自民党総裁選はくじ引きに?「ポスト岸田」を巡る接戦と“運”の行方

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「首相になるには才能と努力、そして運が必要だ」。こう語ったのは、小泉純一郎氏が5月に会食した自民党の石破茂元幹事長に向けた言葉です。長期政権を築いた安倍晋三氏も首相の条件として「運と多少の人柄」を挙げていたように、歴代の首相経験者がそろって口にするのが“運”という要素なのかもしれません。

9月の党総裁選にはすでに10人を超える候補が名乗りを上げ、国会議員票367と同数の党員・党友票を合わせた734票を争います。過半数を獲得する人がいなければ上位2名による決選投票となりますが、想定外の局面が生じる可能性が浮上しているようです。例えば、1回目の投票で2位、3位、4位の得票が同数になった場合、どうやって2位を確定させるのか――8月20日に開かれた選挙管理委員会でこんな疑問が出たものの、結論は先送りになりました。暫定的な実施要領では、「決選投票で票が同数ならくじで決める」と定められており、2位争いも同じルールを準用するとの見方があるようです。

政治の世界でくじ引きを完全に排除していないことは、公職選挙法や衆院規則にも明記されています。ただ、実際にくじが行われるのはごくまれで、自民党内でも2010年の党参院議員会長選で起こった程度といわれます。2人の候補が同票になり、最終的にくじで新会長が決まった際は「そんな方法でいいのか」という驚きや批判の声もあったと伝えられます。一般の人々からは「もし首相を決める選挙でくじが登場したら、国民としては正直、納得できるのか疑問」という意見も出ているようです。

今回の総裁選は長い日程で行われ、小泉進次郎元環境相や石破氏が世論調査の上位をにぎわせているものの、実際に1回目の投票で誰が1位になるのかは混沌としています。高市早苗経済安全保障相や河野太郎デジタル相、小林鷹之前経済安保相などの名も取り沙汰され、決選投票に進む2人の組み合わせで勝敗が大きく変わる可能性があるでしょう。12年に自民党が野党だった際の総裁選でも、1回目で2位だった安倍氏が決選投票で石破氏を逆転し、首相返り咲きを果たしました。

岸田文雄首相の不出馬表明から投開票までは1か月半という長丁場で、予想外の事態が起こる余地は十分あります。候補者たちも“運”にすがるだけではなく、政策や人柄で党員・議員の支持を得る必要があるはずです。果たしてこの総裁選で、誰が運を味方につけて頂点に立つのか注目が集まるでしょう。

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