声で勝負!ブラインドサッカー日本代表が目指す“声のフェアプレー”で世界に挑む

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9月1日にパリ・パラリンピックで競技がスタートするブラインドサッカー。その独特な戦術とチームワークはすべて“声”に頼るのが特徴です。選手たちは互いの位置や敵の動きを声で伝え合い、視覚の代わりに音を頼りにプレーします。日本代表の声を磨き上げ、一つの武器とまで呼ばれるようにしたのは、ボイストレーナーの新生剛士さん。元アメリカンフットボール選手で、リクルートシーガルズ時代に3度の日本一を経験した新生さんが、このユニークなサポートを始めたのは2019年のことです。

ブラインドサッカーには特有のルールがあり、守備選手は「ボイ」という声で自分の位置を相手に知らせなければなりません。この声掛けがないと反則を取られてしまうため、選手は常に大きな声を出し続ける必要があります。しかし、外国の選手と比べると日本代表は体格も声も小さく、ぶつかられる恐怖から体が萎縮してしまう悪循環に陥っていました。そんな状況を変えたいと監督から依頼を受け、新生さんは選手たちの姿勢改善から始めました。視覚障害者の日常動作に伴う猫背が、大きな声を出す妨げになっていると気づいたのです。

胸郭を開くストレッチや姿勢を正すトレーニングを取り入れると、選手たちの声量は飛躍的に向上しました。特に指示を最も多く出すゴールキーパーは、以前は大会終盤には声が枯れてしまっていたものの、今では最終日も声を出せるようになり、「初めてまともに話せる」と感謝の言葉を口にするまでになりました。

さらに新生さんは、状況に応じて声の出し方を使い分ける“ボイ戦術”を提案しました。「ロングボイ」は遠くの味方や相手に自分の位置を知らせ、相手の動きを制限する効果を持つものです。「激ボイ」は緊急時に怒ったように叫ぶことで相手を驚かせ、プレーのミスを誘う狙いがあります。そして「ピストルボイ」は高い音程で鋭く短く声を発する方法で、観客の声援が大きい会場でも聞き分けられる工夫です。特にパリの会場には1万人以上の観客が集まる可能性があり、このピストルボイが鍵を握ると新生さんは語ります。

海外のチームには反則ギリギリの小さな声で守備位置を隠す戦法を取るところもありますが、日本代表は正々堂々と声を出すスタイルを貫きます。目標はもちろんメダル獲得ですが、新生さんは選手たちに「反則をしないこと、そして観客に『日本の声が一番聞きやすかった』と言ってもらうこと」を求めています。声で戦い、声で信頼を勝ち取り、声でフェアプレーを示す。日本代表は、声で世界に挑む新たなスポーツの形を見せてくれるでしょう。声の力で勝利をつかむ日を期待しつつ、彼らの活躍に注目が集まります。

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