音楽で刻むリズムが導く未来へ──女子走り幅跳び、中西麻耶の終わらない挑戦

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陸上女子走り幅跳び(義足・機能障害T64)で7位となった中西麻耶選手は、試合後すぐに次なる目標を口にしました。「調子は悪くなかった。9月のジャパンパラ大会で今季最高の跳躍をしたい」。5度目のパラリンピックでもメダルを逃す結果となりましたが、中西選手は前を向き続けます。その背景には、自ら取り入れた革新的なアプローチによる手応えがあるからです。不調が続いた昨年、良い跳躍時の走りのリズムを音楽に変換し、毎日それを聞いて身体にリズムを染み込ませるというユニークなトレーニング法を実践しました。その成果は昨年の世界選手権で銅メダルという形で現れ、今回のパリ大会でもその方法への確信は揺らぎませんでした。

慎重に挑んだ1本目を終えた後、2本連続でファウルを記録した際、日本代表のコーチ陣からは助走のスタート位置を下げるよう助言がありました。しかし、中西選手は音楽を制作してくれた個人コーチの「テンポがいつもと違う」という言葉を信じ、自らの感覚に従って挑み続けます。跳躍の前には両手の指を振ってリズムを取る独特の仕草を繰り返し、自分のリズムを体に刻み込むようにしていました。

最終的に記録は1本目の4メートル91にとどまり、最後の2本もファウルに終わったものの、5本目の跳躍では良い感触を得られ、「目標とする6メートルに近づいている実感がある」と語ります。これまで「パリで引退」と公言していた中西選手ですが、その考えも変わりつつあるようです。「走力は今が一番ある。もったいない」と笑顔で語り、日本の義足陸上女子のパイオニアとしての挑戦はまだ続くことを示唆しました。

引退を撤回した彼女の跳躍を、これからも見る機会がありそうです。義足を履いたアスリートが自らの限界を超える姿に、多くの人々が勇気をもらい、次なる一歩を踏み出すことでしょう。中西選手の挑戦は、これからも観客を魅了し続けるに違いありません。

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