JR大阪駅の北側に位置する再開発地区「グラングリーン大阪(うめきた2期)」が、いよいよ9月6日に先行開業します。旧梅田貨物駅という「大阪最後の一等地」を活用したこの計画は、先行して開業した「グランフロント大阪」と合わせると20年以上の歳月を要した大規模プロジェクトになります。2025年に開幕する国際博覧会(大阪・関西万博)を前に、大阪駅前が大きく様変わりすることになるでしょう。
グラングリーン大阪は南北合わせて約9.1ヘクタールの広さを誇り、参加した事業者は三菱地所、積水ハウス、オリックス不動産、阪急電鉄など9社におよびます。オフィスや商業施設、ホテル、さらには分譲タワーマンションやオープンイノベーション拠点といった多種多様な機能が集約されており、敷地の半分にあたる4.5ヘクタールを緑地公園にして市民が憩える場を用意したことも大きな特長です。まずは北街区の複合ビルと公園の一部が先行開業し、2025年春には南街区もオープンし、2027年度に街全体が完成する予定です。
オフィス供給面積はおよそ11万3000平方メートルに達し、クボタや塩野義製薬など関西の大手企業が本社を移す動きに加え、ホンダがソフトウェア開発拠点を構える予定なのが注目されます。大阪大学や立命館大学が連携するイノベーション施設「JAM BASE」には新興企業やベンチャーキャピタルも集まり、地元の人々からは「最先端の技術やアイデアが大阪から生まれるかもしれない」と期待の声が聞かれます。商業施設に関しては、都市型ホームセンターや「パタゴニア」の関西フラッグシップストアなど計19店舗が初日から営業を始め、米ヒルトンの新ブランドホテルも加わって街のにぎわいを支えるでしょう。
分譲タワーマンションは2棟のうち北街区が先行して建設され、最高価格は1戸あたり25億円に達したことが話題になりました。2028年に完成予定の南街区は駅に近い立地や資材費の上昇などの影響もあり、北街区より高額になるとの見方もあります。一般の人々の中には「グラングリーン大阪が街の活性化につながるのは嬉しいけど、高級すぎて生活者が置いてきぼりになるのでは」という声もあるようです。
このプロジェクトは旧梅田貨物駅の24ヘクタールを再開発する「うめきたプロジェクト」の最終段階を担っています。2013年に開業したグランフロント大阪から始まった一連の取り組みにより、大阪駅北口周辺はオフィスや商業施設、タワーマンションが集積して大きく景観を変えました。さらに大阪・関西万博や統合型リゾート(IR)の開業見込みを追い風に、梅田エリアでは大型の都市開発が次々と進行中です。
交通アクセスも改善され、2023年3月にはJR大阪駅の地下ホームが完成しました。関西国際空港や新大阪駅への特急列車が乗り入れやすくなるだけでなく、今後開通を目指す「なにわ筋線」による利便性の向上も期待されます。東京一極集中の中で地盤沈下がささやかれていた大阪ですが、このうめきた再開発を機に、広大な緑地や観光・商業施設がそろった新しい街づくりに挑戦しています。地元の方の中には「駅前に開放的な空間ができると、散歩や買い物もしやすくなる」と期待する声もあり、こうした取り組みが関西経済の次なる成長につながるか注目を集めるでしょう。