大手損害保険4社が30日、250万件もの個人情報が流出した原因や再発防止策を金融庁に報告しました。しかも、ライバル社の契約を乗り換えさせるために不正に入手した個人情報が使われていた実態まで明るみに出たのです。旧ビッグモーターとの不透明な関係や企業向け保険料のカルテル問題など、すでに揺れ動いていた損保業界に追い打ちをかける形となりました。
今回の流出が発覚したきっかけは、東京海上日動火災保険で今年春に異動してきた社員の一言でした。自動車ディーラーから送られたメールに添付されていたファイルを開くと、競合他社の自動車保険加入者の個人情報が大量に含まれていたのです。新参者から見れば異様な慣習ですが、どうやら長年続けられてきたとみられ、東京海上日動は「世の中の常識からはずれていた」と認めています。代理店へ出向する社員が、かつての会社に契約者データを横流ししていた事例も発覚し、その悪質さが際立ちました。一般の人々からは「大手企業だから安心だと思っていたのに」「顧客情報がこんなにずさんに扱われるなんて」という驚きや不信感が広がっています。
こうした背景には、保険の専門知識が乏しい自動車販売店や金融機関などが代理店として保険を扱い、現場を損保側に任せてきたという構造的な問題があります。一方で、保険会社は代理店に社員を大量に出向させ、契約を効率よく管理しようとしてきたのです。大手損保各社は再発防止を約束し、出向基準の厳格化を打ち出していますが、地方銀行の関係者のなかには「これでは保険ビジネス自体が成り立たなくなる」という懸念を示す声も出始めています。
今回の一連の不祥事は、相互依存で成り立ってきた損保と代理店のビジネスモデルが限界に近いことを示しているのではないでしょうか。東京海上日動は「新しい会社へ生まれ変わる覚悟」を表明していますが、その本気度が厳しく問われるのはこれからだと言えます。国民の大切な個人情報を守るという基本を揺るがした代償は大きく、損保業界が真に信頼を取り戻せるかどうか、多くの人が行方を注視するでしょう。