注目が集まるでしょう。