防衛省は31日朝、中国海軍のシュパン級測量艦1隻が鹿児島県口永良部島の南西付近で日本の領海を侵犯したと発表しました。中国海軍の測量艦が日本の領海を犯したのは、2023年9月以来で10回目になります。中国軍は26日にも長崎県男女群島沖の領空を侵犯したばかりで、「海と空」の両面で圧力を強めている状況です。
今回の侵入は午前6時ごろに始まり、約1時間53分続いたとのことです。海上自衛隊の掃海艇や哨戒機が監視と情報収集にあたり、船の航行目的を問いただしましたが、自衛隊法に基づく「海上警備行動」は発令されませんでした。一般的に測量艦は海底の地形や水温などを調査する目的を持つものの、艦艇や潜水艦の航行に関わる重要なデータを収集している可能性も否定できません。領海内では通航が平和的であれば「無害通航権」が認められますが、防衛省は今回のケースが該当するか慎重に分析しているようです。
外務省は同日、鯰博行アジア大洋州局長が施泳駐日中国臨時代理大使を呼び出し、今回の領海侵犯と直近の領空侵犯を踏まえ強い懸念を伝えたとしています。一般の人々の間でも「尖閣諸島以外の地域でも繰り返し起こるのは危険な兆候ではないか」「政府や自衛隊には毅然とした対応を取ってほしい」という声が出ており、安全保障をめぐる不安感が高まりつつあるようです。
尖閣諸島周辺での中国公船の出没は以前から問題視されてきましたが、ここ数年はそれ以外の地域でも領海侵入や領空侵犯が相次ぎ、2021年11月以降は数か月おきに確認されているといいます。今回のように鹿児島沖での測量艦侵入が報じられると、日本としては「どこまでが無害通航権の範囲なのか」「中国軍の目的は何なのか」という疑念が深まるのも無理はないでしょう。中国が今後も海と空の両面から圧力をかけ続けるのか、日本政府がどのように対応策を打ち出すのか、引き続き注目されます。